サントリー新浪社長に総額10億円の「高級コンドミニアム」私物化疑惑 保養所なのにHP、有価証券報告書でも非公開

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サントリーHD社長、経済同友会トップの新浪剛史氏(64)がローソン社長時代に会社名義で購入した、ハワイのコンドミニアム。氏はそれを「保養所」と説明したが、ほとんどのローソン社員がその存在を把握しておらず、HPや有価証券報告書にも記載されていないということが明らかに。(前中後編の中編)
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【写真を見る】約2億円! ワイキキビーチにほど近い高級コンドミニアム 新浪社長時代にローソンが購入している 新浪氏の「ハワイ・コンドミニアム私物化疑惑」とは何なのか。まずは事のあらましを整理しておきたい。

三菱商事を経て、2002年から14年までローソン社長、14年からはサントリーの社長を務めている新浪氏。彼がローソン社長時代、ハワイにペントハウスを含む複数のコンドミニアムをローソン名義で購入していたことは、以前、本誌(「週刊新潮」10月26日号)でお伝えした通りである。新浪剛史氏 具体的には、07年から10年にかけて、ワイキキビーチの真正面にある高級コンドミニアム「アストン ワイキキ ビーチ タワー」の3304号室、3804号室(定期借地権)、そしてペントハウスである4002号室を購入。3304号室を売却した3カ月後には、ワイキキの西側、アラワイ運河沿いにある高級コンドミニアム「ザ・ウォーターマーク」のペントハウス、3804号室を購入している。新浪剛史氏の社長時代にローソン名義で購入したコンドミニアム新浪氏、一部の関係者だけが使える物件だった?「新浪さんが社長をしていた時期にローソンがハワイのコンドミニアムを複数購入したという事実を知っているのは社内でも一部のみ。物件の場所や名前まで把握している人は新浪さんとその側近くらいです」(ローソン元幹部) これらの「ハワイ豪華施設」は何のために購入したものなのか。新浪氏や一部の関係者だけが使える物件だったのか。サントリーを通じて新浪氏に取材を申し込んだところ、以下の回答が寄せられたのだった。「(ペントハウスなどは)ローソン社様の社員や役員とそのご家族が利用する保養施設として購入したと聞いております。新浪自身は過去に業務で使用したことはありますが、配偶者を伴ったプライベートな利用はございません。私的に使用する目的で購入したというのは事実ではございません」購入された5戸の物件 本誌はローソンの現役社員や元社員、元幹部、元役員などに取材してきたが、「ハワイ豪華施設」を保養施設として利用したことがある、あるいは周りの社員が利用したと聞いたことがある、と語った人は皆無。謎を解明するためにその後も取材を続けたところ、「ハワイ豪華施設」が他にもあることが分かった。新浪氏はローソンを去る1年前、13年にもローソン名義で超高級コンドミニアム「ザ・リッツ・カールトン・レジデンス・ワイキキビーチ」の3302号室を購入していたのだ。広さは149平米。「『ザ・リッツ・カールトン・レジデンス・ワイキキビーチ』は、『レジデンス』との表記が示す通り、日本で言うところの超高級分譲マンション(コンドミニアム)であり、各部屋に所有者がいます」 ハワイの不動産業関係者はそう説明する。「部屋の一部をリッツカールトンが借り受けて運営母体となり、ホテルサービスを提供しています。客室にはキッチンや洗濯機など長期滞在に適した設備が整っていて、スーパーマーケットで食材を買い込み、自炊して過ごすことも可能です」 レジデンス所有者の7割超、ホテル利用者の6割が日本人なのも大きな特徴で、「ホテルに到着するとエントランスから日本語で出迎えてくれるので、英語に不慣れな日本人でも安心して利用できます。8階の開放感あふれるフロントでチェックインを行います。敷地内にはオールデイダイニングや、すし職人・中澤圭二氏が東京・四谷の本店を離れて手がける江戸前ずしの名店『すし匠』といった飲食店の他、インフィニティ・プールなどの施設が整っています」(同) 新浪氏が社長を務めていた時期に購入したのはこの「リッツカールトン」1戸の他、「ワイキキビーチタワー」3戸、「ウォーターマーク」1戸の計5戸。存在を隠していた? すでに複数の「豪華施設」が存在するのに、さらに豪奢な「リッツカールトン」を買い足した新浪氏。なんと社員思いの社長だろうか、と言いたいところだが、なぜかこれらの「保養施設」は会社HPなどで一切公表されていないし、社員に向けて通達された形跡もない。対外的にも、福利厚生が充実していることをアピールした方が会社のイメージアップにつながるし、優秀な人材を集めるためにもいいと思うのだが、まるでそれらの存在を「隠す」かのように全く情報を公開していないのは不可解と言う他ない。 なお、「ワイキキビーチタワー」4002号室と「リッツカールトン」3302号室は19年、ローソンの子会社である「ローソンUSAハワイ」に売却され、現在も同社が保有している。しかし、現在に至るまで、これらの「保養施設」の存在が公表されたことはない。「ローソンの社員が誰でも使えた保養所のような施設としては、親会社がダイエーだった時から富士山麓に持っていたゲストハウスが挙げられます。もちろん、そのゲストハウスの存在は社員なら皆知っていました。ただ、新浪さんが社長になってから“稼働率が悪いからやめちまえ”と言ってなくしてしまいましたが……」(ローソン元役員)有価証券報告書を調べてみると… このゲストハウスについては、有価証券報告書にも記載されていた。ならば「ハワイ豪華施設」もと思って探してみたものの、どこにも記載がない。「企業会計には継続性の原則、つまり、会計処理の方針を恣意的に変更してはならないという原則があります。ダイエーが親会社だった時代に使用していた富士山麓のゲストハウスは記載しているのに、ハワイのコンドミニアムは記載しない、というのは、この会計の継続性の原則に反しているといえます」(税理士の浦野広明氏) ローソンは13年に約344万ドル(当時のレートで約3億円)で「リッツカールトン」の部屋を購入している。そこで、ローソンの13年度の有価証券報告書を調べてみると、「『設備の新設』の欄に、ハワイの物件の購入額よりも小さい額、千万円単位のものも記載している。だから、金額の重要性の観点から見ても、ハワイの物件について記載すべきだといえます。さらに、項目の重要性の観点からしても、事業内容と全く関係のない海外のコンドミニアムを総計10億円近くも購入しているのは異例ですから、載せる必要があるでしょう」(同) 後編では、「物件の一つを訪れた際、新浪氏が子どものために改装を指示していた」というローソン元役員の証言について詳しく報じる。「週刊新潮」2023年11月9日号 掲載
新浪氏の「ハワイ・コンドミニアム私物化疑惑」とは何なのか。まずは事のあらましを整理しておきたい。
三菱商事を経て、2002年から14年までローソン社長、14年からはサントリーの社長を務めている新浪氏。彼がローソン社長時代、ハワイにペントハウスを含む複数のコンドミニアムをローソン名義で購入していたことは、以前、本誌(「週刊新潮」10月26日号)でお伝えした通りである。
具体的には、07年から10年にかけて、ワイキキビーチの真正面にある高級コンドミニアム「アストン ワイキキ ビーチ タワー」の3304号室、3804号室(定期借地権)、そしてペントハウスである4002号室を購入。3304号室を売却した3カ月後には、ワイキキの西側、アラワイ運河沿いにある高級コンドミニアム「ザ・ウォーターマーク」のペントハウス、3804号室を購入している。
「新浪さんが社長をしていた時期にローソンがハワイのコンドミニアムを複数購入したという事実を知っているのは社内でも一部のみ。物件の場所や名前まで把握している人は新浪さんとその側近くらいです」(ローソン元幹部)
これらの「ハワイ豪華施設」は何のために購入したものなのか。新浪氏や一部の関係者だけが使える物件だったのか。サントリーを通じて新浪氏に取材を申し込んだところ、以下の回答が寄せられたのだった。
「(ペントハウスなどは)ローソン社様の社員や役員とそのご家族が利用する保養施設として購入したと聞いております。新浪自身は過去に業務で使用したことはありますが、配偶者を伴ったプライベートな利用はございません。私的に使用する目的で購入したというのは事実ではございません」
本誌はローソンの現役社員や元社員、元幹部、元役員などに取材してきたが、「ハワイ豪華施設」を保養施設として利用したことがある、あるいは周りの社員が利用したと聞いたことがある、と語った人は皆無。謎を解明するためにその後も取材を続けたところ、「ハワイ豪華施設」が他にもあることが分かった。新浪氏はローソンを去る1年前、13年にもローソン名義で超高級コンドミニアム「ザ・リッツ・カールトン・レジデンス・ワイキキビーチ」の3302号室を購入していたのだ。広さは149平米。
「『ザ・リッツ・カールトン・レジデンス・ワイキキビーチ』は、『レジデンス』との表記が示す通り、日本で言うところの超高級分譲マンション(コンドミニアム)であり、各部屋に所有者がいます」
ハワイの不動産業関係者はそう説明する。
「部屋の一部をリッツカールトンが借り受けて運営母体となり、ホテルサービスを提供しています。客室にはキッチンや洗濯機など長期滞在に適した設備が整っていて、スーパーマーケットで食材を買い込み、自炊して過ごすことも可能です」
レジデンス所有者の7割超、ホテル利用者の6割が日本人なのも大きな特徴で、
「ホテルに到着するとエントランスから日本語で出迎えてくれるので、英語に不慣れな日本人でも安心して利用できます。8階の開放感あふれるフロントでチェックインを行います。敷地内にはオールデイダイニングや、すし職人・中澤圭二氏が東京・四谷の本店を離れて手がける江戸前ずしの名店『すし匠』といった飲食店の他、インフィニティ・プールなどの施設が整っています」(同)
新浪氏が社長を務めていた時期に購入したのはこの「リッツカールトン」1戸の他、「ワイキキビーチタワー」3戸、「ウォーターマーク」1戸の計5戸。
すでに複数の「豪華施設」が存在するのに、さらに豪奢な「リッツカールトン」を買い足した新浪氏。なんと社員思いの社長だろうか、と言いたいところだが、なぜかこれらの「保養施設」は会社HPなどで一切公表されていないし、社員に向けて通達された形跡もない。対外的にも、福利厚生が充実していることをアピールした方が会社のイメージアップにつながるし、優秀な人材を集めるためにもいいと思うのだが、まるでそれらの存在を「隠す」かのように全く情報を公開していないのは不可解と言う他ない。
なお、「ワイキキビーチタワー」4002号室と「リッツカールトン」3302号室は19年、ローソンの子会社である「ローソンUSAハワイ」に売却され、現在も同社が保有している。しかし、現在に至るまで、これらの「保養施設」の存在が公表されたことはない。
「ローソンの社員が誰でも使えた保養所のような施設としては、親会社がダイエーだった時から富士山麓に持っていたゲストハウスが挙げられます。もちろん、そのゲストハウスの存在は社員なら皆知っていました。ただ、新浪さんが社長になってから“稼働率が悪いからやめちまえ”と言ってなくしてしまいましたが……」(ローソン元役員)
このゲストハウスについては、有価証券報告書にも記載されていた。ならば「ハワイ豪華施設」もと思って探してみたものの、どこにも記載がない。
「企業会計には継続性の原則、つまり、会計処理の方針を恣意的に変更してはならないという原則があります。ダイエーが親会社だった時代に使用していた富士山麓のゲストハウスは記載しているのに、ハワイのコンドミニアムは記載しない、というのは、この会計の継続性の原則に反しているといえます」(税理士の浦野広明氏)
ローソンは13年に約344万ドル(当時のレートで約3億円)で「リッツカールトン」の部屋を購入している。そこで、ローソンの13年度の有価証券報告書を調べてみると、
「『設備の新設』の欄に、ハワイの物件の購入額よりも小さい額、千万円単位のものも記載している。だから、金額の重要性の観点から見ても、ハワイの物件について記載すべきだといえます。さらに、項目の重要性の観点からしても、事業内容と全く関係のない海外のコンドミニアムを総計10億円近くも購入しているのは異例ですから、載せる必要があるでしょう」(同)
後編では、「物件の一つを訪れた際、新浪氏が子どものために改装を指示していた」というローソン元役員の証言について詳しく報じる。
「週刊新潮」2023年11月9日号 掲載

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