【独自】4000万円以上もタダ働き…下請け業者が激怒「ビッグモーターから受けた仕打ちを許さない」

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「たびたび行われる激しい減額要請で、取引額は3割程度まで激減しました。でも『ウチに売り込みに来ている業者は山ほどいる』と脅され、従うしかなかった。本当に悔しい気持ちです」
自動車のメンテナンスを専門に行う関東地域の企業で事業部長を務める50代のAさんの言葉には、怒りが滲(にじ)み出ていた。
ビッグモーターによる悪質な”下請けいじめ”が認定されたのは3月15日だった。公正取引委員会は1社に対する件数としては過去最多となる17件の勧告・指導を行ったと発表。冒頭のAさんが、その実態を明かす。
「業務単価の一方的な引き下げは日常茶飯事でした。今回、認定された例でいえばペットの除毛作業。車のシートなどに絡まったペットの毛は完全に除去することが難しく専用機器も必要なので、作業料の相場は3万円ほどです。しかし、ビッグモーターでは3000円だった。1年以上、無償でやらされていた期間もありました。でも、取引停止をチラつかされたら文句は言えません。10年以上前に業務を始め、最盛期は月100万円以上、売り上げがありました。でも、昨年は月30万~40万円まで激減しました。今思えば、厳しい減額要請が始まったのは、5~6年前に兼重宏一前副社長(35)が就任して以降だと思います」
Aさんは昨年7月、関係の深かったビッグモーターの店長に生活の困窮を訴えた。そこには生活を切り詰めなければならないほど苦しい実態が綴(つづ)られている(3枚目写真)。しかし、その店長も「会社の方針」と返すだけだった。
「支払いが滞(とどこお)ることも多々ありました。世界的なインフレを受け業務価格は変動するので、入金の遅延は避けてほしいのですが、『請求書が今確認できました。もう締め日を過ぎたので来月になります』など言いわけをされるのです」
Aさんの会社は長期間にわたり不当な扱いを受けてきた。今回の発表を受け、社として争う意思を固めたという。
「ビッグモーター本部に下請法違反の申立書を送ったこともあります。でも、『違反はなかった』として、対応してもらえなかった。直近の5年間だけでも、相場と照らし合わせれば少なくとも4000万円の減額被害に遭(あ)っています。今後、弁護士を通じて賠償を求めていきます」
自動車のコーティング会社を運営する50代のBさんは、取引開始にあたり異例の条件を出された。
「家族や社用車の車検の満了日を聞かれ、ビッグモーターで受けることを強要されました。自動車保険も、ビッグモーターが代理店を務める損保に切り替えさせられた。断ると、なんと出禁になるんです。他にも店長の車を無償でコーティングさせられるなど理不尽な依頼や未払いは何度もありました。でもビッグモーターは大得意先だから耐えていたんです」
板金塗装工場を経営する60代のCさんは、ビッグモーター社員の車を無償修理させられたと語る。「下請業者なんだからサービスでやってくれ、というスタンスだった」と言うが、取引停止の恐怖から、従うしかなかったという。
他にも公正取引委員会が認定した事例は車の強制購入や、店舗の草抜きや側溝の掃除への無償参加など多岐にわたる。
公正取引委員会は、第三者を入れての検証や下請け事業者の利益の保護を要請している。今後の展開を自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏が解説する。
「ビッグモーター社内では下請け事業者専用の問い合わせ窓口の開設が検討されているそうです。伊藤忠商事から最大200億円の出資が決定したばかりですから、コンプライアンスを重視していくことになると思います。下請けいじめが蔓延した一因は、やはり宏一氏にあると思います。宏一氏は『コストは安ければ安いほど利益を出したとして賞賛する』という風土を作った張本人。その中で育った社員の多くは新会社に残ります。再スタートにあたり、今一度、社員たちをどうやって正しい道に引き戻すのか考えるべきでしょう」
下請け事業者の悲痛な叫びを、ビッグモーター側はどう考えているのか。質問状を送ったところ、以下の返答があった。
「取引先をはじめ関係者の皆様にご迷惑・ご不安をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。現段階で窓口(の開設)の件も含めた改善指導勧告内容に対応を進めております」
新体制スタート直前に、またも明らかになった不正の実態。再建に向けて本当に必要なのは巨額の支援金ではなく、客や取引先を大切にする当たり前の姿勢だ。
『FRIDAY』2024年4月5・12日号より

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