【清水 芽々】Z世代女子の就職先がヤバすぎた!故郷の「セクハラ町役場」でコスプレを強要され撮影まで…専門家が指南する「解決方法」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

企業や大学、自治体のトップが「ハラスメントを許さない」という決意を示す「ゼロハラ宣言」を公表する動きが日本でも広がっているが、どこか空々しい。先日も岐阜県岐南町の町長が、第三者委員会に99のセクハラやパワハラを認定されて辞職に追い込まれた。
大学で地方創生を学び「地域の活性化に貢献したい」――そんな高邁な志を胸に故郷の町役場にUターン就職した矢代桃香さん(仮名・26歳)だったが、現実は雑用ばかり。直接業務に携わることはなく、酒席ではホステス扱いされる“最悪な職場”である。
この町役場のHPには、「パワハラ・セクハラを許す社会にしてはいけない」などという「ゼロハラ宣言」が大きく掲げられていた。市民のための相談窓口も設置してある。実態がまるで伴っていないのである。NPO法人「労働相談カフェ東京」の理事長・横川高幸氏は、
「近年、コンプライアンス意識は高まり、大企業ではセクハラやパワハラに対して厳しい目を向けるようになりました。しかし社会全体を見れば不十分な点が多い。年功序列など、古い体質の残る公務員などにおいても若手職員や女性の意見や要望などが尊重されていない、といった声が届いています」と話すが、
桃香さんが受けたセクハラには、まだまだ続きがあった。
前編「Z世代女子の就職先は故郷の「セクハラ町役場」。ボディタッチは当たり前、デュエットを強要されるのは序の口で…【専門家のアドバイス】」に続きリポートする。
町役場には男性職員のほとんどが在籍している草野球のチームがあり、試合や大会などの際には女性職員も休職手当つきで応援に駆り出されるそうだが、ただ観に行けば業務完了というわけにはいかないらしい。「女性職員は強制的にマネージャーとか応援団をやらされる」という。
「マネージャーは飲み物を用意したり、弁当を手配したりといった裏方がメインで、主に年輩の女性職員が担当します。若い女性職員はTシャツとスカートで、チアガールを強要されます。それだけでも最悪なのですが、他の女性職員には、ひざ丈くらいのスカートが支給されるのですが、私だけパンツが見えそうなミニスカートだったのです」
桃香さんがリーダー的存在の女性職員に「なぜ私だけミニスカートなのでしょうか?」と聞いたところ「アナタが一番若いから」と言われたらしい。
「間違った考え方なので、『それはおかしい』と食い下がったら、近くにいた男性職員が『見せても減るもんじゃないし別に構わないでしょ?』と口を挟んできました。『これはセクハラですよ』と説明すると、あからまさに不愉快な顔をして、舌打ちをして去って行きました。
他の人たちもうんざりしたような目で私を見るし、何か、私がひとりでダダをこねてるようで、気まずい雰囲気になりました」
桃香さんは、仕方なくチアガールの役目を果たしたが、「私が足を上げる度に男性職員が正面でカメラを向けて来るんです。あれは絶対に狙っていました。撮られてしまったと思います」という。
人格をまるで無視しているかのような扱いに憤る桃香さんだったが、さらに「受け入れられなかった」のが、上司のプライベート案件だった。
「『エプロンと軍手を持って、ウチに来てくれ』と言われたので何だろうと思ったら、引っ越しの手伝いだったんです」
他にも数名同僚が呼ばれていたという。男性職員は家具の運搬などの力仕事を済ませるとさっさと帰ってしまったというが、桃香さんともうひとりの女性職員は上司とその妻に指示されるままに、衣類や生活用品などの整理・収納や夕飯の買い出し、トイレ掃除などをやらされたという。
「『嫁入り修業だと思いなさい』と言われて、上司のパンツまで畳まされました」
夜の10時過ぎにやっと解放された時も上司からは『お疲れさん』の一言だけだったという。
「せっかくの休みだったのに、なんで家政婦みたいなことをやらされるんだろ…」
上司宅からの帰り道につい愚痴った桃香さんは、肩を並べて歩いていた女性の同僚に「そういう職場だからしょうがないんだよ。偉いのは男、女は黙ってついてくればいい!そういう考え方が沁みついてるんだもの」と諭された。
ちなみにこの同僚は前述した「女性の地位向上を訴えて職場を追いやられた」元女性職員と親しかったひとりで、なおのこと「正しいことを言って逆らっても、ろくなことがない」を実感しているひとりでもあった。その彼女に、
「どうしても(職場が)イヤならいっそ辞めるっていう手もあるよ」と言われたそうだが、そう簡単には行かないという。
「田舎では公務員ほど安定した仕事はないのである意味エリートで、いまだにこの地域では『縁談に有利』みたいな言い方までされます。中途半端な辞め方をしたら周りにヘンな詮索をされそうだし、ろくな求人もない田舎じゃ再就職もままなりません。悪評は私だけではなく、私の両親や親族にまで及ぶでしょう。何より、役場勤めが決まった時『これで一生安泰だよ』と喜んでくれた両親や親類をがっかりさせたくない気持ちが強くて、辞める選択肢は取れません」
これ以外にも、上司には「上司と部下の間柄で水臭いことを言うな」とわけのわからない理屈で、冠婚葬祭の会場に呼び出されて子守りをさせられたり、子供の運動会に呼び出され、上司の祖父母や親戚のための昼食の用意をさせられたあげく、上司の子供のビデオ撮影までさせられている。
ここまで触れただけでも桃香さんの職場の異常性を感じ取って頂けたと思うが、さらに異質なのは、そんな彼女の環境を地域住民が「当たり前のこと」として受け止めていることだった。
桃香さんは、地元自治会の婦人部長に「町役場の人間ってここまでやらなきゃダメなんですかね?」と聞いたことがあるが、その際に「そりゃそうよ。だって役場は良妻賢母を育てる場所でもあるのだから」という答えに驚愕している。
「それで話は『だから役場勤めの女の子は縁談に困らないのよ』と続くんです。役場は『目上の人間の言うことに従って、他人の世話を焼いたり、家事や育児を完璧にこなす花嫁修業の場も兼ねている』ということみたいです」
実際、地元住民と顔見知りが増えるにつれて、「うちの息子(または孫)の嫁にならないか?」と職場で声をかけられることが増えているという。「役場の女性はモテる説」を体感しているようだが、桃香さんは「そんなの願い下げ。業務妨害だし、迷惑でしかない」と吐き捨てた。
岐阜県岐南町のケースでは、セクハラやパワハラの被害を受けた職員たちが一丸となって町長との会話を録音したり、被害者同士で情報共有するなどの自衛策を講じるなどして立ち向かった。しかし桃香さんのケースでは、町役場のかなりの数の男性職員が加害者側であり、女性職員たちも諦めている。また、狭い地域であるがゆえに、個人で告発しようものなら、彼女の家族を含めて、理不尽な悪評が広まりかねない状況である。
桃香さんに現状打破の道はあるのだろうか。改めて、NPO法人「労働相談カフェ」の理事長・横川高幸氏に相談すると、
「打開策としては然るべき機関に訴えて改善を求める方法があります。ただ、地域の特異性から、彼女がさらに別の意味で追いつめられる可能性が高いことが考えられるので現実的には難しい。一方でこの状態が続けば心身に不調をきたしかねないので放置できる問題でもない。
桃香さんの場合、本来の志が生かせる公益性のある職場は町役場に限ったことではないと思うし、まずは自分の人生を大切に考えて、我慢する・あらがう以外の第三の選択肢として、転職も視野に入れた方が良いかも知れません」
とアドバイスを寄せてくれた。
彼女に伝えると、「確かにその通りかも知れません」と少しだけ明るい表情をみせてくれた。新たな人生へ踏み出す日は近いかも知れない。
清水 芽々氏の連載「押しかける友人たちに「夜の夫婦生活まで邪魔されて」、夫の地元に移り住んだ都会育ちの新妻がマジ切れの日々。「結婚後のUターンは注意が必要」とタウン誌編集者も指摘」もあわせてどうぞ
押しかけてくる友人たちに「夜の夫婦生活」まで邪魔されて…夫の地元に移り住んだ「都会育ちの新妻」がブチ切れた理由【タウン誌編集者が「結婚後のUターンは要注意」と指摘】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。