「カラス語」でゴミ集積所を荒らすカラス撃退、足立区の対策が大きな成果…ゴミ出す住民の意識も向上

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ゴミの集積所を荒らすカラス。
東京都内でも各地で住民の頭を悩ませているが、足立区が昨夏に実施した対策が大きな成果を上げ、注目を集めている。カラスが嫌がる「カラス語」を利用して集積所から追い払うという前代未聞の対策で、見事に成功し、カラスが姿を見せなくなったという。ゴミを出す住民の意識向上にもつながったといい、区は今後も必要に応じて実施していく考えだ。(斉藤新)
■いたちごっこ
区には以前から、集積所のカラスについて区民から苦情が寄せられており、様々な対策を講じてきた。
まず、区が使用したのが「防鳥ネット」。集積所でゴミ袋にかぶせて、カラスが袋をつつくのを防ぐものだが、ゴミの出し入れの際にずれてしまい、隙間ができることもある。
学習能力の高いカラスはそれを見逃さず、集積所のパトロールをしていた区の職員が、数羽のカラスがくちばしでネットの端をつまみ、中のゴミ袋をつまみ出す様子を目の当たりにしたという。
そこで、区では体に物が当たるのを嫌うカラスの特徴に注目し、ネットを設置した場所の上部にタワシやテープなどをひもでつるしてみたが、「最初は効果があっても、しばらくすればカラスは慣れてしまう」(足立清掃事務所の担当者)と効果は続かなかった。
こうした中、区がたどり着いたのが、カラス被害のコンサルタント会社「CrowLab(クロウラボ)」(宇都宮市)が開発した「クロウ(カラス)コントローラー」だった。
■鳴き声を分析
機器は縦21センチ、横16センチ、厚さ10センチの大きさで、カラスが近づくと赤外線センサーが反応し、スピーカーから数秒間カラスの鳴き声が流れる。人や天敵である猛禽(もうきん)類が近づいた際に録音したカラスを不安にさせる鳴き声で、周囲のカラスに「この場所は危険」だと知らせる。
区が昨年6月から9月、竹ノ塚駅周辺など特にカラスの被害が大きい集積所5か所で機器を試験導入すると、効果はすぐに表れた。集積所に近づいてきたカラスが鳴き声を聞くと、その場から離れていく様子が確認されたという。
同社社長で宇都宮大特任助教の塚原直樹さん(44)は20年以上カラスを研究しており、カラスの鳴き声のサンプルを収集し、どのような状況で鳴いたのかを分析するなどしてきた。「1万以上のサンプルを分析した結果、警戒した際のカラスの鳴き声が、別のカラスを遠ざけることが確認できた」と自信をみせる。
■意識向上にも
思わぬ「副作用」もあった。センサーはゴミを出す人などにも反応してカラスの鳴き声を周囲に放つため、ゴミを出す人は、カラスが近くにいるように感じるのか、自然とネットの中央にゴミを出すようになった。また、荒らされていない集積所を見て別の集積所を利用する住民も防鳥ネットを正しく利用するなど設置前に比べ自発的にカラス対策を行うようになったという。
区は昨年12月、クロウコントローラー5台を正式に購入。今後、集積所への設置の要望があれば貸し出しを行うほか、集積所をきれいに使うことを呼びかけるチラシも配布する。
足立清掃事務所の長谷川澄雄所長は「カラスを集積所から移動させるだけでなく、ゴミを出す住民の行動変化にもつながった。今後も住民の意識の変化を促しながら、きれいな街・足立を目指していきたい」と話している。

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