北海道・知床半島沖で観光船「KAZU 機淵ズワン)」が沈没した事故で、事故原因などを調べている国の運輸安全委員会は15日、中間的な報告にあたる「経過報告」を公表した。船首部分の「ハッチ」を密閉するための部品に不具合があったことが原因で大量の海水が船内に入り込んだうえ、電子制御系の部品が水につかってショートしたことでエンジンも停止したとみられると結論づけた。また、運航会社「知床遊覧船」のずさんな管理体制なども事故を引き起こす要因になったと指摘した。
【復元した画像に映っていたのは】 報告書によると、船首部分には甲板から船底につながる約50センチ四方のハッチがあり、ふたが付いていた。ふたの四隅にある「クリップ」と呼ばれる部品で固定すると密閉できる仕組みだった。しかし、事故発生の2日前に実施された救命訓練の参加者の証言から、クリップのうち二つが当時からしっかり固定できない状態になっていたことが判明した。また別の一つも摩耗が進んでいたという。 運輸安全委は事故当日に現場付近で海が荒れ始め、波が船首部分に打ち込んだことでふたが開いたとみている。さらに船体の状況から、このふたが完全に外れて客室の前面中央のガラス窓に当たり、破損させた可能性が高いとした。 甲板より下の部分は船首部分から、二つの船倉のほか、エンジンのある「機関室」や「舵機(だき)室」の4区画があり、それぞれ「隔壁」と呼ばれる仕切りがあった。しかし全ての隔壁に穴が開いた場所があり、ハッチや割れた窓を通じて流れ込んだ海水がそこから船底全体へ広がった。電子制御系の部品は海水につかってショートし、エンジンが停止したとみられる。 また、カズワンはもともと比較的穏やかな水域を航行するための船で、波が高いと海水が流入しやすい構造だったという。 運輸安全委は乗客1人の全地球測位システム(GPS)機能付き携帯電話の位置情報を解析し、事故当日の航路も特定した。カズワンは事故当日の4月23日午前10時ごろ、ウトロ漁港(北海道斜里町)から出航。往路はほぼ予定通りで、午前11時47分ごろに折り返し地点の知床岬に到達した。しかし復路で速度が大幅に低下していた。沈没したとされる「カシュニの滝」付近にカズワンが到達した午後1時ごろには、現場周辺の波の高さは約2メートルに達していたとみられる。 さらに船を安定させるためのバラスト(砂袋)の位置が、船首側が沈みやすい状況になっていたことも分かった。日本小型船舶検査機構(JCI)が禁止していたにもかかわらず、バラストの一部を規定の場所から動かしていた可能性があるという。 事故では、乗員乗客計26人のうち、20人の死亡が確認された一方、乗客6人が行方不明のままとなっている。【木下翔太郎】
報告書によると、船首部分には甲板から船底につながる約50センチ四方のハッチがあり、ふたが付いていた。ふたの四隅にある「クリップ」と呼ばれる部品で固定すると密閉できる仕組みだった。しかし、事故発生の2日前に実施された救命訓練の参加者の証言から、クリップのうち二つが当時からしっかり固定できない状態になっていたことが判明した。また別の一つも摩耗が進んでいたという。
運輸安全委は事故当日に現場付近で海が荒れ始め、波が船首部分に打ち込んだことでふたが開いたとみている。さらに船体の状況から、このふたが完全に外れて客室の前面中央のガラス窓に当たり、破損させた可能性が高いとした。
甲板より下の部分は船首部分から、二つの船倉のほか、エンジンのある「機関室」や「舵機(だき)室」の4区画があり、それぞれ「隔壁」と呼ばれる仕切りがあった。しかし全ての隔壁に穴が開いた場所があり、ハッチや割れた窓を通じて流れ込んだ海水がそこから船底全体へ広がった。電子制御系の部品は海水につかってショートし、エンジンが停止したとみられる。
また、カズワンはもともと比較的穏やかな水域を航行するための船で、波が高いと海水が流入しやすい構造だったという。
運輸安全委は乗客1人の全地球測位システム(GPS)機能付き携帯電話の位置情報を解析し、事故当日の航路も特定した。カズワンは事故当日の4月23日午前10時ごろ、ウトロ漁港(北海道斜里町)から出航。往路はほぼ予定通りで、午前11時47分ごろに折り返し地点の知床岬に到達した。しかし復路で速度が大幅に低下していた。沈没したとされる「カシュニの滝」付近にカズワンが到達した午後1時ごろには、現場周辺の波の高さは約2メートルに達していたとみられる。
さらに船を安定させるためのバラスト(砂袋)の位置が、船首側が沈みやすい状況になっていたことも分かった。日本小型船舶検査機構(JCI)が禁止していたにもかかわらず、バラストの一部を規定の場所から動かしていた可能性があるという。
事故では、乗員乗客計26人のうち、20人の死亡が確認された一方、乗客6人が行方不明のままとなっている。【木下翔太郎】