国産砂糖の生産量、過去最低 「収入減る」嘆く農家、急減の要因は

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てん菜(ビート)を原料にした国内産砂糖の生産量が急速に減っている。2023年は前年比2割減の45万5800トンにとどまり、過去最低となる見通しだ。背景にあるのは、健康志向の高まりに伴う「砂糖離れ」と地球温暖化。消費量の減少が農家の生産意欲の低下につながる悪循環を生み、気候変動による病害が拍車をかけている。
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2023年の砂糖の生産量減の直接的な原因は猛暑による「斑(かっぱん)病」の大量発生だった。てん菜の葉が枯れ、精製できる砂糖が大幅に減ったという。
斑病が起こると、てん菜は新しい葉を生やそうとして蓄えている糖を使い、低糖分になる。22年までは「16~17度台」で推移していた平均糖度が23年は「13・7度」まで落ち込んだ。ホクレンてん菜生産部原料課は「記録的に低い数字」と指摘する。
帯広の中村さんの農場でも畑全体に斑病が広がった。糖度は13%台前半まで下がり、「売り上げがかなり下がった」とこぼす。災害や病害で生産が激減した年に収入を補償する制度はあるものの、直近数年の実績が基準となるため、「今年や来年も続くと、将来的に収入が大きく減ってしまう」と言う。
農業団体は生産農家のサポートを強化。ホクレンと北海道糖業、日本甜菜(てんさい)製糖の糖業3者でつくる日本ビート糖業協会の札幌支部は斑病対策の優良事例を集めたパンフレットを作製し、農家などに配っている。散布する水を増やす▽薬剤の散布をこまめにする――などの対策を紹介する。
作付面積は想定を超えるペースで減っている。24年は農林水産省が26年の指標として示した5万ヘクタールを下回る可能性が高い。農業団体は農家に個別に作付けの依頼をしており、ホクレンの担当者は「非常に厳しいが、何とか作付面積の確保につなげたい」と力を込めた。【片野裕之】

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