支持率が最低水準の岸田総理に元側近が苦言「信念がないから“語る力”がない」「奥の座敷には入れてくれない」

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「岸田さんは“聞く力”よりも“語る力”が問題だと感じています」
と話すのは、元衆議院議員の三ツ矢憲生氏(72)。2003年に初当選後、2期目から現在、岸田総理が会長を務める宏池会に在籍した。一昨年に政界を引退し、現在は国会近くに事務所を構え、宏池会所属議員の相談相手にもなっている。
【写真】元側近かく語りき!なぜ岸田総理は支持されないのか 宏池会のご意見番とも言える三ツ矢氏にいまの岸田総理と政権についてどう思っているかを問うと、口にしたのは厳しい言葉の数々だった。

「岸田さんは昔から、自分の言葉で話しているという印象がないんです。性格的なものが大きいのでしょうけれど、他の政治家が失言しているところを見て、自分でブレーキをかけているのかもしれません。自分で考え、自分の言葉で話せば、もっと国民に届くのではないでしょうか」浮上のきっかけがつかめない岸田総理 11月に入り、各社が実施した世論調査によれば、毎日新聞の内閣支持率21%、不支持率70%を筆頭に、NNN・読売新聞が支持率24%、不支持率62%、朝日新聞が支持率25%、不支持率65%と軒並み過去最低を記録した。 菅義偉前 政権の最低支持率は28%(朝日新聞)だった。これよりも、支持率が下がってしまった格好だ。政権としては末期的とも言える状況だろう。「支持率が低い上に、前回調査からの落ち方が激しいですよね。政務三役が立て続けに辞任していることも影響していると思います。特に財務副大臣の税金滞納問題は効いている。やはり早くに辞めさせるべきでした。これは推測ですが、岸田さんが三役を早く辞めさせる決断ができない背景に派閥の推薦があったのではないでしょうか。自分で選んだ人事ではないので、派の様子を窺いながら、政権運営をせざるを得ない。それがいまも続いているということでしょう」“自分は現実主義者なんです” では、支持率急落を招いている岸田総理の「語る力」のどこが問題なのか。「そもそも、岸田さんの中に“語るべきもの”があるのか、疑問です。一昨年の自民党総裁選の直前、現在官房副長官を務める村井英樹が私のところに来たんです。そこで彼は“新しい資本主義について三ツ矢さんに相談してこい、と岸田さんに言われた”というんです。では、“新しい資本主義って何をやりたいのか”とこちらから聞くと何もなかったんですね。キャッチフレーズはいいんだけど、自分がこの路線で行くんだ、という信念がないように感じます。信念があれば、国民に語りかける言葉にも力が出てくるはず。会合などの席でも、踏み込んだ話はしてくれません。岸田さんと話していると玄関先から応接間までは入れてくれるけど、奥の座敷には入れてくれない、そんな感じです」 ある時、三ツ矢氏は岸田総理からこんな言葉を聞いたという。「岸田さんが総理になった後、“どんなことをしたいのか”という趣旨のことを聞いたことがありました。その時、“自分は現実主義者なんです”と言って、目の前の問題を一つ一つ的確に対処していきたいと話していました。しかし、政治家の仕事というのは、問題の対処について“方向性”を示して解決していくことです。ただ問題に対処するだけなら、官僚でもできるし、そちらの方が政治家よりもうまく処理できるでしょう。だから政策と政策の間に整合性がとれなくなってしまう。その“方向性”を示せなかった一例として、少子化対策が挙げられます。仰々しい言葉がついた少子化対策は突き詰めれば、児童手当を増やすという政策です。しかし、児童手当を増やすだけで子どもが増えるのでしょうか。非正規雇用で結婚できない若者など様々な原因が背景にあるはずなのに場当たり的で、方向性を示して対処できているように思えません」“明日枯れる花にも水をやる心” 三ツ矢氏は初当選後、1期目の時は無派閥で活動し、2期目に宏池会に入会した。そのきっかけになったのは、「かつて宏池会の会長だった大平正芳さんの言葉でした。大平さんはある時、政治とは何かと問われ、こんな言葉を残しています。“明日枯れる花にも水をやる心”。光の当たらないところにも光を当てる、弱い立場の人にも手を差し伸べるのが、政治の役割だと。その言葉に共感し、入会したんです。当時、宏池会は旧古賀派と旧谷垣派に分かれていましたが、その後、有隣会(谷垣グループ)を立ち上げることになる谷垣禎一さん(自民党元総裁)は非常に懐が深く、この世界で数少ない尊敬できる政治家でした。物事を決めつけるのではなく、多面的に見える方で、教養の深さがそれを裏付けていた。非常に宏池会らしい政治家だと感じ、私は有隣会のチャーターメンバーになったんです。いまの岸田さんは谷垣さんに宏池会らしさを学んだ方がいいですよ」 というのも、「前回総裁選の半年くらい前でしょうか。いきなり岸田さんから携帯に電話がありました。そこで岸田さんは“自分は発信力が弱いとある人に言われた”と語り、ついてはこういうことを発信したいと、2つの政策を挙げました。一つは敵基地攻撃能力の整備。もう一つは中国の海警が武器を使用できることになったことを受け、海上保安庁も同様に外国船に武器を使用できるようにする海上保安庁法の改正でした。私は岸田さんに“およそ宏池会らしくない政策ですね。安倍(晋三)さんから言われたのですか”と聞くと、“いや直接じゃないんですけど……”と話していました」所属議員の前で説明してください 結局、岸田総理はこの電話の後、2つの政策について表現を変えて、ツイッターなどで訴えていくことになる。「その後、私は岸田さんに“宏池会の会長なのだから、あの政策は派の方針になりますよ。正しい、というなら所属議員の前で説明してください”とお願いしたんです。しかし、岸田さんは結局説明することはありませんでした。当時、私は派閥の事務総長代行。説明がないなら代行を辞めさせてくれ、ともお話ししました」 代行辞任問題は岸田総理に慰留され、そのままになったが、いまも政策への疑問は残る。「防衛費をGDP比2%に増額していくことも、岸田さんが本当に必要だと感じている政策だったのでしょうか。岸田さんは“宏池会らしさ”という言葉を出すと嫌がります。しかし、宏池会らしさというのは決してリベラルであれ、ということではなく、先に大平さんの言葉で触れたように弱い立場の人に手を差し伸べていくことです。国民生活を考えれば、所得税ではなく、食料品にかかっている軽減税率をさらに下げる方がよほどいい。やはり、いま国民が最も関心を持っているのは経済。このままでは日本は本当に沈んでしまう。金をかけずにできる政策はいくらでもあるはずです」 支持率低迷からの打開策が全く見えない岸田政権。“身内”からの苦言を総理は聞くのだろうか。デイリー新潮編集部
宏池会のご意見番とも言える三ツ矢氏にいまの岸田総理と政権についてどう思っているかを問うと、口にしたのは厳しい言葉の数々だった。
「岸田さんは昔から、自分の言葉で話しているという印象がないんです。性格的なものが大きいのでしょうけれど、他の政治家が失言しているところを見て、自分でブレーキをかけているのかもしれません。自分で考え、自分の言葉で話せば、もっと国民に届くのではないでしょうか」
11月に入り、各社が実施した世論調査によれば、毎日新聞の内閣支持率21%、不支持率70%を筆頭に、NNN・読売新聞が支持率24%、不支持率62%、朝日新聞が支持率25%、不支持率65%と軒並み過去最低を記録した。
菅義偉前 政権の最低支持率は28%(朝日新聞)だった。これよりも、支持率が下がってしまった格好だ。政権としては末期的とも言える状況だろう。
「支持率が低い上に、前回調査からの落ち方が激しいですよね。政務三役が立て続けに辞任していることも影響していると思います。特に財務副大臣の税金滞納問題は効いている。やはり早くに辞めさせるべきでした。これは推測ですが、岸田さんが三役を早く辞めさせる決断ができない背景に派閥の推薦があったのではないでしょうか。自分で選んだ人事ではないので、派の様子を窺いながら、政権運営をせざるを得ない。それがいまも続いているということでしょう」
では、支持率急落を招いている岸田総理の「語る力」のどこが問題なのか。
「そもそも、岸田さんの中に“語るべきもの”があるのか、疑問です。一昨年の自民党総裁選の直前、現在官房副長官を務める村井英樹が私のところに来たんです。そこで彼は“新しい資本主義について三ツ矢さんに相談してこい、と岸田さんに言われた”というんです。では、“新しい資本主義って何をやりたいのか”とこちらから聞くと何もなかったんですね。キャッチフレーズはいいんだけど、自分がこの路線で行くんだ、という信念がないように感じます。信念があれば、国民に語りかける言葉にも力が出てくるはず。会合などの席でも、踏み込んだ話はしてくれません。岸田さんと話していると玄関先から応接間までは入れてくれるけど、奥の座敷には入れてくれない、そんな感じです」
ある時、三ツ矢氏は岸田総理からこんな言葉を聞いたという。
「岸田さんが総理になった後、“どんなことをしたいのか”という趣旨のことを聞いたことがありました。その時、“自分は現実主義者なんです”と言って、目の前の問題を一つ一つ的確に対処していきたいと話していました。しかし、政治家の仕事というのは、問題の対処について“方向性”を示して解決していくことです。ただ問題に対処するだけなら、官僚でもできるし、そちらの方が政治家よりもうまく処理できるでしょう。だから政策と政策の間に整合性がとれなくなってしまう。その“方向性”を示せなかった一例として、少子化対策が挙げられます。仰々しい言葉がついた少子化対策は突き詰めれば、児童手当を増やすという政策です。しかし、児童手当を増やすだけで子どもが増えるのでしょうか。非正規雇用で結婚できない若者など様々な原因が背景にあるはずなのに場当たり的で、方向性を示して対処できているように思えません」
三ツ矢氏は初当選後、1期目の時は無派閥で活動し、2期目に宏池会に入会した。そのきっかけになったのは、
「かつて宏池会の会長だった大平正芳さんの言葉でした。大平さんはある時、政治とは何かと問われ、こんな言葉を残しています。“明日枯れる花にも水をやる心”。光の当たらないところにも光を当てる、弱い立場の人にも手を差し伸べるのが、政治の役割だと。その言葉に共感し、入会したんです。当時、宏池会は旧古賀派と旧谷垣派に分かれていましたが、その後、有隣会(谷垣グループ)を立ち上げることになる谷垣禎一さん(自民党元総裁)は非常に懐が深く、この世界で数少ない尊敬できる政治家でした。物事を決めつけるのではなく、多面的に見える方で、教養の深さがそれを裏付けていた。非常に宏池会らしい政治家だと感じ、私は有隣会のチャーターメンバーになったんです。いまの岸田さんは谷垣さんに宏池会らしさを学んだ方がいいですよ」
というのも、
「前回総裁選の半年くらい前でしょうか。いきなり岸田さんから携帯に電話がありました。そこで岸田さんは“自分は発信力が弱いとある人に言われた”と語り、ついてはこういうことを発信したいと、2つの政策を挙げました。一つは敵基地攻撃能力の整備。もう一つは中国の海警が武器を使用できることになったことを受け、海上保安庁も同様に外国船に武器を使用できるようにする海上保安庁法の改正でした。私は岸田さんに“およそ宏池会らしくない政策ですね。安倍(晋三)さんから言われたのですか”と聞くと、“いや直接じゃないんですけど……”と話していました」
結局、岸田総理はこの電話の後、2つの政策について表現を変えて、ツイッターなどで訴えていくことになる。
「その後、私は岸田さんに“宏池会の会長なのだから、あの政策は派の方針になりますよ。正しい、というなら所属議員の前で説明してください”とお願いしたんです。しかし、岸田さんは結局説明することはありませんでした。当時、私は派閥の事務総長代行。説明がないなら代行を辞めさせてくれ、ともお話ししました」
代行辞任問題は岸田総理に慰留され、そのままになったが、いまも政策への疑問は残る。
「防衛費をGDP比2%に増額していくことも、岸田さんが本当に必要だと感じている政策だったのでしょうか。岸田さんは“宏池会らしさ”という言葉を出すと嫌がります。しかし、宏池会らしさというのは決してリベラルであれ、ということではなく、先に大平さんの言葉で触れたように弱い立場の人に手を差し伸べていくことです。国民生活を考えれば、所得税ではなく、食料品にかかっている軽減税率をさらに下げる方がよほどいい。やはり、いま国民が最も関心を持っているのは経済。このままでは日本は本当に沈んでしまう。金をかけずにできる政策はいくらでもあるはずです」
支持率低迷からの打開策が全く見えない岸田政権。“身内”からの苦言を総理は聞くのだろうか。
デイリー新潮編集部

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