伝統の輪島塗に打撃=被災の職人、おわん手に落胆―石川

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最大震度6強の揺れに襲われた石川県輪島市では、伝統工芸品「輪島塗」の工房や販売店が多数被災するなど大きな打撃を受けている。
製造工程は分業制となっているため、影響を受けた職人が一部にとどまっていても、商品は完成させられない。職人の高齢化も進む中で、ある職人は「再建は難しいのでは」と肩を落とす。
市中心部にある木造3階建ての漆器販売店兼住宅では、柱が傾いて窓格子が落下。店の床には売り物のおわんやお盆などが散乱していた。
祖父の代から製造販売を続ける漆塗り職人の男性(60)は、地震のあった1日、早朝から3階の工房で作業をしていた。夕方になり、はけや漆を片付けて、2階の住居に降りたところで地震が発生。高齢の母を連れて車で避難して以降、避難所で3夜を過ごした。
4日昼ごろに店へ戻ると「1階から3階まで足の踏み場もない」状態。その後も頻発する余震で「片付けもできない」と途方に暮れた。
石こうボードや木材の粉にまみれた商品を一つ一つ丁寧に拾い上げると、「売り物にはできないな」とつぶやく。それでも「捨てるのは忍びない。避難所で使いたい」と、個包装の箸をかき集めた。
輪島塗の製造は塗りや絵付けなどさまざまな工程があり、一つの商品を作るのに多くの職人が携わる。影響の小さい工房があっても、他の工程の職人が被災していれば、商品は作れないという。
近年は職人の高齢化が進み、後継者がいない工房もある。男性は「被災をきっかけに廃業を決める職人もいるだろう。店を修理するだけでもお金がかかるし、県や国の支援がない限り、再建は難しいのではないか」と肩を落とした。

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