他人の性自認を無断公表 東京・杉並区長「性の多様性尊重条例」自ら破る

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東京都杉並区の岸本聡子区長が、性別非公表としている区議の性自認をSNSで本人の了承を得ずに公表していたことが分かった。
岸本氏は8日の記者会見で「適切でなかった。本人にも謝罪した」と述べた。岸本氏は性の多様性を尊重する区条例を制定し、本人の意に反して性自認を公表しないよう区民や事業者に求めている。自らが条例の趣旨にそぐわない行動を取ったといえ、区議会では批判の声も上がる。
この問題は今年4月、杉並区議選の投開票の際に起きた。岸本氏は「岸本聡子オフィス広報」というX(旧ツイッター)アカウントに「48議席のうち女性は25人」「上位4名はすべて新人女性」と書き込んだ。ところが、岸本氏が女性に含めた区議の1人は、性別を明らかにしていなかった。
岸本氏はその後「1点、修正させていただきます」と断りを入れ、「当選した方の性別ですが『男性23人、女性24人、性別非公表1人』とのことでした」と改めて投稿した。一連の書き込みは8日の段階でもXには残されたままで、誰でも閲覧できる状態になっている。
岸本氏は区議選の直前、区民や事業者に性の多様性を尊重するよう求める区条例を制定した。区は「条例に関するQ&A」と題した文書を作成し、区民らに「性的指向・性自認について本人の意に反して明らかにしないことが求められます」と呼びかけている。
8日の会見で岸本氏は、条例と今回の行為との整合性について問われると、「本人の性に関してセンシティブなことがあると気遣い、尊重していこうという趣旨の条例なので、私自身もこれを強く肝に銘じて取り組んでいきたい」と釈明した。
ただ、謝罪の対象には性的少数者などは含めず、この区議のみにとどめた。区議会でこの問題を追及した田中裕太郎区議は「性自認の暴露におびえる性的少数者は少なくない。条例を作った当人が引き起こした問題である以上、社会全体への責任としてきちんと謝罪すべきではないか」と指摘した。
岸本氏は、今回の問題について「本人からはアウティングに当たらないという理解を頂いた」とも発言している。アウティングとは、本人の同意を得ずに性的指向や性自認を暴露する行為を指す。
この性別を公開された区議は産経新聞の取材には応じないとしたうえで、「私自身、今回の岸本区長の行為がいわゆるアウティングにあたるとは思っていない」と述べている。(大森貴弘)

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