【古川 諭香】お前との遺伝子を残したくない…壮絶イジメを耐えたZ世代女性が婚約者に言われた「最悪のひと言」

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近年は、様々な理由から子どもを持たない人生を歩む人が増えている。
例えば、BIGLOBEが全国の18歳から25歳までの男女500人を対象に行った「子育てに関するZ世代の意識調査」(2023年)では、約2人に1人が「子どもは欲しくない」と回答した。
この調査が今年2月に出た時は、各ネットメディアでも大きく取り上げられた。改めて、若い世代の実に半数が、子供を持つことに関してネガティブな印象を抱えているという現実を突きつけられる。
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その理由としては、「育てる自信がないから」が52.3%と最も多い。次いで「子どもが好きではない」(45.9%)、「自由がなくなる」(36.0%)、「これからの日本の将来に期待ができず、子どもがかわいそうだから」(25.0%)などといった回答が寄せられた。
だが、子供を持ちたくない理由を個々人に聞いてみると、より複雑な事情があることがわかる。<「鼻がブタに似てるから」とイジメられ…「子供を産まない」と固く誓ったZ世代女性が過ごした「地獄の日々」>で、筆者はZ世代女性の声を聞いてみた。
Z世代の広瀬理沙さん(仮名・25)は小学生の頃からクラスメイトに外見をからかわれ、自分の見た目にコンプレックスを感じるようになった。いじめを受けながらも、なんとか高校を卒業し、社会人となったが、心を傷つけられた経験から人と関わることが怖く、周囲に壁を作りながら仕事に励む日々を送っていた。
だが、思いもしない出会いが訪れ、理沙さんの人生は大きく変わっていくこととなる。
工場で働き始めて3年ほどした頃、理沙さんは後輩の教育を任せられた。担当することになったのは、2歳下の翔さん(仮名)。正直、人と関わることは嫌だったが、これも業務の一環と自身に言い聞かせ、仕事の仕やり方を丁寧に教えた。
翔さんは、理沙さんとは真逆で社交的な性格。対照的な性格であることから、最初は接する時に抵抗を抱いたが、分からないことがあると、すぐに尋ねてきて、「あ~そういうことか。本当、頼りになります!ありがとうございます」と笑顔で言う翔さんと関わるうちに、彼の人柄に惹かれていった。
「一度、彼は『なんで、いつも目見てくれないんですか?』と聞いてきたことがありました。学生時代に嫌なことがあって…と伝えると、『その嫌なことしてきたヤツらが、クソなんですよ!理沙さんは何も悪くないですって』と言ってくれた。事情なんて何も打ち明けてないけど、優しいなってちょっと嬉しかったです」
やがて、翔さんは理沙さんを食事に誘うように。初めての経験に戸惑ったものの、理沙さんは嬉しかった。職場の先輩、後輩として徐々に距離を縮めていった2人はやがて、交際。私でも好きになってくれる人がいるんだ…と理沙さんは驚いたという。
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「私とキスをしたり、手を繋いだりしてくれる人がいるという事実が信じられませんでした。これは夢なんじゃないか、私がこんなに幸せであっていいはずがないとも思いました」
2人の交際は順調そのものだった。交際から2年後、理沙さんはプロポーズを受け、婚約。自分を心から愛してくれる人と過ごす中で、外見へのコンプレックスは和らぎ、生きづらさを感じることも減っていった。
だが、婚約から2ヵ月後、予期せぬ出来事が起きる。翔さんは、よく遊ぶ友人たちに婚約を報告した際、「婚約者に会ってみたい」と言われたことから、仲間内でのBBQに理沙さんを招待。迷ったものの、理沙さんは参加をすることにした。
「BBQには彼の友人の彼女も来ると言っていました。今、振り返れば、そんな陽キャの集まりに私みたいな人間が行ったことが間違いだったんでしょうね」
当日、理沙さんは現地に着いた瞬間、場違いだったと思わされた。友人の彼女たちはみなスタイルがよく、綺麗な子ばかり。自分だけ明らかに浮いているように感じ、恥ずかしくなった。
「彼は友人から、『翔ってこんなタイプが好きなんだ!意外!』と言われていました。彼は『いいじゃん、どうでも』と言っていましたが、私を連れてきたことを後悔しているように見えました」
それから数日後、理沙さんは突然、別れを切り出された。「俺といても幸せになれないと思うから別れよう」と言われた時、ああ、私の外見が本当の理由なんだろうなと悟ったそう。そこで、「最後のお願い。どんな理由でも傷つかないから、別れたいと思った本当の理由を教えて」と伝えた。
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すると、彼は「ごめん。やっぱり俺、理沙の顔が好きになれない。すごくいい子だし、好きになろうって努力したし、中身がすごく好きで付き合いたいと思ったけど、頑張っている時点でなんか違うのかもなって、友達に会わせた時に思った」と言ったそう。2人の関係は婚約破棄という、悲しい結末に終わった。
「別れ話の時、『だったら、私は整形してもいいよ』と言いました。本当に彼のことが好きで一緒にいたかったから。でも『それで理沙は変われて、子どもが生まれた時に俺は苦しんじゃう気がする。今の理沙の顔の遺伝子が入った子を、俺は愛せる自信がない』と言われてしまいました」
この経験から理沙さんは誰かと恋愛関係になることが怖くなり、自分は子どもを持たない人生を歩んだほうがいいのではないかと思うようになったそうだ。
「彼の言う通り、私の遺伝子が入っていたら子どもきっとブスなはず。自分がいじめで苦しんだからこそ、そんな思いをする子を生み出さないようにするのが、自分にできる最善策なのではないかと思うようになりました」
近年はルッキズムの問題が取り上げられることが増えてきたが、まだまだ外見至上主義な考えを持っている人は多い。
プラン・インターナショナルとともに活動するプラン・ユースグループが、2022年11月~12月にユースを対象としたルッキズム(外見至上主義)に関する調査によれば8割以上の回答者が容姿・外見に対する悩みを持っており、女性は92.8%で、男性の74.2%より18ポイント以上高い結果となったという。
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子どもを持つ・持たないの結論には多様な考えがあっていい。だが、そこに繋がる理由に生きづらさが挙げられないよう、私たちひとりひとりが自分の中にある「これが美しい」という固定概念を見直し、人と向き合っていくことも大切なのではないだろうか。

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