なぜ若者に嘲笑されても「おじさん構文」はなくならないのか? 中高年が「絵文字」を送らざるを得ない“切実な事情”

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当方50歳のオッサンである。最近、メッセンジャーのやり取りをしている時や、SNSの書き込みを見ていると、多くの人が見事に絵文字を使いこなす様に驚愕させられる。しかも、若者だけに限らず、である。一体どんなセンスで絵文字を使っているのだろうか。というか、絵文字を打つ(当方、スマホは持っておらずPCのみ使用)のは手間がかかるのになぜ打つのか?
【秀逸】中川氏が作成した絵文字たっぷりのおじさん構文的メール 適切な絵文字を探すのも大変だと思うのだが、彼らは平然と絵文字を使う。かつて絵文字は若者が使うものだったが、現在は35歳以上の男女が使っているような感触がある。むしろ、Z世代は一言でコミュニケーションを終わらせる、という文化があるという。たとえばこんな感じだ。

ついつい使いたくなる絵文字だが(写真はイメージです)A:今日飲み行ける?B:おけ (※OKの意)A:じゃあ、渋谷に18時B:おけC:今日何食う?D:何でもいいC:じゃあ焼肉行こうD:あいよ 絵文字をなぜ使うのか。40代の事務職女性に聞いたところ、こんな返事になった。怒っていないです「絵文字をメッセンジャーやメールで使わないと相手に誤解されることがあるんですよ。絵文字を使わないとそっけない返事だと思われて、私が『怒っているのではないか……』と相手が解釈するのです。つまり、絵文字を使うことは、『怒っていないです』『普通の精神状態です』ということを示すためにもっとも簡単な手段なんです」 なるほど。そこまでメールやメッセンジャーごときで気を遣わなくてはいけないのか(爆笑)と私は思ったのだが、これは、切実な問題らしい。とりわけ会社内では、中高年の上司が若手社員にメッセージを送る際、少しでも“怒っている”と思われると途端にコミュニケーションが取りづらくなってしまうという。この方からは「あなたは他人とのコミュニケーションで好き放題言える立場だから絵文字の重要性を知らないのです!」と怒られてしまった。 いや、私だって「!」や「(お手数をおかけします)」といった配慮をメールやメッセンジャーではしている。しかし、絵文字というものは、これらを超える「配慮」の象徴になっているというのだ。 とはいえ、絵文字に代表される、私信におけるカジュアルな文面というのは、後になって恥ずかしくならないのだろうか。相当恥ずかしい 絵文字や赤ちゃんことば的なものといえば、かつて「週刊新潮」がスッパ抜いた阪神の元監督・和田豊氏が不倫相手に送っていたメールが「恥ずかしい」と評判だったが、あの手の「おじさん構文」は今はさほど恥ずかしくないのだろうか。和田氏のメール内容は以下の通り。「チュッ」は実際はキスマークだったという(※編集部註 〇〇はお相手の女性の名前)。〈愛しい〇〇!おはよー!チュッ(笑)><もう俺と〇〇は既に運命共同体となっておりますので、どうか最後までお付き合い下さい(笑)。><明日の晩は抱っこして、腕枕して寝てあげるからね><○○!俺にもチュッは(笑)?>〉 これは、和田氏にとっては相当恥ずかしい。私自身、絵文字や顔文字、さらにはフレンドリー過ぎるメッセンジャーやメールの文面が恥ずかしいからこれらを使わないと頑なに決めているのである。 この手のメッセージを私なりにオッサン視点で作ってみた。最後に見ていただきたいが、本当に恥ずかし過ぎる(爆)。中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。デイリー新潮編集部
適切な絵文字を探すのも大変だと思うのだが、彼らは平然と絵文字を使う。かつて絵文字は若者が使うものだったが、現在は35歳以上の男女が使っているような感触がある。むしろ、Z世代は一言でコミュニケーションを終わらせる、という文化があるという。たとえばこんな感じだ。
A:今日飲み行ける?B:おけ (※OKの意)A:じゃあ、渋谷に18時B:おけ
C:今日何食う?D:何でもいいC:じゃあ焼肉行こうD:あいよ
絵文字をなぜ使うのか。40代の事務職女性に聞いたところ、こんな返事になった。
「絵文字をメッセンジャーやメールで使わないと相手に誤解されることがあるんですよ。絵文字を使わないとそっけない返事だと思われて、私が『怒っているのではないか……』と相手が解釈するのです。つまり、絵文字を使うことは、『怒っていないです』『普通の精神状態です』ということを示すためにもっとも簡単な手段なんです」
なるほど。そこまでメールやメッセンジャーごときで気を遣わなくてはいけないのか(爆笑)と私は思ったのだが、これは、切実な問題らしい。とりわけ会社内では、中高年の上司が若手社員にメッセージを送る際、少しでも“怒っている”と思われると途端にコミュニケーションが取りづらくなってしまうという。この方からは「あなたは他人とのコミュニケーションで好き放題言える立場だから絵文字の重要性を知らないのです!」と怒られてしまった。
いや、私だって「!」や「(お手数をおかけします)」といった配慮をメールやメッセンジャーではしている。しかし、絵文字というものは、これらを超える「配慮」の象徴になっているというのだ。
とはいえ、絵文字に代表される、私信におけるカジュアルな文面というのは、後になって恥ずかしくならないのだろうか。
絵文字や赤ちゃんことば的なものといえば、かつて「週刊新潮」がスッパ抜いた阪神の元監督・和田豊氏が不倫相手に送っていたメールが「恥ずかしい」と評判だったが、あの手の「おじさん構文」は今はさほど恥ずかしくないのだろうか。和田氏のメール内容は以下の通り。「チュッ」は実際はキスマークだったという(※編集部註 〇〇はお相手の女性の名前)。
〈愛しい〇〇!おはよー!チュッ(笑)><もう俺と〇〇は既に運命共同体となっておりますので、どうか最後までお付き合い下さい(笑)。><明日の晩は抱っこして、腕枕して寝てあげるからね><○○!俺にもチュッは(笑)?>〉
これは、和田氏にとっては相当恥ずかしい。私自身、絵文字や顔文字、さらにはフレンドリー過ぎるメッセンジャーやメールの文面が恥ずかしいからこれらを使わないと頑なに決めているのである。
この手のメッセージを私なりにオッサン視点で作ってみた。最後に見ていただきたいが、本当に恥ずかし過ぎる(爆)。
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。
デイリー新潮編集部

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