ANA機の乗客が「CAに噛みついて」逮捕…いまこそ考えたい客室乗務員に“男性”を増やすべき理由

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1月16日、羽田空港からシアトルに向かったANA機内で客室乗務員(CA)に噛みついてケガを負わせたとして、警視庁東京空港署は米国籍の男(55)を逮捕した。男は「睡眠導入剤を飲んでいて記憶がない」と供述しているが、同機は太平洋上から引き返して17日未明に羽田に到着した。
【写真】やはり女性がメインターゲットとなっている国内航空各社の客室乗務員採用ページ
この件をニュースで見て感じたのが、CA採用のあり様を変化させることである。日本の航空会社では女性が大多数だが、その採用方針に別の枠を設けてもいいのでは、ということだ。CAという職業は、かつては「スチュワーデス」と呼ばれ、美女が採用される職業的なイメージがあった。途中、「スチュワード」という男性CAを表す言葉も登場したが、令和の時代になっても女性のための職業といったイメージがある。もちろん以前より男性CAは増えている。
1980年代後半、読売新聞の海外版に掲載されていた漫画ではアメリカから帰国する男性が日本人の女性CAのきめ細やかなサービスに対し「やはり日本のスチュワーデスさんと接すると癒やされるよ」的なことを言うシーンがあったことを覚えている。確かに当時のアメリカのエアラインでは飲み物の配布サービスの際、女性CAが「カフェorティー!」などとキレたように乗客に言っていたことはあった。
それと比べるといかに日本人女性CAが優しいか、といったことをこの漫画は示したのだが、普通に考えるとCAという職業は接客業の側面はあるものの、肉体労働である。重いスーツケースを収納棚に乗せてあげることもあるだろうし、事故の際は体を張って乗客の安全確保をしなくてはいけない。
もしかしたら、ホスピタリティの面で女性の方が向いているという考えは根強いかもしれないが、飛行機というものは「多くの乗客が長時間を過ごす閉鎖空間」だ。そこには監獄の「看守」的な存在も必要なのだ。2018年に東海道新幹線内で刃物を持った男が無差別に乗客を切りつけ男性一人が死亡し、女性二人が負傷した事件がある。その後は民間の警備員が車内を循環するようになった。これと同じことをやる必要があるのだ。
さすがに警備員を一人雇う、といったルールを作ってしまうと外注費が膨大になるため、ここは自社が雇ったCAが警備員的役割も兼務するようにすればいいのだ。その際、通常のCAとは別枠のCA採用をするべきである。たとえばこんな感じだ。
Muscular Cabin Attendant(MCA=強いCA)Safety and Security mission Cabin Attendant(SSCA=警備対策CA)
ここで性差をつける必要はないため、たとえば採用条件として【1】格闘技経験がある【2】身体能力のテストを受けてバーベルスクワット100kg以上を上げることができる【3】合気道有段者【4】警備会社勤務経験あり【5】自衛隊経験者【6】大学体育会出身者――などを応募条件にする。
当然、何らかのトラブルがあった時、この職種に就いている従業員が先頭に立って狼藉者に対峙する必要があるため「危険手当」も支給する必要はあるだろう。さらには格闘家やプロアスリートのセカンドキャリアとしても人気の職業にしてしまう。そのためにはプロ野球やJリーグ、さらには大相撲のセカンドキャリア支援関連団体とも連携し、採用への応募を促すといったことも必要かもしれない。
何しろCAという職業は昭和の時代は尻を触られたりもするようなこともあったし、1980年代には「空のホステス」的な言われ方をされていた。男性乗客の娯楽・性的欲望を叶えるような存在、といった見られ方すらあったのだ。
しかし、「スチュワーデス」や「スッチー」という呼び方すら蔑称・人権無視的に解釈されCAとなったのだが、女性だからということで被害に遭う人もいるだろう。だからこそ、このような別の採用枠を設けてはいかがであろうか。当然この枠で採用された人は通常業務に取り組むほか、いざという時にその卓越した身体能力を使い機内の安心・安全と秩序を守るために仕事をするのだ。そんな時代に今はなっているのではなかろうか。
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。
デイリー新潮編集部

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