リニア暗雲 国交省の報告書案、監視継続で「環境影響最小化」 静岡県は今後も「議論」

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リニア中央新幹線静岡工区の環境保全について議論する国土交通省の有識者会議が26日開かれ、報告書案が示された。
南アルプストンネル工事の進め方について、環境への影響予測や評価、保全措置、モニタリングを継続的に行い、必要に応じて見直す「順応的管理」で影響の最小化を図る方針が盛り込まれた。着工に反対する静岡県は「積み残された議論がある」と今後も疑問の解消を求めていく構えだ。
地上の植物には影響及ばず
有識者会議では昨年6月から、県側が懸念する大井川上流部の?沢の水生生物に対する影響?地下水位の低下に伴う地上部の植物への影響?残土置き場の整備による環境への影響-などを対策とともに検討してきた。
報告書案では、?についてシミュレーションの結果、地下で断層とトンネルが交差する箇所の周辺の沢では流量の減少傾向がみられ、地盤を固める薬液注入で改善が「期待される」とした。
?ではボーリングなどの結果、地上部にある植物の主な水分供給源は地下水でなく「影響は及ばない」と説明。?は残土による盛り土が100年に一度のレベルの降雨を想定した強固な設計であることなどを強調した。
躊躇なき見直し必要
ただ、影響予測には不確実性が伴う部分もあるため、「『順応的管理』で影響を最小化することが適切」と指摘。沢の流量が管理値を下回るなどの事態が発生した場合は「躊躇(ちゅうちょ)なく工事の進め方を見直すことが必要」と明記した。また、対策が着実に実行されているかを国が継続的に確認することも求めた。
国交省は今後、会合で委員からあった指摘内容を踏まえ、修正した上で最終案をまとめる方針。
「示されていない項目ある」
一方、県は議論を求めていた47項目のうち、個々の生物にどのような影響が出るのかなど、予測や対策が示されていない項目があると指摘。県くらし・環境部の山田琢也部長代理は会合後の取材に「議論を積み残したまま(報告書案の)『案』が取れることはないと思う」と、くぎを刺した。(福田涼太郎)

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