「十勝」入れる?入れない? 国立公園の新名称巡り“要請合戦”

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今夏にも国立公園に「格上げ」される見通しの日高山脈襟裳国定公園で、新名称に関する議論が巻き起こっている。焦点は「十勝」を盛り込むか否かだ。関係市町村は十勝を加えた「日高山脈襟裳十勝国立公園」とするように環境省に求めている。一方、自然保護団体は「十勝の併記は、観光利用でしかない」と反発を強める。22日にある環境省の中央環境審議会自然環境部会で取り上げられ、意見が交わされる。【鈴木斉】
じゃあ源頼朝は…? キラキラネーム議論は白熱した 法制審議会
日高山脈襟裳国定公園は、南北に走る日高山脈で、東側の十勝エリアと西側の日高エリアに分かれている。帯広市の米沢則寿市長は1日、十勝側の6市町村(帯広市と芽室、清水、大樹、広尾各町、中札内村)を代表し、日高町村会の大西正紀会長(えりも町長)とともに、環境省北海道地方環境事務所(札幌市)を訪れた。関係自治体の総意として新名称に十勝を加えるように求める環境相宛ての要望書を牛場雅己所長に手渡すためだ。
要望書は「観光客や利用者に地理的な位置をわかりやすくするため、『日高山脈襟裳十勝国立公園』とされたい」と明記。さらに米沢市長は、十勝エリア自治体の思いを込めた6市町村連名の要望趣旨書も提出した。
要望趣旨書は、日高に加え、十勝の名を冠した国立公園が誕生することで、日高山脈の自然に対して十勝エリアの住民の保全意識が高まるとし、「環境保全と観光利用が調和した国立公園を育み、日高・十勝地域の発展に資する」という内容だ。市の担当者は「観光一辺倒ではない」と狙いを語った。
自治体の動きに十勝自然保護協会や道内の自然保護団体で構成する北海道自然保護連合は反発を強めている。帯広市内で7日、記者会見した十勝自然保護協会の佐藤与志松共同代表は「日高と十勝にまたがる日高山脈は地理的固有名詞で、すでに十勝は内包されている。あえて新名称に十勝を加えるのは屋上屋を架すもので、必然性がない」と批判した。
さらに、「『阿寒』『摩周』」国立公園などのように名前が並ぶ既存の国立公園は、それぞれ独立した自然地域として併記されていると指摘し、「日高山脈の東山麓(さんろく)が指定エリアの十勝側に独立した自然地域はなく、合理性に欠ける」と主張する。
2団体の代表も14日、環境省道地方環境事務所を訪れ、「十勝を入れないように」との要望書を提出。新名称を巡る問題は「要請合戦」の様相を呈している。
環境省が昨年末に実施したパブリックコメントによると、名称に関する意見は14件あり、そのすべてが「十勝を加えることに反対」というものだった。公表された意見をみてみると、「『日高山脈国立公園』などシンプルに」「地域名を入れだすとキリがない」「観光利用のために十勝を入れるべきではない」などという声があった。
名称に十勝を--との動きは2021年から、十勝管内の市町村長らで構成する十勝圏活性化推進期成会などが推進し、地元経済界の期待も高い。ただし、財界人の一人は「名称うんぬんよりも、一日も早く国立公園として正式に指定されることが大事だ」と指摘。議論の行方を冷静に見守っている。
環境省自然環境局国立公園課によると、22日の自然環境部会は、委員に名称を巡る地元の意見、パブコメの結果などを提示して協議する予定。新名称の方向性が固まる可能性もあるという。国立公園の指定は環境相が今春の中央環境審議会に諮問し、答申を受けて夏にも正式決定する見通しだ。
日高山脈襟裳国定公園
北海道中央南部を南北約150キロにわたって走る日高山脈を中心とする国定公園。総面積は10万3447ヘクタールで、国定公園としては国内最大。十勝、日高エリアの13市町村に広がっている。

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