【現地ルポ・能登半島地震】「深夜に車のドアをガチャガチャと…」被災地を襲う「火事場泥棒」の“卑劣な行為”

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

1月1日に発生し、最大震度7を観測した能登半島地震。生存率が下がるとされる「72時間の壁」を迎えたが、現地ではいまも警察や自衛隊による懸命な捜索・救助活動が続いている。一命をとりとめた住民たちはいまも余震の恐怖に怯えながら避難所暮らしを余儀なくされている。そうした中、彼らの不安を煽る“卑劣な行為”が問題になっている。
【写真】倒壊した住宅ほか現地の様子「施設に突き刺さる車」「大きく陥没した道路」など NEWSポストセブンの取材班は大規模な火災が発生した輪島市から20キロほど離れた穴水町に向かった。穴水町は震度6強を観測し、輪島市と津波の被害を受けた珠洲市に次ぐ5名の安否不明者がいる(1月4日午前8時時点)。金沢市から穴水町の途中にある志賀町で道が崩落しているため、迂回して、平常時の3倍以上の約6時間かけて穴水町に入った。

町の道路は至るところが亀裂や土砂崩れで埋まるなどしていて、民家や工場などが崩れ落ちていた。断水、停電も続いていて、携帯の電波もほとんど入らない。唯一、町役場ではWi-Fiが入るようで、多くの住民が連絡や情報を得るために訪れていた。町役場を訪れていた40代女性が語る「家族や知人への安否確認は取れたんですが、今は情報を得るのに苦労しています。物資が全く届いておらず……食事はなんとか我慢できますが、寒さが本当に厳しくて。毛布が足りていないので避難所では家族で身体を寄せ合っています。非常用電力が枯渇するとも言われていて、どこに行けば暖をとれるか情報を探しています」 町は悲しみで満ちていた。半壊した自宅を見て、道路で泣き続ける女性。「なにかしないととは思うのだけど……」と口にするが、唖然とするしかない男性。一見、被害が無いように見える家も、室内は倒れた家具などでぐちゃぐちゃになっていたり、土台が傾き歪んでいたりするという。このほか地面につきそうなほど垂れ下がっている電線も多数。「穴水で被害を受けていない家なんてないんじゃないか。何年で復興できるかわからない」(60代男性)という過酷な現実があった。玄関前で見知らぬ人がウロウロ 一部の住民は被害が少なかった金沢市に避難しているというが、まだ町にとどまる人も多くいる。前述のとおり道路は通行止めが多く、乗用車を失った住民も少なくない。高齢の家族がいる家庭も多いという。だが、住民が町外避難を躊躇せざるを得ない理由の1つに、ある恐怖が──。50代女性はこう語る。「被災地に火事場泥棒が入ってきているようなのです。私の友人の話なんですが、1月2日の深夜、家に帰れず穴水町で車中泊していたときに、車のドアをガチャガチャと開けようとする音がして起きたと。中に人がいないものだと思っていたのか、飛び起きると顔が見えて、そのまま走って逃げていったそうです。この辺りの人なら顔がわかるのですが見たことのない顔だったらしく、そういう人が入ってきているんですね。 そのほかにも、深夜の時間帯に崩れかけた家の玄関前で見知らぬ人がウロウロしていて、車のライトで照らすと逃げていったという話も聞きました。私たちもお風呂に入りたいし、水が欲しいから金沢市内に行きたいんですが、行ったら家はどうなるのか、荒らされてしまうんじゃないかという恐怖がある。だからここを離れられないんです」 昨年5月、震度6強の地震に見舞われた珠洲市では、約1300棟の住宅が全壊・半壊する被害が生じていたが、被災家屋で火事場泥棒が起きていたと地元メディアが報じている。住民が避難し、留守となった家屋からエアコンやタイヤ、テレビなどが盗まれたという。 2011年の東日本大震災でも火事場泥棒は多数報告されていて、馳浩衆議院議員(当時。以下同)は同年8月に国会で政府に対し、窃盗等の犯罪件数や被害額について質問を行なっている。これに対する政府の答弁書で、地震発生から3か月の間に認知された窃盗件数は1万1129件、被害額は約37億円。検挙件数は2766件と明らかにされている。 一方で、SNSでは「中国人窃盗団がマイクロバスで被災地を回って窃盗をしている」というデマが流れた。この件は誤情報だったことが明らかになっているが、大規模地震が起きるたびに、同様の「外国人が集団で窃盗を行っている」といった差別に繋がりかねないデマが流れている。 被災地の住民たちは、自宅を荒らされる恐怖と不安を煽るデマの双方に悩まされている。
NEWSポストセブンの取材班は大規模な火災が発生した輪島市から20キロほど離れた穴水町に向かった。穴水町は震度6強を観測し、輪島市と津波の被害を受けた珠洲市に次ぐ5名の安否不明者がいる(1月4日午前8時時点)。金沢市から穴水町の途中にある志賀町で道が崩落しているため、迂回して、平常時の3倍以上の約6時間かけて穴水町に入った。
町の道路は至るところが亀裂や土砂崩れで埋まるなどしていて、民家や工場などが崩れ落ちていた。断水、停電も続いていて、携帯の電波もほとんど入らない。唯一、町役場ではWi-Fiが入るようで、多くの住民が連絡や情報を得るために訪れていた。町役場を訪れていた40代女性が語る
「家族や知人への安否確認は取れたんですが、今は情報を得るのに苦労しています。物資が全く届いておらず……食事はなんとか我慢できますが、寒さが本当に厳しくて。毛布が足りていないので避難所では家族で身体を寄せ合っています。非常用電力が枯渇するとも言われていて、どこに行けば暖をとれるか情報を探しています」
町は悲しみで満ちていた。半壊した自宅を見て、道路で泣き続ける女性。「なにかしないととは思うのだけど……」と口にするが、唖然とするしかない男性。一見、被害が無いように見える家も、室内は倒れた家具などでぐちゃぐちゃになっていたり、土台が傾き歪んでいたりするという。このほか地面につきそうなほど垂れ下がっている電線も多数。「穴水で被害を受けていない家なんてないんじゃないか。何年で復興できるかわからない」(60代男性)という過酷な現実があった。
一部の住民は被害が少なかった金沢市に避難しているというが、まだ町にとどまる人も多くいる。前述のとおり道路は通行止めが多く、乗用車を失った住民も少なくない。高齢の家族がいる家庭も多いという。だが、住民が町外避難を躊躇せざるを得ない理由の1つに、ある恐怖が──。50代女性はこう語る。
「被災地に火事場泥棒が入ってきているようなのです。私の友人の話なんですが、1月2日の深夜、家に帰れず穴水町で車中泊していたときに、車のドアをガチャガチャと開けようとする音がして起きたと。中に人がいないものだと思っていたのか、飛び起きると顔が見えて、そのまま走って逃げていったそうです。この辺りの人なら顔がわかるのですが見たことのない顔だったらしく、そういう人が入ってきているんですね。
そのほかにも、深夜の時間帯に崩れかけた家の玄関前で見知らぬ人がウロウロしていて、車のライトで照らすと逃げていったという話も聞きました。私たちもお風呂に入りたいし、水が欲しいから金沢市内に行きたいんですが、行ったら家はどうなるのか、荒らされてしまうんじゃないかという恐怖がある。だからここを離れられないんです」
昨年5月、震度6強の地震に見舞われた珠洲市では、約1300棟の住宅が全壊・半壊する被害が生じていたが、被災家屋で火事場泥棒が起きていたと地元メディアが報じている。住民が避難し、留守となった家屋からエアコンやタイヤ、テレビなどが盗まれたという。
2011年の東日本大震災でも火事場泥棒は多数報告されていて、馳浩衆議院議員(当時。以下同)は同年8月に国会で政府に対し、窃盗等の犯罪件数や被害額について質問を行なっている。これに対する政府の答弁書で、地震発生から3か月の間に認知された窃盗件数は1万1129件、被害額は約37億円。検挙件数は2766件と明らかにされている。
一方で、SNSでは「中国人窃盗団がマイクロバスで被災地を回って窃盗をしている」というデマが流れた。この件は誤情報だったことが明らかになっているが、大規模地震が起きるたびに、同様の「外国人が集団で窃盗を行っている」といった差別に繋がりかねないデマが流れている。
被災地の住民たちは、自宅を荒らされる恐怖と不安を煽るデマの双方に悩まされている。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。