キャンプ場でラップバトル、有名インスタグラマーの前に長蛇の列…ヤバい“新種キャンパー”たち

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2010年代後半からはじまったといわれている第二次キャンプブーム。以来、キャンプ人口は増え続けており、ファミリーキャンプのみならず、ひとりで行うソロキャンプや、テントの設営、食事の用意をしなくてもいいグランピングなど、キャンプの方法も多様化している。
【写真】この記事の写真を見る(2枚) キャンプを愛する人が増えるのは喜ばしいことだが、そのなかにはいろいろな意味で“ヤバいキャンパー”もまぎれているという。◆◆◆

爆音でラップの曲が流れているコテージ コロナ禍をきっかけにソロキャンプデビューを果たした森山悟さん(仮名)は、今年の夏に迷惑なキャンパーに遭遇し「度肝を抜かれた」と話す。「8月の終わり頃、首都圏にあるキャンプ場にソロキャンプに行きました。テントを設営して、夕方頃、炊事場に水を汲みに向かったんです」 そこは、テントを設営して宿泊するフリーサイト以外に、大人数で利用できるコテージもあるキャンプ場だった。家族連れも多く、夏休みのにぎやかなムードが漂っていたが、1軒だけ違う意味で盛り上がっているコテージがあったという。iStock.com「そのコテージからは、爆音でラップの曲が流れていたんです。キャンプ場は基本的に鳴り物が禁止なので、その時点ですでにルール違反。加えて、プロジェクターでコテージの壁に映像まで流していたんですよ」管理人が注意してラップバトルは強制終了 男女6人ほどで訪れていたそのグループは、アウトドアチェアに座り、プロジェクターの映像を見ていた、と森山さん。動画の内容は不明だが、知らないアーティストの曲が流れていたという。「僕が水を汲んで同じ道を戻ってくると、今度はスピーカーで曲を流してラップバトルをしていました。全員テンションが高かったので、酔っ払っていた感じです。いやいや、さすがに自由すぎる、と思ってキャンプ場の管理人さんに伝えました。管理人さんは、ほかの利用客からも彼らにクレームが入っているので、これから注意しに行く、とため息をついていましたね」 その後、管理人が注意をしたらしく、ラップバトルは強制終了。音楽も鳴り止んだという。「僕自身、キャンプ歴が浅いのでわかりませんが、少なくともこの2年間でプロジェクターを使っている人は初めて見ました。チェックアウトの際、管理人さんに昨日のコテージ客について訊いてみると『音楽は素直に消してくれたけど、その後、消灯時間を過ぎても焚き火を消さずに騒いでいたから、再度注意しました』と言っていました。相当お疲れの様子でしたね」 森山さんは「せめて、最低限のルールは守ってほしいです」と語った。キャンプ場で繰り広げられるマウント合戦 キャンプ歴20年を超える畠山正樹さん(仮名)は、90年代のキャンプブームに比べれば、利用客のマナーはよくなっていると話す。「昔は音楽も禁止されていなかったから、そこら中でギターと太鼓の音が鳴り響いてましたね。バーベキュー後のゴミを放置するのも当たり前、という荒れた状況でした。そうした時代を経て、キャンプ場のルールが厳しくなったので、約4年前にはじまった第二次キャンプブーム以降は、客側のマナーも向上している印象です。それに今は、焚き火跡やゴミを放置したキャンパーはSNSで晒されるリスクがあるので、それを危惧している人もいるかもしれません」 そして、以前は見かけなかった“SNS映え”を意識するキャンパーも急増しているとか。とくに有名なキャンプ場は、定番の撮影スポットがあるので“映えたい人”が集まりやすい傾向がある。「写真写りが重要だからか、とにかくテントの設営場所にこだわってますね。それから早起きして“朝日と自分”を撮ったり、コーヒーを飲んでる姿をあらゆる角度から撮ったりしているのをよく見ます。自分はキャンプ飯を食べたり、お酒を飲んだりするのが好きでキャンプをしているので、ずっと写真を撮っている人を見ると『何しに来てるんだろう』と、不思議に思います。 富士山のふもとにあるキャンプ場に行ったときには、アウトドア界隈で有名なインスタグラマーが来ていたらしく、列をなして写真撮影会が開かれてました。大自然の中で見ると、あれは異様な光景でしたね」 そのほかにも、動画を撮影しながら延々とひとりで喋り続けるYouTuberなど、令和のキャンプ場はニュータイプのキャンパーであふれているという。無言のマウンティングに耐えられず、ブランド物に手を出す人も また、キャンプに使う道具を意味する「キャンプギア」にお金をかける層も少なくない、と畠山さん。「海外の有名ブランドでギアを揃えたり、入手しにくくなっている大型テントを持っていたりすると、キャンプ場でのヒエラルキーが上位になります。周りが有名メーカーのテントばかりなので、ビギナーがホームセンターで揃えたギアで行くと、恥をかくような状況になっていると思います。 そういうビギナーテントに対して、ベテランキャンパーが小さい声で『あのテント、写真に写っちゃって邪魔だなあ』とつぶやいているのを聞いたことがあるんですよ。そうした周りのテントから漂う無言のマウンティングに耐えられず、ブランド物に手を出す人が多いんじゃないかな」 現場では、SNSにアップされた写真には写らないキャンパーたちのマウント合戦が繰り広げられているのだ。こうした状況から、キャンプギア市場も“ヤバい状況”になっているそう。「オークションサイトでは、有名メーカーの中古テントが1つ60万円で落札されるのもザラ。ブーム前に僕が1万円で買ったアウトドアチェアと同じ種類のものは、オークションサイトで7万円になっていました。機能性が高いわけでもない、普通のイスでも、ブランドで値段が決まる状況です。 高騰状態が続いているので転売ヤーも横行しているし、キャンプ場では盗難事件も頻発してます。机やランタン、イス、焚き火台など外に出してあるものは盗難に遭いやすいです。マウンティングのために高価なギアを揃えるのもリスクが高いですよね」 今やキャンプは、自然を満喫するだけのレジャーではなくなっているようだ。 キャンプのハイシーズンは夏だが、暑すぎず寒すぎない“秋”を推す声も多い。まだ十分楽しめる季節だが、ヤバいキャンパー認定をされないように気をつけたいものだ。(清談社)
キャンプを愛する人が増えるのは喜ばしいことだが、そのなかにはいろいろな意味で“ヤバいキャンパー”もまぎれているという。
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コロナ禍をきっかけにソロキャンプデビューを果たした森山悟さん(仮名)は、今年の夏に迷惑なキャンパーに遭遇し「度肝を抜かれた」と話す。
「8月の終わり頃、首都圏にあるキャンプ場にソロキャンプに行きました。テントを設営して、夕方頃、炊事場に水を汲みに向かったんです」
そこは、テントを設営して宿泊するフリーサイト以外に、大人数で利用できるコテージもあるキャンプ場だった。家族連れも多く、夏休みのにぎやかなムードが漂っていたが、1軒だけ違う意味で盛り上がっているコテージがあったという。
iStock.com
「そのコテージからは、爆音でラップの曲が流れていたんです。キャンプ場は基本的に鳴り物が禁止なので、その時点ですでにルール違反。加えて、プロジェクターでコテージの壁に映像まで流していたんですよ」
男女6人ほどで訪れていたそのグループは、アウトドアチェアに座り、プロジェクターの映像を見ていた、と森山さん。動画の内容は不明だが、知らないアーティストの曲が流れていたという。
「僕が水を汲んで同じ道を戻ってくると、今度はスピーカーで曲を流してラップバトルをしていました。全員テンションが高かったので、酔っ払っていた感じです。いやいや、さすがに自由すぎる、と思ってキャンプ場の管理人さんに伝えました。管理人さんは、ほかの利用客からも彼らにクレームが入っているので、これから注意しに行く、とため息をついていましたね」
その後、管理人が注意をしたらしく、ラップバトルは強制終了。音楽も鳴り止んだという。
「僕自身、キャンプ歴が浅いのでわかりませんが、少なくともこの2年間でプロジェクターを使っている人は初めて見ました。チェックアウトの際、管理人さんに昨日のコテージ客について訊いてみると『音楽は素直に消してくれたけど、その後、消灯時間を過ぎても焚き火を消さずに騒いでいたから、再度注意しました』と言っていました。相当お疲れの様子でしたね」
森山さんは「せめて、最低限のルールは守ってほしいです」と語った。
キャンプ歴20年を超える畠山正樹さん(仮名)は、90年代のキャンプブームに比べれば、利用客のマナーはよくなっていると話す。
「昔は音楽も禁止されていなかったから、そこら中でギターと太鼓の音が鳴り響いてましたね。バーベキュー後のゴミを放置するのも当たり前、という荒れた状況でした。そうした時代を経て、キャンプ場のルールが厳しくなったので、約4年前にはじまった第二次キャンプブーム以降は、客側のマナーも向上している印象です。それに今は、焚き火跡やゴミを放置したキャンパーはSNSで晒されるリスクがあるので、それを危惧している人もいるかもしれません」
そして、以前は見かけなかった“SNS映え”を意識するキャンパーも急増しているとか。とくに有名なキャンプ場は、定番の撮影スポットがあるので“映えたい人”が集まりやすい傾向がある。
「写真写りが重要だからか、とにかくテントの設営場所にこだわってますね。それから早起きして“朝日と自分”を撮ったり、コーヒーを飲んでる姿をあらゆる角度から撮ったりしているのをよく見ます。自分はキャンプ飯を食べたり、お酒を飲んだりするのが好きでキャンプをしているので、ずっと写真を撮っている人を見ると『何しに来てるんだろう』と、不思議に思います。 富士山のふもとにあるキャンプ場に行ったときには、アウトドア界隈で有名なインスタグラマーが来ていたらしく、列をなして写真撮影会が開かれてました。大自然の中で見ると、あれは異様な光景でしたね」 そのほかにも、動画を撮影しながら延々とひとりで喋り続けるYouTuberなど、令和のキャンプ場はニュータイプのキャンパーであふれているという。無言のマウンティングに耐えられず、ブランド物に手を出す人も また、キャンプに使う道具を意味する「キャンプギア」にお金をかける層も少なくない、と畠山さん。「海外の有名ブランドでギアを揃えたり、入手しにくくなっている大型テントを持っていたりすると、キャンプ場でのヒエラルキーが上位になります。周りが有名メーカーのテントばかりなので、ビギナーがホームセンターで揃えたギアで行くと、恥をかくような状況になっていると思います。 そういうビギナーテントに対して、ベテランキャンパーが小さい声で『あのテント、写真に写っちゃって邪魔だなあ』とつぶやいているのを聞いたことがあるんですよ。そうした周りのテントから漂う無言のマウンティングに耐えられず、ブランド物に手を出す人が多いんじゃないかな」 現場では、SNSにアップされた写真には写らないキャンパーたちのマウント合戦が繰り広げられているのだ。こうした状況から、キャンプギア市場も“ヤバい状況”になっているそう。「オークションサイトでは、有名メーカーの中古テントが1つ60万円で落札されるのもザラ。ブーム前に僕が1万円で買ったアウトドアチェアと同じ種類のものは、オークションサイトで7万円になっていました。機能性が高いわけでもない、普通のイスでも、ブランドで値段が決まる状況です。 高騰状態が続いているので転売ヤーも横行しているし、キャンプ場では盗難事件も頻発してます。机やランタン、イス、焚き火台など外に出してあるものは盗難に遭いやすいです。マウンティングのために高価なギアを揃えるのもリスクが高いですよね」 今やキャンプは、自然を満喫するだけのレジャーではなくなっているようだ。 キャンプのハイシーズンは夏だが、暑すぎず寒すぎない“秋”を推す声も多い。まだ十分楽しめる季節だが、ヤバいキャンパー認定をされないように気をつけたいものだ。(清談社)
「写真写りが重要だからか、とにかくテントの設営場所にこだわってますね。それから早起きして“朝日と自分”を撮ったり、コーヒーを飲んでる姿をあらゆる角度から撮ったりしているのをよく見ます。自分はキャンプ飯を食べたり、お酒を飲んだりするのが好きでキャンプをしているので、ずっと写真を撮っている人を見ると『何しに来てるんだろう』と、不思議に思います。
富士山のふもとにあるキャンプ場に行ったときには、アウトドア界隈で有名なインスタグラマーが来ていたらしく、列をなして写真撮影会が開かれてました。大自然の中で見ると、あれは異様な光景でしたね」
そのほかにも、動画を撮影しながら延々とひとりで喋り続けるYouTuberなど、令和のキャンプ場はニュータイプのキャンパーであふれているという。
また、キャンプに使う道具を意味する「キャンプギア」にお金をかける層も少なくない、と畠山さん。
「海外の有名ブランドでギアを揃えたり、入手しにくくなっている大型テントを持っていたりすると、キャンプ場でのヒエラルキーが上位になります。周りが有名メーカーのテントばかりなので、ビギナーがホームセンターで揃えたギアで行くと、恥をかくような状況になっていると思います。
そういうビギナーテントに対して、ベテランキャンパーが小さい声で『あのテント、写真に写っちゃって邪魔だなあ』とつぶやいているのを聞いたことがあるんですよ。そうした周りのテントから漂う無言のマウンティングに耐えられず、ブランド物に手を出す人が多いんじゃないかな」
現場では、SNSにアップされた写真には写らないキャンパーたちのマウント合戦が繰り広げられているのだ。こうした状況から、キャンプギア市場も“ヤバい状況”になっているそう。
「オークションサイトでは、有名メーカーの中古テントが1つ60万円で落札されるのもザラ。ブーム前に僕が1万円で買ったアウトドアチェアと同じ種類のものは、オークションサイトで7万円になっていました。機能性が高いわけでもない、普通のイスでも、ブランドで値段が決まる状況です。
高騰状態が続いているので転売ヤーも横行しているし、キャンプ場では盗難事件も頻発してます。机やランタン、イス、焚き火台など外に出してあるものは盗難に遭いやすいです。マウンティングのために高価なギアを揃えるのもリスクが高いですよね」
今やキャンプは、自然を満喫するだけのレジャーではなくなっているようだ。
キャンプのハイシーズンは夏だが、暑すぎず寒すぎない“秋”を推す声も多い。まだ十分楽しめる季節だが、ヤバいキャンパー認定をされないように気をつけたいものだ。
(清談社)

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