防衛力強化に向け、政府の有識者会議は22日、報告書をまとめ、岸田総理に手渡しました。政府が「相当な増額」を目指す防衛費の財源について、「“幅広い税目”による負担が必要」として、“増税”を提言しました。
街の人の受け止めです。
男性(60代):「増税については、私は反対。いま、よくわからないところに、税金が大量に使われているから、そこのチェックが、一回、本当に必要なんじゃないか」
女性(20代):「日本に何もなければいいなとは思うが、これ以上、庶民から取られるのは、きつい」
男性(60代):「ある程度、防衛費の上積みはやむを得ないのかな。企業なり、富裕層なりを厚めに財源に向けてもらえると、一般の国民はありがたい」
女性(60代):「いろいろな物がお金かかっている。値上げしている状態で、何しろ家計は厳しい。(Q.自国の防衛に関して)国を守ってるわけだから…でも、どこまでお金を使うかというのもある」
報道ステーションが19日、20日に行った世論調査では、「ほかの予算を減らす」が43%で最多となりました。一方で「増税」は6%にとどまっています。
◆防衛費増額の財源の行方はどうなるのでしょうか。政治部・与党担当の平元真太郎記者に聞きます。
(Q.“幅広い税目”とは、具体的に何ですか)
自民党での税の議論を主導するのは自民党税制調査会。税調の幹部が強い主導権を持っています。宮沢税調会長は、防衛費増額の財源として、「白紙で検討」としつつも、税収の多い「法人税、所得税、消費税」の3つを具体的に挙げて、検討していく考えを示しています。
ただ、消費税については「社会保障の大切な財源」として、防衛費には充てない考えをすでに示しています。法人税については、経済界の反発、抵抗がすでに表面化しています。経団連の十倉会長は「国民、社会全体で広く薄く負担するのが適切である。財源として法人税が先行して議論されているとすれば、いかがなものか」と、法人税の狙い撃ちを強くけん制しています。政府の有識者会議の報告書の原案では『法人税』というのが具体的に示されていました。しかし、最終案で削られました。経済界に配慮する形になっていますが、法人税の増税という案が消えたというわけではありません。
(Q.物価高で苦しいなか、所得税が増税されるということも考えられるのでしょうか)
所得税は、私たち国民の財布を直撃することになります。今月の世論調査でも、防衛費増額の財源について聞くと、「ほかの予算を減らす」が43%で圧倒的に1位。「増税」と答えた人はわずか6%にとどまっています。こうしたなかで、所得税を上げていくのは、政治的には、かなりのパワーを使うことになってしまいます。
大型の国政選挙が3年間はない、いわゆる『黄金の3年間』を岸田総理は手に入れたとされていました。本来なら、痛みを伴う増税という政治的な体力使う議論、判断ができるような場面でしたが、旧統一教会問題などで政権の支持率は低迷しています。春には、統一地方選も控えるなかで、国民に嫌われる増税を、今の段階でどこまで打ち出していけるのかは未知数となっています。
(Q.一方で、“反撃能力”について聞いた世論調査では、「反撃能力を持つべき」とする人が約6割を占めています。国民生活は厳しく、政府も説得するような状況ではないとなると、また借金ですかという感じになりますが、党内ではどうなのでしょうか)
自民党内には、しばらくの間は、国債でまかなえばいいという意見があります。防衛力を高めて、平和な国が維持できれば、借金を返す子や孫も利益を享受することになるからといった理屈です。しかし、防衛費は、毎年、かかるお金なので、永遠にツケ払いというわけにはいきません。
(Q.政府・与党が防衛力の強化が必要で、防衛費を増やさなければいけないと考えているのなら、財源の議論についても先送りできないと思う。増税が必要だというのであれば、国民的な議論を巻き起こして、大方の理解を得たうえでやらなければいけない。今年の税制改正の議論は、逃げずに向き合う第一歩にしなければならないのではないでしょうか)