【坂井 正人】「ナスカの地上絵」はどうやって描いたのか?「最新研究」が解き明かす!

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古代アメリカ文明の痕跡としてもっとも知られているものの一つが、巨大な「ナスカの地上絵」だろう。
ペルー南海岸のナスカ・グランデ川流域の真ん中に位置するナスカ台地で地上絵が描かれ始めたのは、紀元前400年頃とされている。
「宇宙人が描いた」という興味本位の説がマスメディアで流されたりもしてきたが、デマにすぎない。描いたのはアンデス先住民だ。
いったいどうやって描いたのか? 地上絵のタイプごとに解き明かしていこう。
【※本記事は、青山和夫編『古代アメリカ文明 マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』(12月14日発売)から抜粋・編集したものです。】
世界遺産ナスカの地上絵が描かれたナスカ台地は、ペルー共和国の南海岸にある(図3-2)。海岸線から約50キロ内陸にあり、標高約500メートルの沙漠台地だ。
図3-2 ナスカ台地の地図
この台地はアンデス山脈と河谷に囲まれている。台地の東側にはアンデス山脈が広がっている。一方、北側にはインヘニオ河谷、南側にはナスカ河谷があり、この二つの河谷は西側で合流している。
ナスカ台地に描かれた地上絵は、三つのタイプに分かれる。直線の地上絵、幾何学的な地上絵、具象的な地上絵だ。
直線の地上絵は、全長10キロ以上の長いものがある一方で、10メートル以下の短いものもある。
幾何学的な地上絵には、方形・三角形・渦巻き形などがある。小さいものは全長5メートル以下だが、巨大なものになると500メートル以上もある。
図3-3 線タイプと面タイプの地上絵(山形大学ナスカ研究所)
具象的な地上絵としては、人間、動物(鳥、猿、狐、蜘蛛、トカゲ、シャチ、鯨、魚)、植物(花、海草、根茎、樹木)、道具(針、糸、留めピン、扇)が知られている。具象的な地上絵は描かれ方によって、線タイプと面タイプという二つのタイプに分けられる(図3-3)。前者は平均で全長約90メートルもあるが、後者は約9メートルしかない。
地上絵が描かれたナスカ台地は、一面に小石が広がっている。小石は長年にわたって太陽に照らされて、日焼けしたように表面が暗褐色に変色している。
一方、これらの小石の下には、白い砂の地層が広がっている。そこで、地表にある暗褐色の小石を取り除くと、その下から白い地面が露出することになる。この黒と白という色のコントラストをうまく利用して、二つのタイプの地上絵は描かれた。
線タイプの地上絵の方は、暗褐色の石を線状に取り除いてできた白い線を用いて描かれている。
一方、面タイプの地上絵は、浮き彫りのように凹凸がある。地表の暗褐色の石を面状に取り除いて露出した白い面を作るだけでなく、取り除かれた石を再利用して、それを面状に積み上げてできた黒い面と組み合わせることによっても、地上絵は描かれた。
線タイプの地上絵の場合、それほど多くの小石を動かさなくても、巨大な地上絵を描くことができる。一方、面タイプの地上絵を制作するためには、比較的多くの小石を移動させる必要があるので、この制作技法は巨大な地上絵を描くのには適していない。両者は制作方法だけでなく、分布においても差異がみられる。巨大な線タイプの地上絵は平地にのみ描かれているが、小型の面タイプの地上絵は山の斜面や傾斜面にも描かれている。
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