未婚アラサー男女の4割は「性交経験ナシ」!? “未婚率”が上昇している日本でパートナーを選ぶうえでの“意外に大事な発想”とは

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〈「恋愛感情なんて3~4年しかもたない」が定説…それでも関係が長続きする夫婦・カップルはいったい何が違うのか〉から続く
2015年、私は『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー携書)を書きました。当時の20代(多くが現30代)の若者が「なぜ恋愛しないのか」を、多方面から探る本でしたが、執筆段階でもっとも衝撃的だったのは、恋人以外と「体だけの関係」を結ぶ、いわゆる「セフレ(セックスフレンド)」をもつ男女が、予想以上に多かったことです。
【画像】高校生全体の「性交経験率」は、2005年(28%)→17年(16%)と1割以上減った
出版にあたり、20代の男女600人に定量調査を実施したところ、「(一夜限りも含め)交際相手以外の異性とセックス経験がある」と答えた独身者が、男性で約40%、女性ではなんと約43%にものぼりました。
調査協力:クロス・マーケティング
実は、この調査には前段がありました。女性ファッション誌『anan』(マガジンハウス)による調査(11年)で、「彼氏や夫以外に、セックスする相手(セフレ)がいる」と答えた女性(おもに20~30代前半)が、およそ7人に1人(約14%)にのぼっていたのです。
この結果を見て、当時私は、弊社(有限会社インフィニティ)の女性スタッフらと「この回答割合、高すぎるよね」と茶化していました。失礼ながら、内心では「さすが、毎年セックス特集が人気の『anan』というだけのことはある」と思い込んでもいました。 まさか、自分たちの調査でそれを上回る結果が出るとは、夢にも思わなかったのです。のちに同年代女性へのインタビュー調査も行いましたが、そのときも3人に1人程度が「セフレあり」の印象でした。 あれから10年弱が経ちますが、性を巡って「変わったこと」と「変わらないこと」があると感じます。 まずは「変わったこと」です。ジェンダーフリーと性的役割のジレンマ 23年、拙著『恋愛結婚の終焉』(光文社新書)でZ世代(弊社定義で、現19~28歳)にインタビューした際に、当時との違いとして、以下2点を痛感しました。(1)社会が「ジェンダーフリー」に近づいた(2)動画やAIの浸透など、超情報化社会に拍車がかかった (1)については、教育の影響が大きいと考えます。 SDGs関連教育が小中学校の「新学習指導要領」に取り入れられたのは、20年度以降でしたが、その6~7年前から、既に教育現場では「男女混合出席簿」の導入、すなわち「男子が前、女子が後ろ」と性別で順番を決めるのはやめよう、などの動きが広がっていました。 こうした状況下で育ったZ世代ですが、こと恋愛となれば、「男たるもの」「女らしく」といった昭和的な性概念を求められ続けています。ゆえに、彼らの多くは、ジェンダーフリーの概念と、「男女不平等恋愛」のジレンマに悩んでいるようなのです。 インタビュー調査でも、「セフレがいる」と答える若者の多くは、次のような声をあげます。〈「普段は男女平等とか言うクセに、付き合った途端『女らしさ』を求められるのがイヤで仕方がない」〉〈「デートとなると、いまだに『男がリードして当然』みたいな風潮が、イミフ(意味不明)」〉 だからこそ、一部の男女は「恋人ではない異性と、もっと自由にセックスしたい」「女性も積極的にリードして、性行為をスポーツのように楽しみたい」などと考え、セフレとの関係を楽しむのでしょう。 一方、(2)の超情報化社会の進行は、「セックス=面倒」だと感じさせる要因にもなっているようです。 とくにZ世代は、「動画ネイティブ」とも言われる世代です。スマホとWi-Fi環境さえあれば、いつでもどこでも、コンビニ感覚で、アダルトコンテンツを覗き見られる。それが性的欲求を増幅させる可能性もありますが、逆に嫌悪感や「面倒くさい」と感じさせるケースもあるでしょう。「性交経験率」の減少 近年は幼いころ、意図せずスマホでAV動画を見てしまい、「女性器ってキモそう」や「セックスって汚い感じ」といった感情を抱く若者も増えました。 性行為のイメージを聞いた調査でも、セックスにネガティブな要素を指摘する男女(17~19歳)は、性経験がない人ほど多く、「きたない」や「気持ち悪い」の回答が、いずれも1割ほどにのぼります(2021年 日本財団「18歳意識調査―性行為」)。 こうしたなか、若い段階での性体験は、減少傾向にあるようです。 日本性教育協会の調査によれば、高校生全体の「性交経験率」は、17年時点で約16%と、05年(約28%)との比較で1割以上減りました。 減少傾向は男女とも同じですが、実は性交経験率が05年に男女で逆転し、いまや女子高生のほうが男子高生より、経験割合が6%ほど高い(17年時点)状況となっています。特に00年代生まれのZ世代は、キスも性交経験も、「女子先行」が際立っているのが見てとれます。 あくまでも推測ですが、おそらく性に活発な一部の年上男性(大学生など)が、1人で複数の女子高生を相手にするため、女性の間で「早熟派」が増える、でもそうした男女は一部にすぎず、全体で見ると「未経験派」が多くなる、という流れではないでしょうか。 また、30~34歳で性交経験がある未婚者は、男女とも6割前後(男性62・8%/女性55・6%)に留まり、残る4割程度は「性交経験ナシ」であることが分かっています。 こうした状況を「草食化が進んだ」や「ゆゆしき事態」などと揶揄する大人世代もいますが、これらはむしろ「自然なこと」ではないでしょうか。性交経験が二極化することによる“弊害” 昭和の時代には、「上司に風俗店に連れて行ってもらった」などと自慢げに話す男性サラリーマンの声も聞こえてきました。ですが、令和のいま、一般的な企業はコンプライアンス遵守に敏感で、さすがにそうした行動や経費を認める環境にないはずです。 また、かつての農漁村に見られた「夜這い」のような文化も、いまや存在しないでしょう。町や村が一丸となって、若い衆の「筆下ろしや水揚げ(童貞や処女を奪う行為)」を手伝う時代ではありませんから、性に積極的な若者と、そうでない人たちの間で「二極化」が起こるのは、極めて「自然なこと」のはずです。 ただ、強いていえば、二極化の弊害もゼロではありません。 まず、性に積極的な男女が、1人で複数の人と性的関係をもつと、「性病」への感染リスクが高まる恐れが指摘されています。 14年、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学で人気授業をもつ、マリナ・アドシェイド氏は、経済学の視点から、日本でも『セックスと恋愛の経済学』(東洋経済新報社)と題する本を出版しました。 これによれば、アメリカの高校生の性行動は、過去22年間(1988~2010年)と比べて最低水準になっており、さらに一定程度、避妊などの予防措置もとっていると考えられるにもかかわらず、性病の新規罹患者の50%は「24歳以下」となり、性行動が減ったことによって、若い世代の性病がむしろ増えてしまったというのです。 アドシェイド氏はこれらの理由を、学生を次の3タイプに分けることによって説明しました。(1)リスク回避型=性行為の際、おもにコンドームを使用(2)リスク中立型=多くは、(1)が好むコンドームの使用を受け入れる(3)リスク志向型=通常、コンドームを使用しない(リスクテイカー) つまり、かつて10代の性行動が活発化していた時代には、リスク回避型の人たちも「中立型」と性交渉を持つことがあった。この場合、回避型が使用するコンドームを、中立型も拒まないので、2者とも性病から保護されていたといいます。 ところが、若年層の経済的負担が増す社会では、「リスク回避型の学生が、性行動自体をとらなくなる」とアドシェイド氏は指摘。その結果として、性行為にある程度活発な中立型の学生は、リスク志向型とセックスする確率が高まり、性病罹患のリスクが大いに上がってしまうというのです。 近年、日本でも「梅毒」の感染者が増えています。とくに20代女性の間で、その傾向が顕著で、その要因はおもに以下のようにいわれています(*1)。・若い女性が、SNSなどを通じて不特定多数の相手と性交渉するようになったため・コロナ禍で感染に敏感な人が増え、性病クリニックを訪れる若者も増えたため(筆者注:診察を受けることで梅毒と分かる人が増える)・コロナが多少落ち着いたころから、性病に罹患した外国人観光客の訪日が増え始め、日本の風俗店などを利用することで、女性が感染しやすくなったため*1 「NHK健康チャンネル」(日本放送協会)[2023年5月24日掲載]ほか しかし、もしかするとアドシェイド氏が言うように、(1)リスク回避型の人たちが軒並み、セックス市場から離れたことで、(2)中立型と(3)志向型の性交渉の機会が増え、結果的に罹患者が増えた可能性もあるのではないでしょうか。性交経験や性行為の実力を含めた「恋愛力」が求められている そしてもう一つ、性に積極的な層とそうでない層の二極化がもたらす弊害として、「未婚率」のさらなる上昇が考えられます。 なぜなら、いまも恋愛結婚をイメージする人の多くが、一生を共にするパートナー候補に対し、性交経験や性行為の実力を含めた「恋愛力」を求めているからです。 こうなると、30歳を過ぎて過去に経験がない人、とくに男性においては、たとえ結婚したいと願っても、最初から「圏外」とされてしまう可能性が高まります。 いまや30~34歳の未婚者でも、4割前後が「性交経験ナシ」だとお伝えしましたが、女性たちが男性に「30歳過ぎて、いまさら私たちが(性的テクニックを)教えるんですか?」などとため息をつく状況も、決して少なくありません。 ですが、彼女たちのなかには、先のように「セフレの男性とは、自由なセックスが楽しめる」や、「セフレとなら、私がリードしても『女のくせに』とは見られない」など、積極的に主導権を握り、性行為を楽しむような女性も、少なからず含まれます。 過去に年上の異性と関係を持ち、いろいろ教えられた人も、男性以上に多いでしょう。そうだとすれば、恋愛シーンはともかく、未来のパートナー選びに際してまで、女性たちが当たり前のように「恋愛力や性交経験」を求めるのはおかしい、と考えるのは私だけでしょうか。「恋愛と結婚は別」という考えも 前回ふれたとおり、結婚後に大切なのは、性的快楽に支えられたドーパミン系の情熱ではなく、オキシトシンなど癒し系物質の放出を促すような穏やかな関係性です。 スキンシップとしてのハグやセックスは大切ですが、ときには自分たち女性自身が、未来のパートナーをリードする、あるいは相手と共に「どうすれば、お互いに心地よいか」を試し、率先して行為をアップデートしていく、そんな「共創」の発想があってもよいのではないでしょうか。 そもそも結婚した後は「セックスレス」のカップルが、約5割にも及ぶような時代です。「恋愛と結婚は別」、そう割り切れば、未来のパートナー選びも、いまよりずっとシンプルで効率のよいものになるはずです。(牛窪 恵)
この結果を見て、当時私は、弊社(有限会社インフィニティ)の女性スタッフらと「この回答割合、高すぎるよね」と茶化していました。失礼ながら、内心では「さすが、毎年セックス特集が人気の『anan』というだけのことはある」と思い込んでもいました。
まさか、自分たちの調査でそれを上回る結果が出るとは、夢にも思わなかったのです。のちに同年代女性へのインタビュー調査も行いましたが、そのときも3人に1人程度が「セフレあり」の印象でした。
あれから10年弱が経ちますが、性を巡って「変わったこと」と「変わらないこと」があると感じます。
まずは「変わったこと」です。
23年、拙著『恋愛結婚の終焉』(光文社新書)でZ世代(弊社定義で、現19~28歳)にインタビューした際に、当時との違いとして、以下2点を痛感しました。
(1)社会が「ジェンダーフリー」に近づいた

(2)動画やAIの浸透など、超情報化社会に拍車がかかった
(1)については、教育の影響が大きいと考えます。
SDGs関連教育が小中学校の「新学習指導要領」に取り入れられたのは、20年度以降でしたが、その6~7年前から、既に教育現場では「男女混合出席簿」の導入、すなわち「男子が前、女子が後ろ」と性別で順番を決めるのはやめよう、などの動きが広がっていました。
こうした状況下で育ったZ世代ですが、こと恋愛となれば、「男たるもの」「女らしく」といった昭和的な性概念を求められ続けています。ゆえに、彼らの多くは、ジェンダーフリーの概念と、「男女不平等恋愛」のジレンマに悩んでいるようなのです。
インタビュー調査でも、「セフレがいる」と答える若者の多くは、次のような声をあげます。
〈「普段は男女平等とか言うクセに、付き合った途端『女らしさ』を求められるのがイヤで仕方がない」〉
〈「デートとなると、いまだに『男がリードして当然』みたいな風潮が、イミフ(意味不明)」〉
だからこそ、一部の男女は「恋人ではない異性と、もっと自由にセックスしたい」「女性も積極的にリードして、性行為をスポーツのように楽しみたい」などと考え、セフレとの関係を楽しむのでしょう。
一方、(2)の超情報化社会の進行は、「セックス=面倒」だと感じさせる要因にもなっているようです。
とくにZ世代は、「動画ネイティブ」とも言われる世代です。スマホとWi-Fi環境さえあれば、いつでもどこでも、コンビニ感覚で、アダルトコンテンツを覗き見られる。それが性的欲求を増幅させる可能性もありますが、逆に嫌悪感や「面倒くさい」と感じさせるケースもあるでしょう。
近年は幼いころ、意図せずスマホでAV動画を見てしまい、「女性器ってキモそう」や「セックスって汚い感じ」といった感情を抱く若者も増えました。
性行為のイメージを聞いた調査でも、セックスにネガティブな要素を指摘する男女(17~19歳)は、性経験がない人ほど多く、「きたない」や「気持ち悪い」の回答が、いずれも1割ほどにのぼります(2021年 日本財団「18歳意識調査―性行為」)。
こうしたなか、若い段階での性体験は、減少傾向にあるようです。
日本性教育協会の調査によれば、高校生全体の「性交経験率」は、17年時点で約16%と、05年(約28%)との比較で1割以上減りました。
減少傾向は男女とも同じですが、実は性交経験率が05年に男女で逆転し、いまや女子高生のほうが男子高生より、経験割合が6%ほど高い(17年時点)状況となっています。特に00年代生まれのZ世代は、キスも性交経験も、「女子先行」が際立っているのが見てとれます。
あくまでも推測ですが、おそらく性に活発な一部の年上男性(大学生など)が、1人で複数の女子高生を相手にするため、女性の間で「早熟派」が増える、でもそうした男女は一部にすぎず、全体で見ると「未経験派」が多くなる、という流れではないでしょうか。 また、30~34歳で性交経験がある未婚者は、男女とも6割前後(男性62・8%/女性55・6%)に留まり、残る4割程度は「性交経験ナシ」であることが分かっています。 こうした状況を「草食化が進んだ」や「ゆゆしき事態」などと揶揄する大人世代もいますが、これらはむしろ「自然なこと」ではないでしょうか。性交経験が二極化することによる“弊害” 昭和の時代には、「上司に風俗店に連れて行ってもらった」などと自慢げに話す男性サラリーマンの声も聞こえてきました。ですが、令和のいま、一般的な企業はコンプライアンス遵守に敏感で、さすがにそうした行動や経費を認める環境にないはずです。 また、かつての農漁村に見られた「夜這い」のような文化も、いまや存在しないでしょう。町や村が一丸となって、若い衆の「筆下ろしや水揚げ(童貞や処女を奪う行為)」を手伝う時代ではありませんから、性に積極的な若者と、そうでない人たちの間で「二極化」が起こるのは、極めて「自然なこと」のはずです。 ただ、強いていえば、二極化の弊害もゼロではありません。 まず、性に積極的な男女が、1人で複数の人と性的関係をもつと、「性病」への感染リスクが高まる恐れが指摘されています。 14年、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学で人気授業をもつ、マリナ・アドシェイド氏は、経済学の視点から、日本でも『セックスと恋愛の経済学』(東洋経済新報社)と題する本を出版しました。 これによれば、アメリカの高校生の性行動は、過去22年間(1988~2010年)と比べて最低水準になっており、さらに一定程度、避妊などの予防措置もとっていると考えられるにもかかわらず、性病の新規罹患者の50%は「24歳以下」となり、性行動が減ったことによって、若い世代の性病がむしろ増えてしまったというのです。 アドシェイド氏はこれらの理由を、学生を次の3タイプに分けることによって説明しました。(1)リスク回避型=性行為の際、おもにコンドームを使用(2)リスク中立型=多くは、(1)が好むコンドームの使用を受け入れる(3)リスク志向型=通常、コンドームを使用しない(リスクテイカー) つまり、かつて10代の性行動が活発化していた時代には、リスク回避型の人たちも「中立型」と性交渉を持つことがあった。この場合、回避型が使用するコンドームを、中立型も拒まないので、2者とも性病から保護されていたといいます。 ところが、若年層の経済的負担が増す社会では、「リスク回避型の学生が、性行動自体をとらなくなる」とアドシェイド氏は指摘。その結果として、性行為にある程度活発な中立型の学生は、リスク志向型とセックスする確率が高まり、性病罹患のリスクが大いに上がってしまうというのです。 近年、日本でも「梅毒」の感染者が増えています。とくに20代女性の間で、その傾向が顕著で、その要因はおもに以下のようにいわれています(*1)。・若い女性が、SNSなどを通じて不特定多数の相手と性交渉するようになったため・コロナ禍で感染に敏感な人が増え、性病クリニックを訪れる若者も増えたため(筆者注:診察を受けることで梅毒と分かる人が増える)・コロナが多少落ち着いたころから、性病に罹患した外国人観光客の訪日が増え始め、日本の風俗店などを利用することで、女性が感染しやすくなったため*1 「NHK健康チャンネル」(日本放送協会)[2023年5月24日掲載]ほか しかし、もしかするとアドシェイド氏が言うように、(1)リスク回避型の人たちが軒並み、セックス市場から離れたことで、(2)中立型と(3)志向型の性交渉の機会が増え、結果的に罹患者が増えた可能性もあるのではないでしょうか。性交経験や性行為の実力を含めた「恋愛力」が求められている そしてもう一つ、性に積極的な層とそうでない層の二極化がもたらす弊害として、「未婚率」のさらなる上昇が考えられます。 なぜなら、いまも恋愛結婚をイメージする人の多くが、一生を共にするパートナー候補に対し、性交経験や性行為の実力を含めた「恋愛力」を求めているからです。 こうなると、30歳を過ぎて過去に経験がない人、とくに男性においては、たとえ結婚したいと願っても、最初から「圏外」とされてしまう可能性が高まります。 いまや30~34歳の未婚者でも、4割前後が「性交経験ナシ」だとお伝えしましたが、女性たちが男性に「30歳過ぎて、いまさら私たちが(性的テクニックを)教えるんですか?」などとため息をつく状況も、決して少なくありません。 ですが、彼女たちのなかには、先のように「セフレの男性とは、自由なセックスが楽しめる」や、「セフレとなら、私がリードしても『女のくせに』とは見られない」など、積極的に主導権を握り、性行為を楽しむような女性も、少なからず含まれます。 過去に年上の異性と関係を持ち、いろいろ教えられた人も、男性以上に多いでしょう。そうだとすれば、恋愛シーンはともかく、未来のパートナー選びに際してまで、女性たちが当たり前のように「恋愛力や性交経験」を求めるのはおかしい、と考えるのは私だけでしょうか。「恋愛と結婚は別」という考えも 前回ふれたとおり、結婚後に大切なのは、性的快楽に支えられたドーパミン系の情熱ではなく、オキシトシンなど癒し系物質の放出を促すような穏やかな関係性です。 スキンシップとしてのハグやセックスは大切ですが、ときには自分たち女性自身が、未来のパートナーをリードする、あるいは相手と共に「どうすれば、お互いに心地よいか」を試し、率先して行為をアップデートしていく、そんな「共創」の発想があってもよいのではないでしょうか。 そもそも結婚した後は「セックスレス」のカップルが、約5割にも及ぶような時代です。「恋愛と結婚は別」、そう割り切れば、未来のパートナー選びも、いまよりずっとシンプルで効率のよいものになるはずです。(牛窪 恵)
あくまでも推測ですが、おそらく性に活発な一部の年上男性(大学生など)が、1人で複数の女子高生を相手にするため、女性の間で「早熟派」が増える、でもそうした男女は一部にすぎず、全体で見ると「未経験派」が多くなる、という流れではないでしょうか。
また、30~34歳で性交経験がある未婚者は、男女とも6割前後(男性62・8%/女性55・6%)に留まり、残る4割程度は「性交経験ナシ」であることが分かっています。
こうした状況を「草食化が進んだ」や「ゆゆしき事態」などと揶揄する大人世代もいますが、これらはむしろ「自然なこと」ではないでしょうか。性交経験が二極化することによる“弊害” 昭和の時代には、「上司に風俗店に連れて行ってもらった」などと自慢げに話す男性サラリーマンの声も聞こえてきました。ですが、令和のいま、一般的な企業はコンプライアンス遵守に敏感で、さすがにそうした行動や経費を認める環境にないはずです。 また、かつての農漁村に見られた「夜這い」のような文化も、いまや存在しないでしょう。町や村が一丸となって、若い衆の「筆下ろしや水揚げ(童貞や処女を奪う行為)」を手伝う時代ではありませんから、性に積極的な若者と、そうでない人たちの間で「二極化」が起こるのは、極めて「自然なこと」のはずです。 ただ、強いていえば、二極化の弊害もゼロではありません。 まず、性に積極的な男女が、1人で複数の人と性的関係をもつと、「性病」への感染リスクが高まる恐れが指摘されています。 14年、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学で人気授業をもつ、マリナ・アドシェイド氏は、経済学の視点から、日本でも『セックスと恋愛の経済学』(東洋経済新報社)と題する本を出版しました。 これによれば、アメリカの高校生の性行動は、過去22年間(1988~2010年)と比べて最低水準になっており、さらに一定程度、避妊などの予防措置もとっていると考えられるにもかかわらず、性病の新規罹患者の50%は「24歳以下」となり、性行動が減ったことによって、若い世代の性病がむしろ増えてしまったというのです。 アドシェイド氏はこれらの理由を、学生を次の3タイプに分けることによって説明しました。(1)リスク回避型=性行為の際、おもにコンドームを使用(2)リスク中立型=多くは、(1)が好むコンドームの使用を受け入れる(3)リスク志向型=通常、コンドームを使用しない(リスクテイカー) つまり、かつて10代の性行動が活発化していた時代には、リスク回避型の人たちも「中立型」と性交渉を持つことがあった。この場合、回避型が使用するコンドームを、中立型も拒まないので、2者とも性病から保護されていたといいます。 ところが、若年層の経済的負担が増す社会では、「リスク回避型の学生が、性行動自体をとらなくなる」とアドシェイド氏は指摘。その結果として、性行為にある程度活発な中立型の学生は、リスク志向型とセックスする確率が高まり、性病罹患のリスクが大いに上がってしまうというのです。 近年、日本でも「梅毒」の感染者が増えています。とくに20代女性の間で、その傾向が顕著で、その要因はおもに以下のようにいわれています(*1)。・若い女性が、SNSなどを通じて不特定多数の相手と性交渉するようになったため・コロナ禍で感染に敏感な人が増え、性病クリニックを訪れる若者も増えたため(筆者注:診察を受けることで梅毒と分かる人が増える)・コロナが多少落ち着いたころから、性病に罹患した外国人観光客の訪日が増え始め、日本の風俗店などを利用することで、女性が感染しやすくなったため*1 「NHK健康チャンネル」(日本放送協会)[2023年5月24日掲載]ほか しかし、もしかするとアドシェイド氏が言うように、(1)リスク回避型の人たちが軒並み、セックス市場から離れたことで、(2)中立型と(3)志向型の性交渉の機会が増え、結果的に罹患者が増えた可能性もあるのではないでしょうか。性交経験や性行為の実力を含めた「恋愛力」が求められている そしてもう一つ、性に積極的な層とそうでない層の二極化がもたらす弊害として、「未婚率」のさらなる上昇が考えられます。 なぜなら、いまも恋愛結婚をイメージする人の多くが、一生を共にするパートナー候補に対し、性交経験や性行為の実力を含めた「恋愛力」を求めているからです。 こうなると、30歳を過ぎて過去に経験がない人、とくに男性においては、たとえ結婚したいと願っても、最初から「圏外」とされてしまう可能性が高まります。 いまや30~34歳の未婚者でも、4割前後が「性交経験ナシ」だとお伝えしましたが、女性たちが男性に「30歳過ぎて、いまさら私たちが(性的テクニックを)教えるんですか?」などとため息をつく状況も、決して少なくありません。 ですが、彼女たちのなかには、先のように「セフレの男性とは、自由なセックスが楽しめる」や、「セフレとなら、私がリードしても『女のくせに』とは見られない」など、積極的に主導権を握り、性行為を楽しむような女性も、少なからず含まれます。 過去に年上の異性と関係を持ち、いろいろ教えられた人も、男性以上に多いでしょう。そうだとすれば、恋愛シーンはともかく、未来のパートナー選びに際してまで、女性たちが当たり前のように「恋愛力や性交経験」を求めるのはおかしい、と考えるのは私だけでしょうか。「恋愛と結婚は別」という考えも 前回ふれたとおり、結婚後に大切なのは、性的快楽に支えられたドーパミン系の情熱ではなく、オキシトシンなど癒し系物質の放出を促すような穏やかな関係性です。 スキンシップとしてのハグやセックスは大切ですが、ときには自分たち女性自身が、未来のパートナーをリードする、あるいは相手と共に「どうすれば、お互いに心地よいか」を試し、率先して行為をアップデートしていく、そんな「共創」の発想があってもよいのではないでしょうか。 そもそも結婚した後は「セックスレス」のカップルが、約5割にも及ぶような時代です。「恋愛と結婚は別」、そう割り切れば、未来のパートナー選びも、いまよりずっとシンプルで効率のよいものになるはずです。(牛窪 恵)
こうした状況を「草食化が進んだ」や「ゆゆしき事態」などと揶揄する大人世代もいますが、これらはむしろ「自然なこと」ではないでしょうか。
昭和の時代には、「上司に風俗店に連れて行ってもらった」などと自慢げに話す男性サラリーマンの声も聞こえてきました。ですが、令和のいま、一般的な企業はコンプライアンス遵守に敏感で、さすがにそうした行動や経費を認める環境にないはずです。
また、かつての農漁村に見られた「夜這い」のような文化も、いまや存在しないでしょう。町や村が一丸となって、若い衆の「筆下ろしや水揚げ(童貞や処女を奪う行為)」を手伝う時代ではありませんから、性に積極的な若者と、そうでない人たちの間で「二極化」が起こるのは、極めて「自然なこと」のはずです。
ただ、強いていえば、二極化の弊害もゼロではありません。
まず、性に積極的な男女が、1人で複数の人と性的関係をもつと、「性病」への感染リスクが高まる恐れが指摘されています。
14年、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学で人気授業をもつ、マリナ・アドシェイド氏は、経済学の視点から、日本でも『セックスと恋愛の経済学』(東洋経済新報社)と題する本を出版しました。
これによれば、アメリカの高校生の性行動は、過去22年間(1988~2010年)と比べて最低水準になっており、さらに一定程度、避妊などの予防措置もとっていると考えられるにもかかわらず、性病の新規罹患者の50%は「24歳以下」となり、性行動が減ったことによって、若い世代の性病がむしろ増えてしまったというのです。
アドシェイド氏はこれらの理由を、学生を次の3タイプに分けることによって説明しました。
(1)リスク回避型=性行為の際、おもにコンドームを使用

(2)リスク中立型=多くは、(1)が好むコンドームの使用を受け入れる

(3)リスク志向型=通常、コンドームを使用しない(リスクテイカー)
つまり、かつて10代の性行動が活発化していた時代には、リスク回避型の人たちも「中立型」と性交渉を持つことがあった。この場合、回避型が使用するコンドームを、中立型も拒まないので、2者とも性病から保護されていたといいます。
ところが、若年層の経済的負担が増す社会では、「リスク回避型の学生が、性行動自体をとらなくなる」とアドシェイド氏は指摘。その結果として、性行為にある程度活発な中立型の学生は、リスク志向型とセックスする確率が高まり、性病罹患のリスクが大いに上がってしまうというのです。
近年、日本でも「梅毒」の感染者が増えています。とくに20代女性の間で、その傾向が顕著で、その要因はおもに以下のようにいわれています(*1)。
・若い女性が、SNSなどを通じて不特定多数の相手と性交渉するようになったため

・コロナ禍で感染に敏感な人が増え、性病クリニックを訪れる若者も増えたため(筆者注:診察を受けることで梅毒と分かる人が増える)

・コロナが多少落ち着いたころから、性病に罹患した外国人観光客の訪日が増え始め、日本の風俗店などを利用することで、女性が感染しやすくなったため

*1 「NHK健康チャンネル」(日本放送協会)[2023年5月24日掲載]ほか しかし、もしかするとアドシェイド氏が言うように、(1)リスク回避型の人たちが軒並み、セックス市場から離れたことで、(2)中立型と(3)志向型の性交渉の機会が増え、結果的に罹患者が増えた可能性もあるのではないでしょうか。性交経験や性行為の実力を含めた「恋愛力」が求められている そしてもう一つ、性に積極的な層とそうでない層の二極化がもたらす弊害として、「未婚率」のさらなる上昇が考えられます。 なぜなら、いまも恋愛結婚をイメージする人の多くが、一生を共にするパートナー候補に対し、性交経験や性行為の実力を含めた「恋愛力」を求めているからです。 こうなると、30歳を過ぎて過去に経験がない人、とくに男性においては、たとえ結婚したいと願っても、最初から「圏外」とされてしまう可能性が高まります。 いまや30~34歳の未婚者でも、4割前後が「性交経験ナシ」だとお伝えしましたが、女性たちが男性に「30歳過ぎて、いまさら私たちが(性的テクニックを)教えるんですか?」などとため息をつく状況も、決して少なくありません。 ですが、彼女たちのなかには、先のように「セフレの男性とは、自由なセックスが楽しめる」や、「セフレとなら、私がリードしても『女のくせに』とは見られない」など、積極的に主導権を握り、性行為を楽しむような女性も、少なからず含まれます。 過去に年上の異性と関係を持ち、いろいろ教えられた人も、男性以上に多いでしょう。そうだとすれば、恋愛シーンはともかく、未来のパートナー選びに際してまで、女性たちが当たり前のように「恋愛力や性交経験」を求めるのはおかしい、と考えるのは私だけでしょうか。「恋愛と結婚は別」という考えも 前回ふれたとおり、結婚後に大切なのは、性的快楽に支えられたドーパミン系の情熱ではなく、オキシトシンなど癒し系物質の放出を促すような穏やかな関係性です。 スキンシップとしてのハグやセックスは大切ですが、ときには自分たち女性自身が、未来のパートナーをリードする、あるいは相手と共に「どうすれば、お互いに心地よいか」を試し、率先して行為をアップデートしていく、そんな「共創」の発想があってもよいのではないでしょうか。 そもそも結婚した後は「セックスレス」のカップルが、約5割にも及ぶような時代です。「恋愛と結婚は別」、そう割り切れば、未来のパートナー選びも、いまよりずっとシンプルで効率のよいものになるはずです。(牛窪 恵)
しかし、もしかするとアドシェイド氏が言うように、(1)リスク回避型の人たちが軒並み、セックス市場から離れたことで、(2)中立型と(3)志向型の性交渉の機会が増え、結果的に罹患者が増えた可能性もあるのではないでしょうか。
性交経験や性行為の実力を含めた「恋愛力」が求められている そしてもう一つ、性に積極的な層とそうでない層の二極化がもたらす弊害として、「未婚率」のさらなる上昇が考えられます。 なぜなら、いまも恋愛結婚をイメージする人の多くが、一生を共にするパートナー候補に対し、性交経験や性行為の実力を含めた「恋愛力」を求めているからです。 こうなると、30歳を過ぎて過去に経験がない人、とくに男性においては、たとえ結婚したいと願っても、最初から「圏外」とされてしまう可能性が高まります。 いまや30~34歳の未婚者でも、4割前後が「性交経験ナシ」だとお伝えしましたが、女性たちが男性に「30歳過ぎて、いまさら私たちが(性的テクニックを)教えるんですか?」などとため息をつく状況も、決して少なくありません。 ですが、彼女たちのなかには、先のように「セフレの男性とは、自由なセックスが楽しめる」や、「セフレとなら、私がリードしても『女のくせに』とは見られない」など、積極的に主導権を握り、性行為を楽しむような女性も、少なからず含まれます。 過去に年上の異性と関係を持ち、いろいろ教えられた人も、男性以上に多いでしょう。そうだとすれば、恋愛シーンはともかく、未来のパートナー選びに際してまで、女性たちが当たり前のように「恋愛力や性交経験」を求めるのはおかしい、と考えるのは私だけでしょうか。「恋愛と結婚は別」という考えも 前回ふれたとおり、結婚後に大切なのは、性的快楽に支えられたドーパミン系の情熱ではなく、オキシトシンなど癒し系物質の放出を促すような穏やかな関係性です。 スキンシップとしてのハグやセックスは大切ですが、ときには自分たち女性自身が、未来のパートナーをリードする、あるいは相手と共に「どうすれば、お互いに心地よいか」を試し、率先して行為をアップデートしていく、そんな「共創」の発想があってもよいのではないでしょうか。 そもそも結婚した後は「セックスレス」のカップルが、約5割にも及ぶような時代です。「恋愛と結婚は別」、そう割り切れば、未来のパートナー選びも、いまよりずっとシンプルで効率のよいものになるはずです。(牛窪 恵)
そしてもう一つ、性に積極的な層とそうでない層の二極化がもたらす弊害として、「未婚率」のさらなる上昇が考えられます。
なぜなら、いまも恋愛結婚をイメージする人の多くが、一生を共にするパートナー候補に対し、性交経験や性行為の実力を含めた「恋愛力」を求めているからです。
こうなると、30歳を過ぎて過去に経験がない人、とくに男性においては、たとえ結婚したいと願っても、最初から「圏外」とされてしまう可能性が高まります。
いまや30~34歳の未婚者でも、4割前後が「性交経験ナシ」だとお伝えしましたが、女性たちが男性に「30歳過ぎて、いまさら私たちが(性的テクニックを)教えるんですか?」などとため息をつく状況も、決して少なくありません。
ですが、彼女たちのなかには、先のように「セフレの男性とは、自由なセックスが楽しめる」や、「セフレとなら、私がリードしても『女のくせに』とは見られない」など、積極的に主導権を握り、性行為を楽しむような女性も、少なからず含まれます。
過去に年上の異性と関係を持ち、いろいろ教えられた人も、男性以上に多いでしょう。そうだとすれば、恋愛シーンはともかく、未来のパートナー選びに際してまで、女性たちが当たり前のように「恋愛力や性交経験」を求めるのはおかしい、と考えるのは私だけでしょうか。
「恋愛と結婚は別」という考えも 前回ふれたとおり、結婚後に大切なのは、性的快楽に支えられたドーパミン系の情熱ではなく、オキシトシンなど癒し系物質の放出を促すような穏やかな関係性です。 スキンシップとしてのハグやセックスは大切ですが、ときには自分たち女性自身が、未来のパートナーをリードする、あるいは相手と共に「どうすれば、お互いに心地よいか」を試し、率先して行為をアップデートしていく、そんな「共創」の発想があってもよいのではないでしょうか。 そもそも結婚した後は「セックスレス」のカップルが、約5割にも及ぶような時代です。「恋愛と結婚は別」、そう割り切れば、未来のパートナー選びも、いまよりずっとシンプルで効率のよいものになるはずです。(牛窪 恵)
前回ふれたとおり、結婚後に大切なのは、性的快楽に支えられたドーパミン系の情熱ではなく、オキシトシンなど癒し系物質の放出を促すような穏やかな関係性です。
スキンシップとしてのハグやセックスは大切ですが、ときには自分たち女性自身が、未来のパートナーをリードする、あるいは相手と共に「どうすれば、お互いに心地よいか」を試し、率先して行為をアップデートしていく、そんな「共創」の発想があってもよいのではないでしょうか。
そもそも結婚した後は「セックスレス」のカップルが、約5割にも及ぶような時代です。「恋愛と結婚は別」、そう割り切れば、未来のパートナー選びも、いまよりずっとシンプルで効率のよいものになるはずです。
(牛窪 恵)

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