【安積 明子】二階幹事長の「不出馬」宣言のウラ事情…「世耕を潰し、岸田に恩を売り、自らは生き残る」その恐ろしい深謀遠慮

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1月には宏池会解体を宣言し、2月には自ら政倫審に出席するなど、まるで人を驚かせば支持率が上昇していると思い込んでいるような岸田文雄首相。そして3月は安倍派幹部らを自ら聴取するときた。
いや、その前にやるべきことがあるだろう。たとえば2022年6月12日に地元・広島で開かれた「岸田文雄先生内閣総理大臣就任を祝う会」をめぐる“闇パーティー疑惑”についての説明だ。主催者代表は岸田首相の後援会会長で、岸田事務所が受付を担当。3か月後の9月12日に、祝う会から岸田首相が代表を務める自民党広島県第一選挙区支部に321万5167円が寄付されている。
さらに同年、岸田首相は政治資金パーティーを7回も開き、約1億5000万円を売り上げた。2001年に閣議決定された大臣規範は大規模パーティーの自粛を求めているが、これが認められるなら、大臣規範は形骸化しているといってよい。
さすがに2月29日の政倫審で岸田首相は在任中のパーティー自粛を宣言したが、なぜここまで「首相ビジネス」に勤しんだのかを国民にきちんと説明すべきだ。
そもそも派閥のパーティー券をめぐって岸田首相が安倍派幹部らを直々に聴取するのは、派閥のパーティー券問題に果敢に取り組む姿勢を示すことで、こうした問題を糊塗(こと)するためでもあるのではないか。実際に3月の各社世論調査では、内閣支持率の下げ止まり傾向が見てとれる。
岸田首相にとって最も重要なことは、党内からの反発を回避すると同時に、世論の好感を得ることだ。あまり厳しく処罰しすぎると、9月の総裁選で票が得られず、かといって処罰が甘いと世論の反発を招いてしまう。その塩梅が難しいところだが、安倍派幹部4名については「選挙で非公認」との厳しい処分案が出ているのは、政倫審でしらを切りとおした彼らに世間の同情がほとんどないからだろう。
なお直近5年間の不記載額が3526万円と現職議員として最多の二階俊博元幹事長は、3月25日に次期衆議院選への不出馬を宣言した。もっとも二階氏の処分については森山裕総務会長も慎重で、3月20日には「党規委員会に上程する前に執行部で議論するのが前例になっているので、踏襲したい」と述べている。
というのも、二階派の武田良太事務総長が2月29日の政倫審で「二階会長は派閥の象徴」と述べたように、二階氏を処分するとなると、今は解散したとはいえ40名近くの二階派の反発を招きかねず、9月の総裁選で再選を目指す岸田首相には大きなダメージとなりかねない。しかし二階氏の不出馬宣言はそれを避けた形になり、いわば岸田首相に「貸し」を作った形になる。
その二階氏には最近、「4月に政界引退する」との噂が流れたが、それが今回の不出馬表明に繋がると、ある自民党関係者は述べた。
「二階さんには後継を争う長男と三男がいて、二階さんの本命は三男だったが、2016年の御坊市長選に落選した長男も意欲を見せ、なかなか1本化できなかった。さらに10増10減で和歌山県内の小選挙区は3から2に減少するのに、世耕弘成前参議院幹事長が衆議院への転出を虎視眈々と狙っていた。
今回の処分で安倍派幹部である世耕氏の衆議院転出は困難になったので、新2区には安心して三男をあてがうことができる。また長男には次期衆議院選で新和歌山1区に転出する鶴保(庸介)さんの後釜として参議院和歌山選挙区をあてがうという案もある」
参議院5期目の鶴保氏は二階氏の側近のひとりで、いわば身内も同じ存在だ。2028年まで任期があるが、2025年10月に任期満了を迎える衆議院に転出することで、参議院和歌山選挙区では早期に補選が行われることになるだろう。
もしそうなるなら、二階氏は自ら責任をとった形になることに加え、“宿敵”だった世耕氏を排除することができる。さらに岸田首相にとっても二階氏を直接処罰せずにすみ、まさにWIN-WINの関係になっている。
岸田首相は4月に上旬に処分を発表した後、バイデン大統領から国賓待遇を受けるために訪米する。10日に日米首脳会談を行い、11日にはアメリカ議会で日本の総理大臣として9年ぶりに演説する予定だ。
そしてアメリカから最高のもてなしを受けたことで、岸田首相はますます政権継続への自信を深めていくだろう。金与正朝鮮労働党副部長が3月25日に「日本側が日朝首脳会談の早期開催を打診してきた」と発言したことも、岸田首相の意欲の一環と見るべきか。
総裁選まで半年を残すばかりの現在、岸田首相は我が身を省みる暇もなく、ただ猛烈に前進しようとしている。
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