「契約キャンセルを」「事故が心配」…ダイハツ不正に利用者も怒り・困惑、従業員に不安も

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ダイハツ工業(本社・大阪府池田市)の自動車の認証試験を巡る不正は、21日、国土交通省が立ち入り検査をする事態となった。
全車種が出荷停止という異例の状況に、利用者の怒りと戸惑いは大きく、従業員らの間にも不安が広がっている。
出荷停止の発表から一夜明けた21日、本社近くにある販売店「大阪ダイハツ販売池田店」には、「自分の車は問題ないか」「契約をキャンセルしたい」などと問い合わせが朝から相次いだ。電話対応に追われた男性店長(43)は、「お客様に安心して乗ってもらえるよう、とにかく説明を尽くしたい」と険しい表情だった。
ダイハツは、販売した車両の安全性に大きな問題はないとしているが、不正は30年以上も前から続いており、利用者の視線は厳しい。
約10年間ダイハツ車を愛用し、問題があった車種の一つ「タント」に乗っている大阪市北区の女性(78)は「まだ小さい孫を乗せることもあるのに、不正を社員が黙っていたのかと思うと許せない」と憤った。
カーリース会社「まらねろレンタリース」(大阪府箕面市)は、貸し出す車の7割以上がダイハツ車だ。年間150台を購入しており、男性社長(44)は「供給再開の時期が分からず、事業にも影響が出かねない。他のメーカーの割合を増やすことを検討していきたい」と表情を曇らせた。
大阪府池田市の高齢者福祉施設では「タント」など2台をリースして利用者の送迎用に使っている。担当者は「狭い住宅地でも小回りが利いて使いやすく、重宝していた。当面は使用を継続せざるを得ないが、車両の不具合で事故が起きないか心配だ」と明かした。
先行きが見えない状況に、工場で働く従業員らも動揺を隠せない様子だった。京都府大山崎町の京都工場は来週から稼働停止が決まり、男性従業員(24)は「ニュースで知り、びっくりしている。会社は今後どうなっていくのか」と不安げに話していた。
■2車種で安全基準違反か…エアバッグ作動でドアロック
ダイハツ工業が国内向けに生産している27車種のうち、2車種については、エアバッグの作動後、自動でドアにロックがかかることが社内調査で判明し、安全基準を満たしていない可能性がある。事故などの際に乗員の救出に支障が生じる恐れがあるという。同社はリコール(回収・無償修理)の対象となるかどうか調査を進めている。
2車種は、軽自動車の「キャスト」と、同社が生産してトヨタ自動車が販売している同型車の「ピクシスジョイ」。キャストだけでも2015年から今年6月まで累計約25万台が販売されている。
ダイハツが一連の不正について独自に検証する過程で、実車を使って衝突実験を行ったところ、エアバッグが開いた影響でドアが変形すると、全てのドアが施錠された。エアバッグの安全性には問題はなかったという。
ダイハツの奥平総一郎社長は20日の記者会見で、新たに不正が見つかった174件については安全性を再確認し、「乗り続けて問題がある事象は発生しなかった」と説明。一方、この2車種については「法規基準に適合しない可能性が判明し、詳細な原因究明を急いでいる」と言及していた。

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