ジャニーズ性加害問題で遺族が初告白 亡くなった後も続く誹謗中傷「投稿は消せても…残る傷」 支援団体による対策とは【news23】

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ジャニー喜多川氏の性加害問題で去年、実名で被害を公表していた男性が妻と幼い子どもを残し、自ら命を絶ちました。男性の妻が初めてメディアの取材に応じ、SNSでの誹謗中傷は、現在も続いていると語りました。
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2023年10月、妻と幼い子どもを残して、ジャニーズ事務所に在籍していた男性(40代)は自ら命を絶ちました。
亡くなった男性の妻「帰ってこないのが変な感じ、今でも。いなくなってから3か月。まだ3か月がよくわからないまま過ごしています」

1990年代、10代の頃にジャニーズ事務所に在籍していたという男性。30年近く経った2023年、ジャニー喜多川氏からの性被害を公表しました。タレント活動から離れた男性は、別の仕事で真面目に働き、休日は子どもとよく遊ぶ優しい父親でした。亡くなった男性の妻「よく出かけていました。『沖縄来年も行こう』って言っていた」男性がジャニーズ事務所に電話で被害を訴え出たのは、2023年5月。事務所に何らかの対応を求めましたが、返事がないと話していたといいます。そして2023年9月、実名で被害を訴え始めたのです。
亡くなった男性の妻「『絶対に名前と顔は出さないで』ってずっと言っていました。(夫は)信憑性がないとか、信じてもらえないから、名前も顔も出した方がいいという本人の考えだった。そこから誹謗中傷も増えていった」SNS上には誹謗中傷の言葉とともに、男性と家族の個人情報が瞬く間に拡散されました。
SNSで実際にあった投稿「金目的?って言われても仕方ない」
亡くなった男性の妻「名前、電話番号、住所、子どもの写真も載りました。主人も『ある程度の誹謗中傷は覚悟していた』と言っていたが、自分だけじゃなくて周りを苦しめていくとだいぶ気にしていました。『これだけ言われ続けて生きていくくらいなら死んだ方がまし』と言っていた」妻が男性から、性被害の詳細について初めて話を聞いたのは、亡くなる数日前のことでした。
亡くなった男性の妻「性被害にあったときも睡眠薬を1瓶飲んで飛び降りようとしたことがあったというようなことを聞いて、そのときに『死に損なった』みたいな。どこかで止められなかったかなとか思います。いまだに後悔します」妻に打ち明けた数日後、男性は大阪府・箕面市内の山の中で命を絶ったのです。職場には、妻と子どもに宛てた手紙が残されていました。
家族に宛てた手紙(一部抜粋)「当初、ジャニーズの問題で今まで忘れてた記憶が蘇り怒りが出たのと同時に辛さも有り、この社会悪を淘汰するには被害者の声が一人でも多く必要と考え、今まで何もした事の無い自分が初めて社会の役に立ち、(子どもの名前)が少しでも暮らしやすい社会に変えられるんじゃないかとの思いで声をあげました。ただ、最近色んな思い出せなかった記憶がどんどん蘇り、平常心を保つのが難しくなってきました」亡くなった男性の妻「主人が言っていたのが『誹謗中傷に対する対策がなさすぎる』って言ってたのは、それは私も感じます」
男性が亡くなった後も、誹謗中傷は続いています。
亡くなった男性の妻「『奥さんがお金のために売り込んで殺した』とかね。本人が亡くなっているじゃないですか。それでターゲットがいなくなったから家族に向かってくる。どうなったら終わるのかな」2023年12月、妻は支援団体と大阪府警に向かいました。すでに男性への誹謗中傷については被害届を提出していましたが、家族の分についても相談したといいます。
亡くなった男性の妻「今後、子どもが携帯を持つようになって、色んなものを目にするようになったときに、少しでもこの先が変わったらいいなと思います」
小川彩佳キャスター:ネットの誹謗中傷対策を行うNPOの代表の森山さんは、性被害を実名で訴えて亡くなった男性とそのご家族の支援も行っています。男性が亡くなる直前にも電話で話をしたということですが、どんなやり取りがあったのでしょうか。
NPO法人「ビリオンビー」代表 森山史海氏:子どものことをずっと気にしていました。自分だけだったら、いくらでも戦えたんだけれども、子どもに迷惑をかけてしまった。子どもが苦しんでるのを見て、葛藤があるって言わなかったら良かったんじゃないかなと悩んでいました。でも、やっぱり言わなくちゃいけないというのと、自分が黙ってたことで、次から次へ性被害が続いてきたわけなので「自分も加害者なんです」と他の皆さんも言うのです。だからこそ、実名で顔を出してきちんと世の中を変えていきたいという思いがあって、一生懸命活動しようとしているけれども、そんな中で誹謗中傷を受けるので、心の負担は思っている以上にあると思います。小川キャスター:他の元ジャニーズJr.の方からも相談を受けているということですが、どんな相談が森山さんのところに寄せられていますか。森山氏:やはり「急に不安になる」と皆さん言います。どこでどう見られてるかもわからないし、相手がわからないということがものすごく怖い。対話ができれば自分の主張ができますが、そういうのが一切できない状態で、「とにかく怖い」と聞きます。
藤森祥平キャスター:森山さんの団体には誹謗中傷に悩んでいる方などから、19年間で3000人もの相談がありました。問題のある書き込みがあった場合、弁護士らの協力を得ながら、記録・監視をしているというメッセージを送ります。そうすると、9割近くの誹謗中傷が止まるということです。つまり、「自分たちが送ったメッセージが罪にあたるなんて思ってなかった」とハッとしてやめるということです。森山氏:色んな対策をしてみましたが、行き着いたところはすごくシンプルで「あなたのここは誹謗中傷にあたりますよ」「こういう法的措置が取られるんですよ」と提示するだけなんですね。「あとは自分で考えてくださいね」「こういう事例がありますよ」「こういう判例がありますよ」というのを言うだけで、あとはこちらからは何も言わないです。言ってしまうと反論をされたり、水掛け論になったりします。あくまでも私達は「あなたたちも守りたいんですよ」というスタンスに変えてから、だいぶ変わりましたね。ただ、それを受け入れるには時間がかかります。「こっち(加害者側)が正しい」と思っている方が多いのです。小川キャスター:メッセージを送ることで、自分のしていることが誹謗中傷だということに気付くものですか?森山氏:誹謗中傷はいくら言っても止まらないんですね。自分で認識していただいて、自分で判断しなければ、言えば言うほど誹謗中傷は酷くなっていくことの方が多いです。小川キャスター:こうしたシステムというのは個人に対しては、今、停止しているんですか?森山氏:ものすごく時間がかかるので、夜中も30分おきにチェックしたり、夜中に電話したり、何があるかわからないので、そういうことをしてると限界があるんですね。ただ、その仕組み自体は、こういうふうにすれば止まるというのがわかっているので、あとは自動化していくだけというところです。
小川キャスター:一方、こうした個人のNPOだけで対応しきれるものではないです。国としては法整備を含めて、どういった対策を考えているんでしょうか。TBSスペシャルコメンテーター 星浩氏:誹謗中傷への対応というのは、大きく分けると3つあります。
▼民事訴訟▼現行法▼法改正それぞれ、簡単ではありません。民事訴訟は人手不足で、手間とお金もかかります。現行法での対応は、SNSが普及する前に作られたものが多いので使い勝手が良くない。少しずつ改正の動きはありますが、時間がかかっています。やはり国会も政府も、もう一歩踏み込んだ対応が必要になってきているというのが現状だと思いますね。
小川キャスター:森山さんは野党のヒアリングにも参加されていますけれども、誹謗中傷をなくすためには、どうしたらいいと思いますか?森山氏:まずは教育だと思います。法改正をしても届かないというところがあります。結局、まずは誹謗中傷が「書かれない」こと。今、どんなに法改正しても、一件書かれて拡散されてしまったら、何万件なんてすぐいってしまうんです。そうすると「消す」というのは、もう不可能なわけです。そこに時間とお金をかけるのであれば、自分たちがしてることがどういうものなのかということをわかるような教育をしないと、意味がないと思います。小川キャスター:子どもたちに対してということですか?森山氏:それは子どもも大人もみんなそうです。
小川キャスター:投稿が消えても、人が受けた痛みというのは消えるものなのでしょうか?森山氏:私は書くのをやめてもらうとか、そういうのは簡単にできると思うんですね。私は「誹謗中傷の後遺症」と言っていますが、傷ついた心はなかなか治せないものです。10年も20年も続いてしまうので、そっちの方が問題。それをまだ皆さん、知らない。そういうことを知っていくことによって「怖いな」「誹謗中傷はやっちゃいけないんだな」というのがわかってくるので、そういう発信をした方がいいのではないかなと思います。
NEWSDIGアプリでは『SNSでの誹謗中傷対策』などについて「みんなの声」を募集しました。Q.SNS上の誹謗中傷最も有効な対策は?「法規制の強化」…60.6%「SNS運営側の対策強化」…28.4%「SNSルール等の教育」…7.9%「その他・わからない」…3.1%※2月12日午後11時22分時点※統計学的手法に基づく世論調査ではありません◇今、悩みを抱えているという方は「日本いのちの電話」などの相談窓口があります。厚生労働省のホームページでは、このほかにもさまざまな相談窓口が紹介がされています。<相談窓口>【日本いのちの電話】・フリーダイヤル 0120-783-556 毎日:午後4時~午後9時 毎月10日:午前8時~翌日午前8時・ナビダイヤル 0570-783-556 午前10時~午後10時誹謗中傷に悩む方は「違法・有害情報相談センター」と検索すると、無料の相談窓口がでてきます。

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