「ビッグモーター」不当解雇訴訟 原告男性が「あの会社はこれからも変わらない」と語る理由 和解成立の裏にあった「カネは払うが謝罪は拒否」「“退職強要”上司昇進」の仰天事実

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元従業員が起こした「不当解雇」訴訟の控訴審は10月5日、原告と中古車販売大手「ビッグモーター」との間で和解が成立した。しかし内容を精査すると、裁判は同社の「実質敗訴」に終わり、支払い金額も「満額以上」になったという。一連の裁判を通じてビッグモーターのウソと保身に汲々とする姿を目の当たりにした原告男性が、和解に応じた理由と裁判の裏側を初めて明かした。
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【写真を見る】「さすがにデカすぎ」成金趣味全開な“20億円の自宅”には茶室に噴水、滝まで… 兼重氏が住む約500坪の大豪邸と、別荘2棟の全容をみる 発端は2021年10月。茨城県内のビッグモーター店に勤務していた30代の車両整備士が「正当な理由もなく、上司の個人的な感情で解雇された」として、同社に約450万円の損害賠償を求めて水戸地裁に提訴したことに始まる。

再建なるか 今年2月の一審判決では〈本件解雇は、客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、違法である〉と、原告男性の主張どおり「不当解雇」であると認定。しかしビッグモーターは〈判決は、全部不服であるから控訴を提起する〉(控訴状より)と控訴し、舞台は東京高裁へと――。「しかし控訴審が始まると8月に即日結審し、裁判長は一審判決に沿ってビッグモーターが原告側へ解決金を支払う和解案を勧告した。ただビッグモーター側は和解案をすんなりと受け入れたわけでなく、9月に行われた協議では双方の意見の隔たりが埋まらず、持ち越しとなった経緯があります」(全国紙司法記者) 今回、成立した和解によって、ビッグモーターは原告に対し、請求金額に利息なども加えた486万8830円の解決金を支払うことになったという。「支払い金額だけを見れば、原告側の“実質勝訴”に終わったことは明らかです。それだけでなく、ビッグモーター側は裁判で“解雇した事実はなく、退職を申し出たのは原告側だ”と一貫して主張していましたが、和解文には“解雇する意思表示を撤回して合意退職とする”との表現があるため、ビッグモーターは解雇の事実も間接的に認めた形になりました」(同)「謝罪」は拒否 今回の和解成立について、労働問題が専門の弁護士は「ビッグモーターという会社が存続しているうちに“実質勝訴”の前例をつくったことは今後、同種の裁判が起きた時、大きな意味を持つ」と指摘する。 しかし実は原告側にとっても、今回の和解は「万々歳の解決」ではなかったという。原告男性が和解に至った経緯について、初めて重い口を開いた。「私が提訴した目的はお金ではなく、会社に残っている仲間たちのためにもビッグモーターが非を認め、改めるべき点があれば改めてほしいと思ったからです。そのためにも和解文のなかに“謝罪”の言葉などを盛り込んでもらいたいと弁護士を通じて交渉しましたが、結局、その願いは叶いませんでした」(原告男性) ビッグモーターにすれば、このまま裁判を続けても「勝てる見込みはなかったため、和解に応じる以外に選択肢はなかった」(前出・記者)とされるが、あやまちを認めて反省の意を表明することには最後まで難色を示したという。「ビッグモーター側の誠意の欠片も感じられない態度からは、“この際、カネを払って幕引きにするのが得策だ”と判断したようにも感じ取れました。一時は私のほうで和解を拒否するという選択肢も考えましたが、弁護士の先生から“ビッグモーターという会社をあなたはよく知っているはずだ。良心のない組織に謝罪を求め続けるのは自分の心身をスリ減らすだけの結果に終わりかねず、そんな疲弊していく姿は見たくない”と説かれ、悩んだ末に和解に応じることにしたのです」(原告男性)不当解雇を迫った上司は「昇進」 一方で原告男性が和解について前向きに捉え直す、ある心境の変化もあったという。「裁判を通じて確信したのは、保身のためには平気で“黒を白”と言い張るなど、ビッグモーターのモラルに欠けた企業風土は“この先も変わらないだろう”という思いでした。だから自分の人生をやり直すため、和解がビッグモーターと完全に縁を切る節目になると考えた部分もありました」(原告) 実際、ビッグモーターは今回の結果を受けても「まったく反省していない」と話すのは同社関係者である。「訴状にも出てくる原告男性を解雇へと追い込んだ上司2人のうち、一人はいまも悠々と同じ職にとどまり、もう一人に至っては本部の次長職に昇進したと聞いています。2人の証言は一審で〈不自然、不合理〉で〈採用できない〉と却下されましたが、会社のために虚偽の証言をした“論功行賞だろう”と社内では囁かれている。パワハラまがいの言動を吐く管理職や顧客軽視の風潮はいまも存在しており、企業体質そのものは何も変わっていません」 ビッグモーターに和解の理由や見解を訊ねると、和解の成立は認めたが、「それ以上についての回答は差し控えさせていただきます」(同社広報部門) と回答。「不当解雇」の当事者である2人の上司の現在の役職などについても訊ねたが、「特定の社員情報につきましては回答を差し控えさせていただきます」(同) と答えるにとどまった。 生き残りをかけてオリックスなどに支援を求めるビッグモーターだが、果たして“火中の栗”を拾う奇特な企業など現れるのか。デイリー新潮編集部
発端は2021年10月。茨城県内のビッグモーター店に勤務していた30代の車両整備士が「正当な理由もなく、上司の個人的な感情で解雇された」として、同社に約450万円の損害賠償を求めて水戸地裁に提訴したことに始まる。
今年2月の一審判決では〈本件解雇は、客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、違法である〉と、原告男性の主張どおり「不当解雇」であると認定。しかしビッグモーターは〈判決は、全部不服であるから控訴を提起する〉(控訴状より)と控訴し、舞台は東京高裁へと――。
「しかし控訴審が始まると8月に即日結審し、裁判長は一審判決に沿ってビッグモーターが原告側へ解決金を支払う和解案を勧告した。ただビッグモーター側は和解案をすんなりと受け入れたわけでなく、9月に行われた協議では双方の意見の隔たりが埋まらず、持ち越しとなった経緯があります」(全国紙司法記者)
今回、成立した和解によって、ビッグモーターは原告に対し、請求金額に利息なども加えた486万8830円の解決金を支払うことになったという。
「支払い金額だけを見れば、原告側の“実質勝訴”に終わったことは明らかです。それだけでなく、ビッグモーター側は裁判で“解雇した事実はなく、退職を申し出たのは原告側だ”と一貫して主張していましたが、和解文には“解雇する意思表示を撤回して合意退職とする”との表現があるため、ビッグモーターは解雇の事実も間接的に認めた形になりました」(同)
今回の和解成立について、労働問題が専門の弁護士は「ビッグモーターという会社が存続しているうちに“実質勝訴”の前例をつくったことは今後、同種の裁判が起きた時、大きな意味を持つ」と指摘する。
しかし実は原告側にとっても、今回の和解は「万々歳の解決」ではなかったという。原告男性が和解に至った経緯について、初めて重い口を開いた。
「私が提訴した目的はお金ではなく、会社に残っている仲間たちのためにもビッグモーターが非を認め、改めるべき点があれば改めてほしいと思ったからです。そのためにも和解文のなかに“謝罪”の言葉などを盛り込んでもらいたいと弁護士を通じて交渉しましたが、結局、その願いは叶いませんでした」(原告男性)
ビッグモーターにすれば、このまま裁判を続けても「勝てる見込みはなかったため、和解に応じる以外に選択肢はなかった」(前出・記者)とされるが、あやまちを認めて反省の意を表明することには最後まで難色を示したという。
「ビッグモーター側の誠意の欠片も感じられない態度からは、“この際、カネを払って幕引きにするのが得策だ”と判断したようにも感じ取れました。一時は私のほうで和解を拒否するという選択肢も考えましたが、弁護士の先生から“ビッグモーターという会社をあなたはよく知っているはずだ。良心のない組織に謝罪を求め続けるのは自分の心身をスリ減らすだけの結果に終わりかねず、そんな疲弊していく姿は見たくない”と説かれ、悩んだ末に和解に応じることにしたのです」(原告男性)
一方で原告男性が和解について前向きに捉え直す、ある心境の変化もあったという。
「裁判を通じて確信したのは、保身のためには平気で“黒を白”と言い張るなど、ビッグモーターのモラルに欠けた企業風土は“この先も変わらないだろう”という思いでした。だから自分の人生をやり直すため、和解がビッグモーターと完全に縁を切る節目になると考えた部分もありました」(原告)
実際、ビッグモーターは今回の結果を受けても「まったく反省していない」と話すのは同社関係者である。
「訴状にも出てくる原告男性を解雇へと追い込んだ上司2人のうち、一人はいまも悠々と同じ職にとどまり、もう一人に至っては本部の次長職に昇進したと聞いています。2人の証言は一審で〈不自然、不合理〉で〈採用できない〉と却下されましたが、会社のために虚偽の証言をした“論功行賞だろう”と社内では囁かれている。パワハラまがいの言動を吐く管理職や顧客軽視の風潮はいまも存在しており、企業体質そのものは何も変わっていません」
ビッグモーターに和解の理由や見解を訊ねると、和解の成立は認めたが、
「それ以上についての回答は差し控えさせていただきます」(同社広報部門)
と回答。「不当解雇」の当事者である2人の上司の現在の役職などについても訊ねたが、
「特定の社員情報につきましては回答を差し控えさせていただきます」(同)
と答えるにとどまった。
生き残りをかけてオリックスなどに支援を求めるビッグモーターだが、果たして“火中の栗”を拾う奇特な企業など現れるのか。
デイリー新潮編集部

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