夜の世界に生きるキャバクラ嬢たち。華やかな世界に見えるが、働ける期間は決して長いものではない。愛沢えみりや門りょう、エンリケなどといった元カリスマキャバ嬢のように、人脈や経験を生かして起業できるのはほんの一握りだろう。
では、普通のキャバ嬢たちは水商売を引退した後、どのような人生を歩むのだろうか。水商売で15年以上勤め上げ、さまざまなキャバ嬢たちの「その後」を見てきた筆者がその一例をご紹介する。 ◆「結婚」彼氏や太客に水揚げされた
引退したキャバ嬢のその後で最も多いのは、結婚というケースではないだろうか。付き合っていた彼氏にプロポーズされた、太客に水揚げされた……もちろん、結婚を理由に引退することは何も問題はないが、やめ方によってはキャバ嬢の人間性が問われることもある。 中でも揉めるのが「授かり婚」だ。一般的な会社員であれば、女性は妊娠が発覚したら会社に報告して産休や育休の申請をし、仕事の引き継ぎを行う。だが、キャバ嬢は酒を飲まないといけない仕事なので、現実的には続けることが難しくなる。そのため、妊娠したことで急に出勤しなくなるキャバ嬢も多い。 退店届は、やめる1ヶ月前に出すのがキャバクラの一般的な決まりである。もし、年末の繁忙期にキャストが突然来なくなったり、本来は大きな売り上げが見込めるバースデーイベントを控えた売れっ子キャバ嬢が出勤しなくなれば、店にとっても損害だ。店側も「結婚するにも、もう少し計画性を持ってやめてくれよ……」と嘆きたくなるだろう。 ◆「奨学金を完済」「独立・起業」キャバクラで働く“目的”が明確だった
たとえば、「奨学金の返済のために働いていたが完済した」「将来、独立するために貯金をしていたが目標金額に達した」など、それぞれの目的があって若いうちだけキャバクラで働くというケースだ。
これはキャバ嬢として理想的な引退といえるだろう。 そもそも、キャバクラの仕事は何年も続けるものではない。毎日のように飲み続けることは精神的にも肉体的にも年々、負担が大きくなっていく。目標を決めて貯金をしない限り、ダラダラと続ける羽目になってしまう。
◆若いうちにお金を稼いで「就職」
20代の間だけキャバクラで稼ぎ、その後引退して一般企業に就職するキャバ嬢は多い。
一方で、気がついたら30歳を超えて、履歴書に書けるような資格や職務経歴もないままに就職できる年齢でもなくなり、同級生の間でも浮いてしまう……というキャバ嬢も少なくはない。その点、今時の20代のキャバ嬢はしっかりと目標を持って働いており、将来に対しても堅実な子が多いと筆者は感じている。 ◆誰も連絡がとれずに「行方不明」
同じ店で働いていたキャストであっても、引退後は行方知らず……になるケースは少なくない。これは、「店をやめたから連絡をとらなくなる」という夜の街の人間関係の薄さを言っているわけではない。もちろん、そういうこともあるが、事実上、行方不明になるケースもあるのだ。 昔、大阪のキャバクラで働いていたときにAさんという年上のキャストがいた。私が店をやめた後も仲良くしていたのだが、ある日突然、店長から「Aさんが何日も出勤をしていないんだが、どこにいるか知らないか?」と筆者の元に連絡があった。 すぐにAさんに連絡を入れたが、つながらなかった。Aさんと最後に会ったのは3ヶ月前。居酒屋でいっしょに飲んで、「彼氏ができた」という話を聞いたのだった。
その後、Aさんと仲が良かったキャストに顛末を教えてもらって驚いた。
◆彼女は幸せに暮らしているのか… なんでも、Aさんは彼氏に「金を貸して」と言われていて、そのことを店長やキャストに相談していたようだ。彼氏に20万円ほど貸し、返済のために出勤を増やしていたようだが、次第に出勤が減っていき、店を休むようになった。ついには、誰も連絡がとれなくなったという。
彼氏と幸せに暮らしているのか、それとも借金のカタにどこか別の店で働いているのか……真相は不明のままである。 キャバクラを引退した後、幸せに暮らしている人も大勢いる。だが、中にはAさんのような人もいる。他人に流されずに明確な目標を持つことが、引退後の生活を大きく左右するのかもしれない。
<取材・文/カワノアユミ>