自衛隊で相次ぐ深刻なハラスメント問題。私たちは壮絶なセクハラやパワハラを受け、退職に追い込まれたという元自衛官たちを取材しました。ハラスメントはなぜ無くならないのか、その理由に迫ります。【写真を見る】「心と体 汚されていく」「逃げ場がない」 自衛隊ハラスメントの実態【報道特集】■五ノ井里奈さん「心と体 汚され」 元自衛官女性の闘い陸上自衛隊の元自衛官、五ノ井里奈さん(23)は11月、2か月ぶりに宮城県東松島市の実家に戻った。五ノ井さんは、自衛隊でのセクハラ被害を実名で告発し、防衛省と闘ってきた。2020年4月に自衛隊に入隊し、福島の郡山駐屯地に配属された五ノ井さん。女性が1割にも満たない部隊で日常的にセクハラを受けるようになる。そして2021年8月の訓練中に決定的な出来事が起きた。

陸上自衛隊の元自衛官 五ノ井里奈さん(23)「男性隊員の先輩が自分のところにやってきて、首を決めて倒して、そのまま覆いかぶさってきて。腰を振ってくる、そういう行為をされて、振りながら(他の隊員の)笑いを取る。もうどんどん自分の心と体が汚されていく」五ノ井さんはその後「適応障害」と診断され、休職した。母親はその頃、実家に戻ってきた娘をカラオケに誘った。五ノ井さん「カラオケ行って歌って。泣きながら歌ってたね」母親「お母さんも里奈がカラオケで歌って、気晴らしできたらなと思ったけど、想定外のことで。泣いたことない里奈が泣き始めたから、お母さんも正直、戸惑ったのもあったけど。よっぽどつらい思いなんだろうなとは思ったよ、あの時ね」■「異議申し立てしない」 母親に求められた“同意書”五ノ井さんは部隊の幹部に被害を訴えたが、自衛隊はセクハラの事実さえ認めない。自殺を考えるほど追い込まれていき、2022年6月に退職した。退職にあたり、自衛隊が母親に「一切の異議を申し立てない」とする同意書へのサインを求めた。五ノ井さん「同意書、書いてたじゃん。それどうだった?」母親「悔しい思い、親としてはね。まだ闘っている最中なのに、お母さんだって色んな上の人たちに掛け合って電話もして、色んな話を常にしてきたけど、あまりにもひどい」五ノ井さんは退職後、実名でセクハラ被害を公表。その行動が大きな反響を呼び、自衛隊幹部、そして加害者が五ノ井さんに直接謝罪した。■終わらぬ苦しみ…追い打ちかける“ネット中傷”もしかし、苦しみは終わっていない。五ノ井さん「食べられなくなった」母親「何キロやせた?」五ノ井さん「わからない。だいぶ(自衛隊)現役の頃よりは痩せた」母親「だよね、顔ほっそりして」五ノ井さん「最近、難聴がひどい」母親「難聴?」五ノ井さん「耳鳴りとか。ストレスで…」五ノ井さんは今、ネット上で誹謗中傷を受けている。「自衛隊の女性は異常だ」「幹部に謝罪を強要した」など一方的に責め立てる内容も多い。五ノ井さん「心の底から幸せって思う日がいつか来るのかな。輝いている日が来るのかなっていう不安はありますね。こういう事件があるとフラッシュバックとかするので、そこは仕方ないんですけど、この傷を一生抱えながら生きていかなきゃいけないんだと思うと、すごい不安に襲われる時がありますね」■殴る蹴るの暴行…2年も続いた“自衛隊パワハラ”の証言自衛隊でハラスメントに苦しんでいる人は、他にもいる。五ノ井さんがネット上で被害の経験談の投稿を呼びかけると、146人もの現職隊員や元隊員がハラスメントの被害を訴えた。3年前まで岩手駐屯地に勤務していたAさんも「上官からパワハラを受けていた」という。取材中にAさんが取り出したのは壊れたメガネだ。元自衛官Aさん「飲み会の帰りに殴られた、眉間を」ヘルメットを被った頭を蹴り上げられたこともあるという。元自衛官Aさん「俺の言っていたやり方と違うじゃないか、と言いながら(蹴りを)こうですね」訓練中、Aさんが作業をしていると、トラックの荷台にいた上官が「やり方が違う」と激怒し、頭を強く蹴ったという。元自衛官Aさん「自衛隊の靴は(釘の)踏み抜き防止の鉄板が入っているので、靴自体にそこそこ重量があるので、もうしばらく耳鳴りがするようでちょっと動けなくなってしまった」2年にわたって理不尽な暴力を繰り返し受けたというAさん。部隊の幹部に被害を訴えたが、一向に対応がなされなかったという。Aさんは次第に、精神的に追い詰められていく。元自衛官Aさん「夜も寝られなくて。特に訓練近くなるともうそれが嫌すぎて、睡眠障害じゃないですけど」■「病むか、死ぬか、辞めてくか」逃げ場がない“自衛隊パワハラ”Aさんは退職を決意し、問題の上官に伝えることにした。その時の音声には…上官「ふざけたことやってんじゃねえぞ、てめえ おい、おい、お前。なめんのもいい加減にしろよ」元自衛官Aさん「もう無理なんですって」Aさんが「退職したい」と伝えて席を立つと、上官は胸倉をつかんで怒鳴り、体を壁に押し付けたという。Aさんは2019年5月、退職した。元自衛官Aさん「悪いことする奴と、なるべくそれを報告したくない上官の間で、うまいこと状況が合致すると逃げ場のない状況が生まれる。そうすると病むか、死ぬか、辞めてくか」Aさんは退職後、公益通報制度にのっとり、部隊の管理運営などを担う「陸上幕僚監部」にパワハラ行為を通報した。すると「調査を始める」という通知が届いた。しかしそれ以来3年、何の連絡も無く、上官からの説明も無いという。■被害訴え4年…初めて聞いた“処分”“謝罪”に感じる「静かな失望」私たちは問題の上官に話を聞くことにした。村瀬健介キャスター「TBSの村瀬と申しますけれども」上官「自衛隊の方から何も聞いてないんですけど」村瀬キャスター「部下だったAさんがパワーハラスメント、殴るとか蹴るとかいう被害を受けたと訴えていたという点についてはどうでしょうか?」上官「ちょっと待ってください。部隊として対処していることなので」村瀬キャスター「私たちは言い分を聞きに来た」上官「言い分は部隊を通してお話してます、本人にも。なのでこの場で自分からお話することはないです」上官は「部隊を通じてAさんに言い分を話した」と説明したが、Aさんにその覚えはない。この取材から5日後。Aさんに幹部から突然、電話がかかってきたという。何が起きたのか?Aさんは、電話のやりとりを録音していた。自衛隊の人事担当「自衛隊の処分は出ると思われます、まあ出ます、確実に。(上官は)認めているところについては謝罪をしたいと思っていると言っていた」パワハラ被害を訴え始めてから4年。具体的な処分や謝罪の話を聞いたのは、初めてのことだ。元自衛官Aさん「取材の動きを鑑みて、ようやく重い腰を上げたというか」村瀬キャスター「ここに至るまで4年間かかるというのはどうですか?」元自衛官Aさん「そうですね…国の擁する組織としては異常というか」「組織に対する静かな失望感みたいなのだけがある」岩手駐屯地は取材に「調査は継続中。処分が出れば公表する」と回答した。自衛隊のハラスメント対策は機能していない…。そんな声があちこちから聞こえてくる。■訴えたパワハラ被害が知らぬ間に“示談”…「もう許せない」2018年から沖縄の航空自衛隊の基地に勤務していたBさんもある上官から繰り返しパワハラを受けていた。元航空自衛官Bさん「髪の毛をわしづかみにされて頭を振り回されたり、お前のアゴはなんだ、という理由でアゴを殴られたり」その上官からBさんにかかってきた電話…。上官「死ねや。殺したる。鼻の骨も頭蓋骨も折るよ。なあ、全部折る、お前の骨」Bさんはパワハラの被害を別の上官に相談した。しかし…元航空自衛官Bさんの相談を受けた別の上官との電話「『ストレスのない職場』とか、ストレスのないような環境作りとか。そんなもの、理想じみたことをグダグダグダグダ抜かす奴は大嫌いなんだよ。このまま変わらないんだったら辞めろ」このケースでも、納得のいく対応がなされないまま、Bさんは退職に追い込まれることになった。Bさんがパワハラの相談を始めて2年余りが経った2021年、私たちはこの問題を取材。その直後、調査担当者から初めて電話がかかってきた。その内容は耳を疑うものだった。部隊内では「示談で済んでいる」と報告されているというのだ。元航空自衛官Bさん「事実と違うことを上級部隊に報告を上げられることは我慢できない。もう許せないですね。もみ消し、隠ぺいをしようという働きを感じとれるので激しい怒りが込み上げてくる」■相談窓口からも“裏切り”…「どうしようもない組織だなって」自衛隊のハラスメント対策に裏切られたという人は多い。元自衛官の女性Cさんは上官から数々の暴言を受けたという。元航空自衛官Cさん「『絶対退職しろよ。もう雑魚だよ』とか、そういうのも」職場へ行こうとすると手の震えが止まらなくなり、休職したという。部隊の幹部に訴えたが、調査は進まなかった。追い詰められたCさんは、防衛省のハラスメント相談窓口に助けを求めた。しかし、相談員は…元航空自衛官Cさん「あくびをしたりとか、半分目をつぶった状態が一瞬あったりとか。早く終わってほしいみたいな」「相手にされていない」。そう感じたCさんの体調はさらに悪化。母親が代わりに電話で相談したが…Cさんの母親「これいつになったら解決するんですか?」相談員「調査中とは聞いているのでうちは調査の過程・状況を確認するくらいしかできない」Cさんの母親「母・娘と一緒にいた部隊の中で自殺者が出たんです、パワハラで。同じことになったらどうなるんですか」Cさんもまた、失意のうちに退職した。元航空自衛官Cさん「最初は部隊に対して裏切られたなと思ったから、防衛省のホットラインを使って打つ手を打ったんですけれども。そこからも裏切りがあったりとか、なんかもうどうしようもない組織だなって」事情に詳しい弁護士は、対応するのが内部の職員であることを問題視する。佐藤博文 弁護士「対応する窓口はあるが、結局、各部隊に『こういう申告があったよ、だから調査しなさいね』っていうぐらいしか言わないわけですから実効性がない。それをちゃんと受け止めて『それはダメだよ』という第三者性を持った専門的な人が(対応を)やらないとならない」11月15日、浜田防衛大臣に聞くと…村瀬キャスター「被害者の方は口をそろえて『防衛省・自衛隊内部の調査は信用できないんだ』という風に言っています。こういった声に対して大臣はどういう風にお考えでしょうか?」浜田靖一 防衛大臣「いかにしてこういったもの(ハラスメント)を根絶していくかということを、明確にしながら、我々組織として大変大きな問題でありますので、そういう認識のもとに今後活動していきたい」■「ダメなものはダメ」 ハラスメント研修で幹部自衛官らが議論そんな中、11月18日。村瀬キャスター「こちら防衛省本部の建物の中です。こちらの会議室でハラスメント防止教育と書いてありますけれども、自衛隊幹部に向けた研修がたった今、行われているところなんです」2021年から始まった陸上自衛隊の「ハラスメント防止教育」。外部講師が具体例を説明し、幹部自衛官が議論を交わした。男性自衛官「戦場で命令で動いて、厳しいところも命令していかないといけない。それをハラスメントと思われると違うところもある。任務達成のための命令と、人を尊重して大事にするというところをしっかり切り分けていかないといけないのかなと」また五ノ井さんの事案を念頭にセクハラ対策についても話し合った。外部講師「よくこういうこと(セクハラ)があったという記事出ますよね、今までもね。管理者として誰も分からなかったのでしょうか」男性隊員「管理者としてではなかったとしても、それをちゃんと言える雰囲気じゃないとしても、ダメなものはダメ」■「一人一人の隊員を守ってほしい」五ノ井さんの自衛隊への思い久しぶりに宮城に帰省した五ノ井さんは、なじみの美容院を訪ねた。五ノ井さん「その節はありがとうございました。無事謝罪をもらいましたので」美容院を経営する男性「良かったねえ」五ノ井さん「本当にありがとうございます」男性の妻「まだまだ大変だと思うけど、痩せたよね」五ノ井さん「よく言われます」男性の妻「大変だったもんねえ。でも里奈ちゃんなら大丈夫だよ」11年前、五ノ井さんの故郷、東松島市は津波の被害を受け自宅も浸水した。当時小学5年生だった五ノ井さんはコミュニティセンターで避難生活を送った。五ノ井さん「廊下で過ごしてました。3か月以上は過ごしていましたね、段ボールを敷いて」「あとは入り口で炊き出しを自衛官の方がしてくださった」自衛隊は避難者のために各地で入浴支援を行った。五ノ井さんはそこで働いていた、ある女性自衛官の姿に憧れた。五ノ井さん「女性自衛官の方が何度もお湯をバケツに汲んで、入れてくれたっていう姿を見てやっぱり、かっこいいなと思いましたし、私もこういうところで働きたいとか、人のために生きたいなって思うようになりました」五ノ井さんはその女性自衛官と交流を続け、中学・高校を経て、自衛隊に入っても関係は続いた。入隊後、柔道でけがをして入院した時には「応援しているよ」と手紙をくれた。五ノ井さん「『私が里奈の一番の応援者でいる』って、嬉しかったですね、本当に」その女性自衛官にはセクハラ被害についても相談した。 勇気を出して声を上げた五ノ井さんを応援してくれたという。五ノ井さん「本当に自衛隊が嫌いで悪く言いたいとかじゃなくて、本当にいい環境になってほしいと思いますし、本当に素晴らしい職業なので、国を守ることもそうなんですけど、まず1人1人の隊員をしっかり守ってほしいなと思いますし、同じように声を上げた人がしっかり守られるような環境になってほしい」
自衛隊で相次ぐ深刻なハラスメント問題。私たちは壮絶なセクハラやパワハラを受け、退職に追い込まれたという元自衛官たちを取材しました。ハラスメントはなぜ無くならないのか、その理由に迫ります。
【写真を見る】「心と体 汚されていく」「逃げ場がない」 自衛隊ハラスメントの実態【報道特集】■五ノ井里奈さん「心と体 汚され」 元自衛官女性の闘い陸上自衛隊の元自衛官、五ノ井里奈さん(23)は11月、2か月ぶりに宮城県東松島市の実家に戻った。五ノ井さんは、自衛隊でのセクハラ被害を実名で告発し、防衛省と闘ってきた。2020年4月に自衛隊に入隊し、福島の郡山駐屯地に配属された五ノ井さん。女性が1割にも満たない部隊で日常的にセクハラを受けるようになる。そして2021年8月の訓練中に決定的な出来事が起きた。

陸上自衛隊の元自衛官 五ノ井里奈さん(23)「男性隊員の先輩が自分のところにやってきて、首を決めて倒して、そのまま覆いかぶさってきて。腰を振ってくる、そういう行為をされて、振りながら(他の隊員の)笑いを取る。もうどんどん自分の心と体が汚されていく」五ノ井さんはその後「適応障害」と診断され、休職した。母親はその頃、実家に戻ってきた娘をカラオケに誘った。五ノ井さん「カラオケ行って歌って。泣きながら歌ってたね」母親「お母さんも里奈がカラオケで歌って、気晴らしできたらなと思ったけど、想定外のことで。泣いたことない里奈が泣き始めたから、お母さんも正直、戸惑ったのもあったけど。よっぽどつらい思いなんだろうなとは思ったよ、あの時ね」■「異議申し立てしない」 母親に求められた“同意書”五ノ井さんは部隊の幹部に被害を訴えたが、自衛隊はセクハラの事実さえ認めない。自殺を考えるほど追い込まれていき、2022年6月に退職した。退職にあたり、自衛隊が母親に「一切の異議を申し立てない」とする同意書へのサインを求めた。五ノ井さん「同意書、書いてたじゃん。それどうだった?」母親「悔しい思い、親としてはね。まだ闘っている最中なのに、お母さんだって色んな上の人たちに掛け合って電話もして、色んな話を常にしてきたけど、あまりにもひどい」五ノ井さんは退職後、実名でセクハラ被害を公表。その行動が大きな反響を呼び、自衛隊幹部、そして加害者が五ノ井さんに直接謝罪した。■終わらぬ苦しみ…追い打ちかける“ネット中傷”もしかし、苦しみは終わっていない。五ノ井さん「食べられなくなった」母親「何キロやせた?」五ノ井さん「わからない。だいぶ(自衛隊)現役の頃よりは痩せた」母親「だよね、顔ほっそりして」五ノ井さん「最近、難聴がひどい」母親「難聴?」五ノ井さん「耳鳴りとか。ストレスで…」五ノ井さんは今、ネット上で誹謗中傷を受けている。「自衛隊の女性は異常だ」「幹部に謝罪を強要した」など一方的に責め立てる内容も多い。五ノ井さん「心の底から幸せって思う日がいつか来るのかな。輝いている日が来るのかなっていう不安はありますね。こういう事件があるとフラッシュバックとかするので、そこは仕方ないんですけど、この傷を一生抱えながら生きていかなきゃいけないんだと思うと、すごい不安に襲われる時がありますね」■殴る蹴るの暴行…2年も続いた“自衛隊パワハラ”の証言自衛隊でハラスメントに苦しんでいる人は、他にもいる。五ノ井さんがネット上で被害の経験談の投稿を呼びかけると、146人もの現職隊員や元隊員がハラスメントの被害を訴えた。3年前まで岩手駐屯地に勤務していたAさんも「上官からパワハラを受けていた」という。取材中にAさんが取り出したのは壊れたメガネだ。元自衛官Aさん「飲み会の帰りに殴られた、眉間を」ヘルメットを被った頭を蹴り上げられたこともあるという。元自衛官Aさん「俺の言っていたやり方と違うじゃないか、と言いながら(蹴りを)こうですね」訓練中、Aさんが作業をしていると、トラックの荷台にいた上官が「やり方が違う」と激怒し、頭を強く蹴ったという。元自衛官Aさん「自衛隊の靴は(釘の)踏み抜き防止の鉄板が入っているので、靴自体にそこそこ重量があるので、もうしばらく耳鳴りがするようでちょっと動けなくなってしまった」2年にわたって理不尽な暴力を繰り返し受けたというAさん。部隊の幹部に被害を訴えたが、一向に対応がなされなかったという。Aさんは次第に、精神的に追い詰められていく。元自衛官Aさん「夜も寝られなくて。特に訓練近くなるともうそれが嫌すぎて、睡眠障害じゃないですけど」■「病むか、死ぬか、辞めてくか」逃げ場がない“自衛隊パワハラ”Aさんは退職を決意し、問題の上官に伝えることにした。その時の音声には…上官「ふざけたことやってんじゃねえぞ、てめえ おい、おい、お前。なめんのもいい加減にしろよ」元自衛官Aさん「もう無理なんですって」Aさんが「退職したい」と伝えて席を立つと、上官は胸倉をつかんで怒鳴り、体を壁に押し付けたという。Aさんは2019年5月、退職した。元自衛官Aさん「悪いことする奴と、なるべくそれを報告したくない上官の間で、うまいこと状況が合致すると逃げ場のない状況が生まれる。そうすると病むか、死ぬか、辞めてくか」Aさんは退職後、公益通報制度にのっとり、部隊の管理運営などを担う「陸上幕僚監部」にパワハラ行為を通報した。すると「調査を始める」という通知が届いた。しかしそれ以来3年、何の連絡も無く、上官からの説明も無いという。■被害訴え4年…初めて聞いた“処分”“謝罪”に感じる「静かな失望」私たちは問題の上官に話を聞くことにした。村瀬健介キャスター「TBSの村瀬と申しますけれども」上官「自衛隊の方から何も聞いてないんですけど」村瀬キャスター「部下だったAさんがパワーハラスメント、殴るとか蹴るとかいう被害を受けたと訴えていたという点についてはどうでしょうか?」上官「ちょっと待ってください。部隊として対処していることなので」村瀬キャスター「私たちは言い分を聞きに来た」上官「言い分は部隊を通してお話してます、本人にも。なのでこの場で自分からお話することはないです」上官は「部隊を通じてAさんに言い分を話した」と説明したが、Aさんにその覚えはない。この取材から5日後。Aさんに幹部から突然、電話がかかってきたという。何が起きたのか?Aさんは、電話のやりとりを録音していた。自衛隊の人事担当「自衛隊の処分は出ると思われます、まあ出ます、確実に。(上官は)認めているところについては謝罪をしたいと思っていると言っていた」パワハラ被害を訴え始めてから4年。具体的な処分や謝罪の話を聞いたのは、初めてのことだ。元自衛官Aさん「取材の動きを鑑みて、ようやく重い腰を上げたというか」村瀬キャスター「ここに至るまで4年間かかるというのはどうですか?」元自衛官Aさん「そうですね…国の擁する組織としては異常というか」「組織に対する静かな失望感みたいなのだけがある」岩手駐屯地は取材に「調査は継続中。処分が出れば公表する」と回答した。自衛隊のハラスメント対策は機能していない…。そんな声があちこちから聞こえてくる。■訴えたパワハラ被害が知らぬ間に“示談”…「もう許せない」2018年から沖縄の航空自衛隊の基地に勤務していたBさんもある上官から繰り返しパワハラを受けていた。元航空自衛官Bさん「髪の毛をわしづかみにされて頭を振り回されたり、お前のアゴはなんだ、という理由でアゴを殴られたり」その上官からBさんにかかってきた電話…。上官「死ねや。殺したる。鼻の骨も頭蓋骨も折るよ。なあ、全部折る、お前の骨」Bさんはパワハラの被害を別の上官に相談した。しかし…元航空自衛官Bさんの相談を受けた別の上官との電話「『ストレスのない職場』とか、ストレスのないような環境作りとか。そんなもの、理想じみたことをグダグダグダグダ抜かす奴は大嫌いなんだよ。このまま変わらないんだったら辞めろ」このケースでも、納得のいく対応がなされないまま、Bさんは退職に追い込まれることになった。Bさんがパワハラの相談を始めて2年余りが経った2021年、私たちはこの問題を取材。その直後、調査担当者から初めて電話がかかってきた。その内容は耳を疑うものだった。部隊内では「示談で済んでいる」と報告されているというのだ。元航空自衛官Bさん「事実と違うことを上級部隊に報告を上げられることは我慢できない。もう許せないですね。もみ消し、隠ぺいをしようという働きを感じとれるので激しい怒りが込み上げてくる」■相談窓口からも“裏切り”…「どうしようもない組織だなって」自衛隊のハラスメント対策に裏切られたという人は多い。元自衛官の女性Cさんは上官から数々の暴言を受けたという。元航空自衛官Cさん「『絶対退職しろよ。もう雑魚だよ』とか、そういうのも」職場へ行こうとすると手の震えが止まらなくなり、休職したという。部隊の幹部に訴えたが、調査は進まなかった。追い詰められたCさんは、防衛省のハラスメント相談窓口に助けを求めた。しかし、相談員は…元航空自衛官Cさん「あくびをしたりとか、半分目をつぶった状態が一瞬あったりとか。早く終わってほしいみたいな」「相手にされていない」。そう感じたCさんの体調はさらに悪化。母親が代わりに電話で相談したが…Cさんの母親「これいつになったら解決するんですか?」相談員「調査中とは聞いているのでうちは調査の過程・状況を確認するくらいしかできない」Cさんの母親「母・娘と一緒にいた部隊の中で自殺者が出たんです、パワハラで。同じことになったらどうなるんですか」Cさんもまた、失意のうちに退職した。元航空自衛官Cさん「最初は部隊に対して裏切られたなと思ったから、防衛省のホットラインを使って打つ手を打ったんですけれども。そこからも裏切りがあったりとか、なんかもうどうしようもない組織だなって」事情に詳しい弁護士は、対応するのが内部の職員であることを問題視する。佐藤博文 弁護士「対応する窓口はあるが、結局、各部隊に『こういう申告があったよ、だから調査しなさいね』っていうぐらいしか言わないわけですから実効性がない。それをちゃんと受け止めて『それはダメだよ』という第三者性を持った専門的な人が(対応を)やらないとならない」11月15日、浜田防衛大臣に聞くと…村瀬キャスター「被害者の方は口をそろえて『防衛省・自衛隊内部の調査は信用できないんだ』という風に言っています。こういった声に対して大臣はどういう風にお考えでしょうか?」浜田靖一 防衛大臣「いかにしてこういったもの(ハラスメント)を根絶していくかということを、明確にしながら、我々組織として大変大きな問題でありますので、そういう認識のもとに今後活動していきたい」■「ダメなものはダメ」 ハラスメント研修で幹部自衛官らが議論そんな中、11月18日。村瀬キャスター「こちら防衛省本部の建物の中です。こちらの会議室でハラスメント防止教育と書いてありますけれども、自衛隊幹部に向けた研修がたった今、行われているところなんです」2021年から始まった陸上自衛隊の「ハラスメント防止教育」。外部講師が具体例を説明し、幹部自衛官が議論を交わした。男性自衛官「戦場で命令で動いて、厳しいところも命令していかないといけない。それをハラスメントと思われると違うところもある。任務達成のための命令と、人を尊重して大事にするというところをしっかり切り分けていかないといけないのかなと」また五ノ井さんの事案を念頭にセクハラ対策についても話し合った。外部講師「よくこういうこと(セクハラ)があったという記事出ますよね、今までもね。管理者として誰も分からなかったのでしょうか」男性隊員「管理者としてではなかったとしても、それをちゃんと言える雰囲気じゃないとしても、ダメなものはダメ」■「一人一人の隊員を守ってほしい」五ノ井さんの自衛隊への思い久しぶりに宮城に帰省した五ノ井さんは、なじみの美容院を訪ねた。五ノ井さん「その節はありがとうございました。無事謝罪をもらいましたので」美容院を経営する男性「良かったねえ」五ノ井さん「本当にありがとうございます」男性の妻「まだまだ大変だと思うけど、痩せたよね」五ノ井さん「よく言われます」男性の妻「大変だったもんねえ。でも里奈ちゃんなら大丈夫だよ」11年前、五ノ井さんの故郷、東松島市は津波の被害を受け自宅も浸水した。当時小学5年生だった五ノ井さんはコミュニティセンターで避難生活を送った。五ノ井さん「廊下で過ごしてました。3か月以上は過ごしていましたね、段ボールを敷いて」「あとは入り口で炊き出しを自衛官の方がしてくださった」自衛隊は避難者のために各地で入浴支援を行った。五ノ井さんはそこで働いていた、ある女性自衛官の姿に憧れた。五ノ井さん「女性自衛官の方が何度もお湯をバケツに汲んで、入れてくれたっていう姿を見てやっぱり、かっこいいなと思いましたし、私もこういうところで働きたいとか、人のために生きたいなって思うようになりました」五ノ井さんはその女性自衛官と交流を続け、中学・高校を経て、自衛隊に入っても関係は続いた。入隊後、柔道でけがをして入院した時には「応援しているよ」と手紙をくれた。五ノ井さん「『私が里奈の一番の応援者でいる』って、嬉しかったですね、本当に」その女性自衛官にはセクハラ被害についても相談した。 勇気を出して声を上げた五ノ井さんを応援してくれたという。五ノ井さん「本当に自衛隊が嫌いで悪く言いたいとかじゃなくて、本当にいい環境になってほしいと思いますし、本当に素晴らしい職業なので、国を守ることもそうなんですけど、まず1人1人の隊員をしっかり守ってほしいなと思いますし、同じように声を上げた人がしっかり守られるような環境になってほしい」
陸上自衛隊の元自衛官、五ノ井里奈さん(23)は11月、2か月ぶりに宮城県東松島市の実家に戻った。
五ノ井さんは、自衛隊でのセクハラ被害を実名で告発し、防衛省と闘ってきた。2020年4月に自衛隊に入隊し、福島の郡山駐屯地に配属された五ノ井さん。女性が1割にも満たない部隊で日常的にセクハラを受けるようになる。そして2021年8月の訓練中に決定的な出来事が起きた。
陸上自衛隊の元自衛官 五ノ井里奈さん(23)「男性隊員の先輩が自分のところにやってきて、首を決めて倒して、そのまま覆いかぶさってきて。腰を振ってくる、そういう行為をされて、振りながら(他の隊員の)笑いを取る。もうどんどん自分の心と体が汚されていく」
五ノ井さんはその後「適応障害」と診断され、休職した。母親はその頃、実家に戻ってきた娘をカラオケに誘った。
五ノ井さん「カラオケ行って歌って。泣きながら歌ってたね」
母親「お母さんも里奈がカラオケで歌って、気晴らしできたらなと思ったけど、想定外のことで。泣いたことない里奈が泣き始めたから、お母さんも正直、戸惑ったのもあったけど。よっぽどつらい思いなんだろうなとは思ったよ、あの時ね」
五ノ井さんは部隊の幹部に被害を訴えたが、自衛隊はセクハラの事実さえ認めない。自殺を考えるほど追い込まれていき、2022年6月に退職した。
退職にあたり、自衛隊が母親に「一切の異議を申し立てない」とする同意書へのサインを求めた。
五ノ井さん「同意書、書いてたじゃん。それどうだった?」
母親「悔しい思い、親としてはね。まだ闘っている最中なのに、お母さんだって色んな上の人たちに掛け合って電話もして、色んな話を常にしてきたけど、あまりにもひどい」
五ノ井さんは退職後、実名でセクハラ被害を公表。その行動が大きな反響を呼び、自衛隊幹部、そして加害者が五ノ井さんに直接謝罪した。
しかし、苦しみは終わっていない。
五ノ井さん「食べられなくなった」
母親「何キロやせた?」
五ノ井さん「わからない。だいぶ(自衛隊)現役の頃よりは痩せた」
母親「だよね、顔ほっそりして」
五ノ井さん「最近、難聴がひどい」
母親「難聴?」
五ノ井さん「耳鳴りとか。ストレスで…」
五ノ井さんは今、ネット上で誹謗中傷を受けている。「自衛隊の女性は異常だ」「幹部に謝罪を強要した」など一方的に責め立てる内容も多い。
五ノ井さん「心の底から幸せって思う日がいつか来るのかな。輝いている日が来るのかなっていう不安はありますね。こういう事件があるとフラッシュバックとかするので、そこは仕方ないんですけど、この傷を一生抱えながら生きていかなきゃいけないんだと思うと、すごい不安に襲われる時がありますね」
自衛隊でハラスメントに苦しんでいる人は、他にもいる。五ノ井さんがネット上で被害の経験談の投稿を呼びかけると、146人もの現職隊員や元隊員がハラスメントの被害を訴えた。
3年前まで岩手駐屯地に勤務していたAさんも「上官からパワハラを受けていた」という。
取材中にAさんが取り出したのは壊れたメガネだ。
元自衛官Aさん「飲み会の帰りに殴られた、眉間を」
ヘルメットを被った頭を蹴り上げられたこともあるという。
元自衛官Aさん「俺の言っていたやり方と違うじゃないか、と言いながら(蹴りを)こうですね」
訓練中、Aさんが作業をしていると、トラックの荷台にいた上官が「やり方が違う」と激怒し、頭を強く蹴ったという。
元自衛官Aさん「自衛隊の靴は(釘の)踏み抜き防止の鉄板が入っているので、靴自体にそこそこ重量があるので、もうしばらく耳鳴りがするようでちょっと動けなくなってしまった」
2年にわたって理不尽な暴力を繰り返し受けたというAさん。部隊の幹部に被害を訴えたが、一向に対応がなされなかったという。Aさんは次第に、精神的に追い詰められていく。
元自衛官Aさん「夜も寝られなくて。特に訓練近くなるともうそれが嫌すぎて、睡眠障害じゃないですけど」
Aさんは退職を決意し、問題の上官に伝えることにした。その時の音声には…
上官「ふざけたことやってんじゃねえぞ、てめえ おい、おい、お前。なめんのもいい加減にしろよ」
元自衛官Aさん「もう無理なんですって」
Aさんが「退職したい」と伝えて席を立つと、上官は胸倉をつかんで怒鳴り、体を壁に押し付けたという。Aさんは2019年5月、退職した。
元自衛官Aさん「悪いことする奴と、なるべくそれを報告したくない上官の間で、うまいこと状況が合致すると逃げ場のない状況が生まれる。そうすると病むか、死ぬか、辞めてくか」
Aさんは退職後、公益通報制度にのっとり、部隊の管理運営などを担う「陸上幕僚監部」にパワハラ行為を通報した。すると「調査を始める」という通知が届いた。しかしそれ以来3年、何の連絡も無く、上官からの説明も無いという。
私たちは問題の上官に話を聞くことにした。
村瀬健介キャスター「TBSの村瀬と申しますけれども」
上官「自衛隊の方から何も聞いてないんですけど」
村瀬キャスター「部下だったAさんがパワーハラスメント、殴るとか蹴るとかいう被害を受けたと訴えていたという点についてはどうでしょうか?」
上官「ちょっと待ってください。部隊として対処していることなので」
村瀬キャスター「私たちは言い分を聞きに来た」
上官「言い分は部隊を通してお話してます、本人にも。なのでこの場で自分からお話することはないです」
上官は「部隊を通じてAさんに言い分を話した」と説明したが、Aさんにその覚えはない。
この取材から5日後。Aさんに幹部から突然、電話がかかってきたという。何が起きたのか?Aさんは、電話のやりとりを録音していた。
自衛隊の人事担当「自衛隊の処分は出ると思われます、まあ出ます、確実に。(上官は)認めているところについては謝罪をしたいと思っていると言っていた」
パワハラ被害を訴え始めてから4年。具体的な処分や謝罪の話を聞いたのは、初めてのことだ。
元自衛官Aさん「取材の動きを鑑みて、ようやく重い腰を上げたというか」
村瀬キャスター「ここに至るまで4年間かかるというのはどうですか?」
元自衛官Aさん「そうですね…国の擁する組織としては異常というか」「組織に対する静かな失望感みたいなのだけがある」
岩手駐屯地は取材に「調査は継続中。処分が出れば公表する」と回答した。自衛隊のハラスメント対策は機能していない…。そんな声があちこちから聞こえてくる。
2018年から沖縄の航空自衛隊の基地に勤務していたBさんもある上官から繰り返しパワハラを受けていた。
元航空自衛官Bさん「髪の毛をわしづかみにされて頭を振り回されたり、お前のアゴはなんだ、という理由でアゴを殴られたり」
その上官からBさんにかかってきた電話…。
上官「死ねや。殺したる。鼻の骨も頭蓋骨も折るよ。なあ、全部折る、お前の骨」
Bさんはパワハラの被害を別の上官に相談した。しかし…
元航空自衛官Bさんの相談を受けた別の上官との電話「『ストレスのない職場』とか、ストレスのないような環境作りとか。そんなもの、理想じみたことをグダグダグダグダ抜かす奴は大嫌いなんだよ。このまま変わらないんだったら辞めろ」
このケースでも、納得のいく対応がなされないまま、Bさんは退職に追い込まれることになった。Bさんがパワハラの相談を始めて2年余りが経った2021年、私たちはこの問題を取材。
その直後、調査担当者から初めて電話がかかってきた。その内容は耳を疑うものだった。部隊内では「示談で済んでいる」と報告されているというのだ。
元航空自衛官Bさん「事実と違うことを上級部隊に報告を上げられることは我慢できない。もう許せないですね。もみ消し、隠ぺいをしようという働きを感じとれるので激しい怒りが込み上げてくる」
自衛隊のハラスメント対策に裏切られたという人は多い。元自衛官の女性Cさんは上官から数々の暴言を受けたという。
元航空自衛官Cさん「『絶対退職しろよ。もう雑魚だよ』とか、そういうのも」
職場へ行こうとすると手の震えが止まらなくなり、休職したという。部隊の幹部に訴えたが、調査は進まなかった。追い詰められたCさんは、防衛省のハラスメント相談窓口に助けを求めた。
しかし、相談員は…
元航空自衛官Cさん「あくびをしたりとか、半分目をつぶった状態が一瞬あったりとか。早く終わってほしいみたいな」
「相手にされていない」。そう感じたCさんの体調はさらに悪化。母親が代わりに電話で相談したが…
Cさんの母親「これいつになったら解決するんですか?」
相談員「調査中とは聞いているのでうちは調査の過程・状況を確認するくらいしかできない」
Cさんの母親「母・娘と一緒にいた部隊の中で自殺者が出たんです、パワハラで。同じことになったらどうなるんですか」
Cさんもまた、失意のうちに退職した。
元航空自衛官Cさん「最初は部隊に対して裏切られたなと思ったから、防衛省のホットラインを使って打つ手を打ったんですけれども。そこからも裏切りがあったりとか、なんかもうどうしようもない組織だなって」
事情に詳しい弁護士は、対応するのが内部の職員であることを問題視する。
佐藤博文 弁護士「対応する窓口はあるが、結局、各部隊に『こういう申告があったよ、だから調査しなさいね』っていうぐらいしか言わないわけですから実効性がない。それをちゃんと受け止めて『それはダメだよ』という第三者性を持った専門的な人が(対応を)やらないとならない」
11月15日、浜田防衛大臣に聞くと…
村瀬キャスター「被害者の方は口をそろえて『防衛省・自衛隊内部の調査は信用できないんだ』という風に言っています。こういった声に対して大臣はどういう風にお考えでしょうか?」
浜田靖一 防衛大臣「いかにしてこういったもの(ハラスメント)を根絶していくかということを、明確にしながら、我々組織として大変大きな問題でありますので、そういう認識のもとに今後活動していきたい」
そんな中、11月18日。
村瀬キャスター「こちら防衛省本部の建物の中です。こちらの会議室でハラスメント防止教育と書いてありますけれども、自衛隊幹部に向けた研修がたった今、行われているところなんです」
2021年から始まった陸上自衛隊の「ハラスメント防止教育」。外部講師が具体例を説明し、幹部自衛官が議論を交わした。
男性自衛官「戦場で命令で動いて、厳しいところも命令していかないといけない。それをハラスメントと思われると違うところもある。任務達成のための命令と、人を尊重して大事にするというところをしっかり切り分けていかないといけないのかなと」
また五ノ井さんの事案を念頭にセクハラ対策についても話し合った。
外部講師「よくこういうこと(セクハラ)があったという記事出ますよね、今までもね。管理者として誰も分からなかったのでしょうか」
男性隊員「管理者としてではなかったとしても、それをちゃんと言える雰囲気じゃないとしても、ダメなものはダメ」
久しぶりに宮城に帰省した五ノ井さんは、なじみの美容院を訪ねた。五ノ井さん「その節はありがとうございました。無事謝罪をもらいましたので」美容院を経営する男性「良かったねえ」五ノ井さん「本当にありがとうございます」男性の妻「まだまだ大変だと思うけど、痩せたよね」五ノ井さん「よく言われます」男性の妻「大変だったもんねえ。でも里奈ちゃんなら大丈夫だよ」11年前、五ノ井さんの故郷、東松島市は津波の被害を受け自宅も浸水した。当時小学5年生だった五ノ井さんはコミュニティセンターで避難生活を送った。五ノ井さん「廊下で過ごしてました。3か月以上は過ごしていましたね、段ボールを敷いて」「あとは入り口で炊き出しを自衛官の方がしてくださった」自衛隊は避難者のために各地で入浴支援を行った。五ノ井さんはそこで働いていた、ある女性自衛官の姿に憧れた。五ノ井さん「女性自衛官の方が何度もお湯をバケツに汲んで、入れてくれたっていう姿を見てやっぱり、かっこいいなと思いましたし、私もこういうところで働きたいとか、人のために生きたいなって思うようになりました」五ノ井さんはその女性自衛官と交流を続け、中学・高校を経て、自衛隊に入っても関係は続いた。入隊後、柔道でけがをして入院した時には「応援しているよ」と手紙をくれた。五ノ井さん「『私が里奈の一番の応援者でいる』って、嬉しかったですね、本当に」その女性自衛官にはセクハラ被害についても相談した。 勇気を出して声を上げた五ノ井さんを応援してくれたという。五ノ井さん「本当に自衛隊が嫌いで悪く言いたいとかじゃなくて、本当にいい環境になってほしいと思いますし、本当に素晴らしい職業なので、国を守ることもそうなんですけど、まず1人1人の隊員をしっかり守ってほしいなと思いますし、同じように声を上げた人がしっかり守られるような環境になってほしい」
久しぶりに宮城に帰省した五ノ井さんは、なじみの美容院を訪ねた。
五ノ井さん「その節はありがとうございました。無事謝罪をもらいましたので」
美容院を経営する男性「良かったねえ」
五ノ井さん「本当にありがとうございます」
男性の妻「まだまだ大変だと思うけど、痩せたよね」
五ノ井さん「よく言われます」
男性の妻「大変だったもんねえ。でも里奈ちゃんなら大丈夫だよ」
11年前、五ノ井さんの故郷、東松島市は津波の被害を受け自宅も浸水した。
当時小学5年生だった五ノ井さんはコミュニティセンターで避難生活を送った。
五ノ井さん「廊下で過ごしてました。3か月以上は過ごしていましたね、段ボールを敷いて」「あとは入り口で炊き出しを自衛官の方がしてくださった」
自衛隊は避難者のために各地で入浴支援を行った。五ノ井さんはそこで働いていた、ある女性自衛官の姿に憧れた。
五ノ井さん「女性自衛官の方が何度もお湯をバケツに汲んで、入れてくれたっていう姿を見てやっぱり、かっこいいなと思いましたし、私もこういうところで働きたいとか、人のために生きたいなって思うようになりました」五ノ井さんはその女性自衛官と交流を続け、中学・高校を経て、自衛隊に入っても関係は続いた。入隊後、柔道でけがをして入院した時には「応援しているよ」と手紙をくれた。五ノ井さん「『私が里奈の一番の応援者でいる』って、嬉しかったですね、本当に」その女性自衛官にはセクハラ被害についても相談した。 勇気を出して声を上げた五ノ井さんを応援してくれたという。五ノ井さん「本当に自衛隊が嫌いで悪く言いたいとかじゃなくて、本当にいい環境になってほしいと思いますし、本当に素晴らしい職業なので、国を守ることもそうなんですけど、まず1人1人の隊員をしっかり守ってほしいなと思いますし、同じように声を上げた人がしっかり守られるような環境になってほしい」
五ノ井さん「女性自衛官の方が何度もお湯をバケツに汲んで、入れてくれたっていう姿を見てやっぱり、かっこいいなと思いましたし、私もこういうところで働きたいとか、人のために生きたいなって思うようになりました」
五ノ井さんはその女性自衛官と交流を続け、中学・高校を経て、自衛隊に入っても関係は続いた。入隊後、柔道でけがをして入院した時には「応援しているよ」と手紙をくれた。
五ノ井さん「『私が里奈の一番の応援者でいる』って、嬉しかったですね、本当に」
その女性自衛官にはセクハラ被害についても相談した。 勇気を出して声を上げた五ノ井さんを応援してくれたという。