マイナビが「2022年度新卒採用・就職戦線総括」を発表し、その中で多くの2023年卒の就活生がいわゆる「配属ガチャ」に対して不安を感じていることがわかった。
「配属ガチャ」とは、入社後や入社直前に企業側から一方的に配属先を決められることが「運任せ」のようであることから、使われる言葉だ。
マイナビの調査の中でも、入社後の配属先の決定についての質問で最も回答が多かったのは「勤務地・職種ともに自分で適性を判断して、選びたい」で54.9%だった。
もし、新入社員が、決められた配属先が希望と異なることを理由に、断ることはできるのだろうか。山田長正弁護士に聞いた。●特段の事情がない限り、会社に広く裁量が認められるまず、会社の配属決定権について、会社の人事権の一内容として、会社に広く裁量が認められますので、原則的に、会社の広い裁量に基づく配属決定により、職種や勤務場所が決められます。ただし、入社前に、入社時における職種や勤務地等に関する合意が成立していた場合は別です。たとえば、,△訥度専門的なスキルを要する職種で、新卒社員が、そのようなスキルを持って入社する場合において、入社前の時点で、当該職種に就くことが確約される旨の明確な合意がなされる場合や、勤務地を確約する旨の明確な合意がなされる場合です。もっとも、通常、新卒正社員の場合、明確に上記,筬△旅膂佞なされることは稀でしょうから、新卒社員は、先ほど述べた結論になることが通常です。上記´以外でも、a会社に不当な動機・目的がある場合や、b新卒社員の受ける不利益の程度が著しく大きい場合等、特段の事情があれば、人事権行使が権利濫用として無効になる場合もあり得ます。そのため、このような特段の事情がない限りは、会社が決めた配属を拒否することは通常、業務命令違反ということで懲戒処分の対象となります。1人の社員の希望を聞いてしまうと、その後他の社員からも「Aさんは断っていたので私も」等と会社の配属命令に従わないということが起きる可能性が高くなり、企業秩序を維持できなくなるリスクがありますので、会社としても致し方ない措置といえます。ただし、拒否した社員を直ちに懲戒処分とすることは差し控えるべきであり、拒否した社員に対し説明と協議等を十分に行い、それでも拒否する場合に初めて懲戒処分を行うべきですので、ご注意ください。以上より、原則的に、今回のような「希望と異なる」との理由で配属を断ることはできないと考えます。●ミスマッチを防ぎ、早期離職を回避するリスク管理をすべきただし、「配属ガチャ」という言葉が世間に出回っている現状を踏まえますと、会社としては、採用の段階から、配属・配置転換の実情を説明しておくとともに、新卒社員の希望も踏まえて配属することに努める等、入社後のミスマッチを防ぎ、早期の離職という事態を極力避けられるようリスク管理を行っておくべきです。また、最近は、このような新卒社員の要望及び会社のニーズに基づき、大企業ではいわゆる「キャリアパス制度」を導入する企業も増えてきておりますので、今後、会社としては、このような制度を導入することも検討に値します。なお、上記の問題を踏まえて、現在、国の労働政策審議会では、社員の入社時において、労働条件通知書などに、入社後の業務内容や勤務地の異動範囲を明示させる旨の改正を行う旨の議論がなされているため、この点に関する今後の動向にも注意が必要です。【取材協力弁護士】山田 長正(やまだ・ながまさ)弁護士山田総合法律事務所 パートナー弁護士企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。事務所名:山田総合法律事務所事務所URL:http://www.yamadasogo.jp/
もし、新入社員が、決められた配属先が希望と異なることを理由に、断ることはできるのだろうか。山田長正弁護士に聞いた。
まず、会社の配属決定権について、会社の人事権の一内容として、会社に広く裁量が認められますので、原則的に、会社の広い裁量に基づく配属決定により、職種や勤務場所が決められます。
ただし、入社前に、入社時における職種や勤務地等に関する合意が成立していた場合は別です。
たとえば、,△訥度専門的なスキルを要する職種で、新卒社員が、そのようなスキルを持って入社する場合において、入社前の時点で、当該職種に就くことが確約される旨の明確な合意がなされる場合や、勤務地を確約する旨の明確な合意がなされる場合です。
もっとも、通常、新卒正社員の場合、明確に上記,筬△旅膂佞なされることは稀でしょうから、新卒社員は、先ほど述べた結論になることが通常です。
上記´以外でも、a会社に不当な動機・目的がある場合や、b新卒社員の受ける不利益の程度が著しく大きい場合等、特段の事情があれば、人事権行使が権利濫用として無効になる場合もあり得ます。
そのため、このような特段の事情がない限りは、会社が決めた配属を拒否することは通常、業務命令違反ということで懲戒処分の対象となります。
1人の社員の希望を聞いてしまうと、その後他の社員からも「Aさんは断っていたので私も」等と会社の配属命令に従わないということが起きる可能性が高くなり、企業秩序を維持できなくなるリスクがありますので、会社としても致し方ない措置といえます。
ただし、拒否した社員を直ちに懲戒処分とすることは差し控えるべきであり、拒否した社員に対し説明と協議等を十分に行い、それでも拒否する場合に初めて懲戒処分を行うべきですので、ご注意ください。
以上より、原則的に、今回のような「希望と異なる」との理由で配属を断ることはできないと考えます。
ただし、「配属ガチャ」という言葉が世間に出回っている現状を踏まえますと、会社としては、採用の段階から、配属・配置転換の実情を説明しておくとともに、新卒社員の希望も踏まえて配属することに努める等、入社後のミスマッチを防ぎ、早期の離職という事態を極力避けられるようリスク管理を行っておくべきです。
また、最近は、このような新卒社員の要望及び会社のニーズに基づき、大企業ではいわゆる「キャリアパス制度」を導入する企業も増えてきておりますので、今後、会社としては、このような制度を導入することも検討に値します。
なお、上記の問題を踏まえて、現在、国の労働政策審議会では、社員の入社時において、労働条件通知書などに、入社後の業務内容や勤務地の異動範囲を明示させる旨の改正を行う旨の議論がなされているため、この点に関する今後の動向にも注意が必要です。
【取材協力弁護士】山田 長正(やまだ・ながまさ)弁護士山田総合法律事務所 パートナー弁護士企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。事務所名:山田総合法律事務所事務所URL:http://www.yamadasogo.jp/