「金や反響目当て」「お荷モツの子どもも居なくなったから乗り換えも楽でしょうに」「新宿か秋葉原でどーなるか覚えておけ」などとツイッターで過激な投稿を続けた23歳の男。16日に行われた初公判で、男は不可解な説明を繰り返した。
2019年、東京・池袋で起きた事故で、妻の真菜さん(当時31)と娘の莉子ちゃん(当時3)を亡くし、交通事故の撲滅を訴え活動していた松永拓也さん。
その松永さんのツイッターに、油利潤一被告(23)は、今年3月、「金や反響目当てで、闘ってるようにしか見えませんでしたね。そんな父親、天国の松永莉子ちゃんと松永真菜さんが喜ぶとでも??」「お荷モツの子どもも居なくなったから乗り換えも楽でしょうに」などと書き込み、侮辱罪で在宅起訴された。
また、在宅起訴から2カ月後の今年8月には、ツイッターに、「新宿か秋葉原でどーなるか覚えておけ」などと投稿し、秋葉原の歩行者天国を一時中止させるなど、警視庁の業務を妨害した疑いで逮捕・起訴された。
侮辱罪と偽計業務妨害罪の2つの罪に問われている油利被告。16日に行われた初公判では、「間違いありません」と起訴内容を認めた。しかし、弁護人は「投稿は松永さんに対するものではなく別の人物へのものだった。松永さんを侮辱する意図は無かった」として、侮辱罪について無罪を主張。裁判で争うことになった。
検察の冒頭陳述によると、油利被告は画像加工アプリで、池袋の事故で有罪判決を受けた人物の顔写真に、「は??禁錮5年判決??負けたと思うなよ??」「二ラウンド目はここからだ!」という文字を加え、その画像をツイッターアカウントのプロフィール画像にしていたという。
また、松永さんに謝罪する旨のダイレクトメールを送る一方で、知人に対して「母子をお金に錬成した感じで逆にゴミって感じがするな」などといったメッセージを送っていたことが明らかにされた。侮辱罪について弁護側は無罪を主張しているが、被告人質問では不可解な説明がなされた。
弁護人:あのツイートをした背景を説明して油利被告:大阪で似たような事故があって、それを松永さんに知ってもらいたくて送った。弁護人:なぜ松永さんのアカウントに投稿した?油利被告:交通安全の運動をしていたので、どうしても記事を見てもらいたかった。弁護人:「金や反響目当て」というのは池袋の事故とは関係がない?油利被告:はい弁護人:「金や反響目当て」というのはどういう意味?油利被告:自分がちゃんとニュースを見ていなくて、大阪の事故の遺族が慰謝料を請求しているのだと思った。弁護人:大阪の事故について書いたものだった?油利被告:はい
投稿について、別の事故の遺族に対するものであり、松永さんを侮辱するものではなかったと不可解な説明をした油利被告。
検察官から「松永さんに何を知ってほしいと思ったのか」と追及されると、「うまく説明できません」と口ごもる場面も見られた。その後、油利被告は松永さんに謝罪した上で、今後のネットでの発信について「もうやりません」と述べて被告人質問は終了した。
裁判を傍聴席の最前列で見ていた松永さん。油利被告が語った言葉をどう受け止めたのか。裁判終了後に報道陣の取材に応じた。
Q・率直に今の気持ちは?松永さん:松永真菜、松永莉子という妻と娘の名前も出した上で、松永に言ったわけではないっていうのはさすがに無理があるなというふうに率直に感じます。残念だなと率直に思いました。
Q・被告人に対しての印象は?松永さん:自分を守りたいんだろうなと。全面的に認めることはしないというのは彼のプライドが見え隠れしているなと思いました。途中で半笑いしたりとかする場面もあり、この裁判の日までに彼はしっかりと自分自身と向き合うことはなかったんだなと。
Q・SNSをやめると言っていたが?松永さん:自分自身をコントロールできるのか疑問。法廷で感情をコントロールできなかったと言っていたので、私自身は、彼がこれからSNSを一切止めると言ったことに関しては、あんまり信用できないと思っています。
松永さんは、「ネットの誹謗中傷の恐ろしさを感じた。自分は死を選ぶタイプではなかったが、誹謗中傷を受けて、自ら命を絶ってしまう人がいるかもしれない。誹謗中傷が起きないような社会への一助となれるように活動につなげていきたい」と訴えた。次回の裁判で意見陳述を行う予定だ。
記者は、裁判前に、油利被告と2回接見している。その場では、罪を認め、謝罪の言葉を口にしていた。さらに「SNSは今後謹慎する」とも述べていた。
ところが、そう発言した直後に、「趣味用のツイッターは続けたい」と前言を翻し、さらに「自分も誹謗中傷を受けたからやってしまった」「警察の対応に根を持っていたからやってしまった」と責任を転嫁する言葉も聞かれた。
正直なところ、油利被告の主張には首をかしげてしまう。松永さんの指摘通り、自分がやったことを認めて向き合ってほしい、そう願っている。
(フジテレビ社会部・司法担当 高沢一輝)