【動画入手】監督が生徒の首を掴んでなぎ倒し頭を床に押しつけると…大阪偕星学園高の野球部で今度は“暴行事件” セクハラ、給付金詐欺に続き不祥事が止まらない

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甲子園で慶応高校が優勝した8月23日の早朝、大阪偕星学園高校の元関係者から「X(旧ツイッター)」のとある投稿が送られてきた。さっそくリンク先を開いてみると、そこには野球のグラウンドコートを着た年配男性が、球児と思しき高校生を椅子からなぎ倒し、床に頭を押しつける衝撃の映像があった。
【写真】選手を力任せに押し倒す岩田氏 筆者は同校が甲子園に初出場した2015年夏に密着したことがあり、2021年に男性コーチによる生徒14人に対するセクハラ行為が発覚してからは、監督交代を繰り返しながらも終わる気配がない不祥事を報じてきた。

今回SNSにアップされた“暴行動画”の場所と、年配の男性には心当たりがあった。場所は大阪市生野区にある大阪偕星学園野球部寮の食堂、力任せに球児を床に倒した男性は昨年1月に監督に就任した岩田徹氏(56)に違いなかった。大阪偕星高校野球部の岩田徹監督 岩田氏はPL学園の出身で、KKコンビ(桑田真澄、清原和博)の1歳上の副キャプテンだった。高校卒業後、社会人チームを経て1989年にドラフト4位で阪神に入団した元プロ野球選手でもある。 さっそく学校に取材を申し込むと、梶本秀二校長名による文書での回答があった。「本校硬式野球部監督による不適切な指導があったことが、令和5年8月22日夜、SNSにて投稿された動画から発覚いたしました。発覚直後の翌23日、管理職から監督に聞き取りを行ったところ、生活態度等について生徒に指導する際、平手打ちや押し倒す暴力行為があったことを認めました」生徒の首を掴んでなぎ倒し、床に頭を押しつける 筆者が見た動画には平手打ちをする場面はなかったが、岩田氏への聞き取り調査の中で新たに出てきた事実ということだろう。気になるのは、現役の選手や保護者への説明および現在の指導体制だ。「同日23日、大阪府高野連に当事案を報告し、その後、大阪府私学課にも同様の内容を報告いたしました。監督は現在、指導停止の謹慎処分としておりますが、今後の処遇については、日本学生野球協会審査室および日本高野連からの処分決定後、本校としての処遇を再度検討いたします。尚、硬式野球部員ならびに保護者たちへの説明は速やかに実施をし、既に終えております」 あらためて動画を見返してみる。わずか十数秒の間に、岩田氏は食堂の椅子に座った生徒の首根っこを掴んでなぎ倒し、一緒に倒れた椅子を後方に蹴り飛ばすと、右手で力任せに球児の頭部を床に押しつけている。 防犯カメラの映像をスマホで撮影したようで時折映像がぶれることもあったが、一瞬だけ2022年11月の日付が確認できた。「押し倒す暴力行為については昨年発生したことであり、事態の報告がなされていなかったことについて、監督は『指導の不適切さ』の認識欠如があったと認めております。監督は、技術指導だけではなく私生活の指導にも重点を置き、『野球人として立派な大人に成長して欲しい』という強い思いをもって、保護者の皆様ともコミュニケーションをとりながら、日々指導にあたっております。その思いがあふれ、このような行き過ぎた指導になってしまったと説明がありました」 暴力行為があったのは昨年11月の一度だけなのだろうか。筆者は動画の発覚から3日が経過した8月26日朝に行われた同校のミーティング(職員会議のようなもの)で、梶本校長が「暴力行為は昨年11月とこの8月の二度」に渡ってあったことを職員に報告していることを聞いていた。 それゆえ、文書が届いたあと、再び大阪偕星学園に事実確認をしたが、「文書でお答えした内容がすべてです」という回答だった。 動画は天井から撮影したようなアングルで、食堂の防犯カメラの映像だということは一目瞭然だった。では誰が、いかなる目的のために動画をSNSにアップしたのだろうか。「情報管理の観点から、防犯カメラ映像を視聴できる人間は限定しており、ごく少数かつ特定のスタッフのみが確認できる体制でありました。しかしながら、このような事態に至ったため、警察にも相談しております」 つまり大阪偕星学園としては、監視カメラの映像は生徒が視聴することはできないから、スタッフもしくは第三者が動画を流出させたと考えているようだ。元監督が給付金詐欺で逮捕、コーチは選手へのセクハラで逮捕 大阪偕星学園では2021年8月に元甲子園球児で、コーチを務めていた水落雄基氏が野球部の生徒14人に対する強制わいせつ罪および強制性交等罪で逮捕され、懲役10年の判決が下されると、昨年1月には前監督であった山本セキ()氏による「Go Toトラベル」の給付金およそ80万円を国からだまし取った詐欺事件も発覚。そうした指導陣のスキャンダルだけでなく、生徒の不祥事も相次いできた。以下、改めて同校の野球部で起きた事件を列記する。2021年1月 野球部コーチだった水落雄基氏のセクハラ行為が発覚3月 野球部の新監督に就任した長谷部元伸氏のパワハラが問題化。日本高等学校野球連盟(高野連)への報告が遅れたことで、野球部部長が1カ月の謹慎処分を受ける7月 長谷部監督の財布から現金数十万が盗まれる盗難事件が発覚。高野連から「厳重注意」を受ける。10月 野球部の1年生に対する同学年部員の集団イジメが発覚11月 学校の宿泊授業において、野球部の1年生4人による喫煙が発覚11月 野球部の2年生3人、1年生1人の喫煙があいついで発覚2022年1月 新監督に岩田徹氏が就任1月 前監督の山本セキ氏が給付金詐欺で逮捕11月 岩田氏による暴力行為が行われる2023年8月 SNSによって岩田氏の暴力行為が発覚。岩田氏は学校から指導停止の判断が下され、現在は日本高野連の処分待ち「良い人間を育てたいと思っています。良いことも書いてください(笑)」 筆者は昨年1月5日に、大阪偕星学園の野球部監督に就任した岩田氏の初練習を取材している。大阪府富田林市の高台に位置する同校のグラウンドは岩田氏の出身校・PL学園の校舎からも近い。その日、こんな会話を交わした。「PL学園の校歌にある『羽曳野の聖丘』とはまさにこのあたり一帯のことを言います。不思議な縁を感じますね。単なる野球の技術を指導するだけではなく、良い人間を育てたいと思っています。(不祥事の報道ばかりではなく)良いことも書いてください(笑)」 岩田氏と最後に会ったのは今年の3月だ。花巻東高(岩手)との練習試合で花巻東のスラッガー・佐々木麟太郎が清宮幸太郎の持つ高校通算本塁打記録に並ぶ111本目のホームランを放ったのでよく覚えている。花巻東のOBが大阪偕星学園の寮監を務めていたことから実現した練習試合のようだった。 大阪偕星学園の野球部はこの夏、大阪大会の準々決勝にまで進出し、不祥事からの立て直しが進んでいるように見えていた。しかしその矢先、岩田氏自身の暴力が明るみに出たのだ。 岩田氏本人の責任はもちろんだが、ここまで不祥事が続けば学校の体質そのものにも疑問を感じざるを得ない。 今回の岩田氏の件に関して理事長の息子で、学校経営の実務を任されている太田尚樹専務に電話を入れた時も、問題の核心に触れることはなかった。 学校は今後の対応として、以下のようなコメントを出している。「本校としましては、指導の現場での暴力行為は、どのような経緯・関係性があろうと看過できるものではないと考えております。今後も継続して、コンプライアンスを徹底すると共に対話を重んじた学校作りを目指しています」(梶本校長) しかし「対話を重んじる」と言いながらも、野球部での不祥事がSNSなどで発覚して対処に追われる事態になったのは今回のケースだけではない。大阪偕星学園が自浄作用を取り戻す日は来るのだろうか。(柳川 悠二)
筆者は同校が甲子園に初出場した2015年夏に密着したことがあり、2021年に男性コーチによる生徒14人に対するセクハラ行為が発覚してからは、監督交代を繰り返しながらも終わる気配がない不祥事を報じてきた。
今回SNSにアップされた“暴行動画”の場所と、年配の男性には心当たりがあった。場所は大阪市生野区にある大阪偕星学園野球部寮の食堂、力任せに球児を床に倒した男性は昨年1月に監督に就任した岩田徹氏(56)に違いなかった。
大阪偕星高校野球部の岩田徹監督
岩田氏はPL学園の出身で、KKコンビ(桑田真澄、清原和博)の1歳上の副キャプテンだった。高校卒業後、社会人チームを経て1989年にドラフト4位で阪神に入団した元プロ野球選手でもある。
さっそく学校に取材を申し込むと、梶本秀二校長名による文書での回答があった。
「本校硬式野球部監督による不適切な指導があったことが、令和5年8月22日夜、SNSにて投稿された動画から発覚いたしました。発覚直後の翌23日、管理職から監督に聞き取りを行ったところ、生活態度等について生徒に指導する際、平手打ちや押し倒す暴力行為があったことを認めました」
筆者が見た動画には平手打ちをする場面はなかったが、岩田氏への聞き取り調査の中で新たに出てきた事実ということだろう。気になるのは、現役の選手や保護者への説明および現在の指導体制だ。
「同日23日、大阪府高野連に当事案を報告し、その後、大阪府私学課にも同様の内容を報告いたしました。監督は現在、指導停止の謹慎処分としておりますが、今後の処遇については、日本学生野球協会審査室および日本高野連からの処分決定後、本校としての処遇を再度検討いたします。尚、硬式野球部員ならびに保護者たちへの説明は速やかに実施をし、既に終えております」
あらためて動画を見返してみる。わずか十数秒の間に、岩田氏は食堂の椅子に座った生徒の首根っこを掴んでなぎ倒し、一緒に倒れた椅子を後方に蹴り飛ばすと、右手で力任せに球児の頭部を床に押しつけている。
防犯カメラの映像をスマホで撮影したようで時折映像がぶれることもあったが、一瞬だけ2022年11月の日付が確認できた。「押し倒す暴力行為については昨年発生したことであり、事態の報告がなされていなかったことについて、監督は『指導の不適切さ』の認識欠如があったと認めております。監督は、技術指導だけではなく私生活の指導にも重点を置き、『野球人として立派な大人に成長して欲しい』という強い思いをもって、保護者の皆様ともコミュニケーションをとりながら、日々指導にあたっております。その思いがあふれ、このような行き過ぎた指導になってしまったと説明がありました」 暴力行為があったのは昨年11月の一度だけなのだろうか。筆者は動画の発覚から3日が経過した8月26日朝に行われた同校のミーティング(職員会議のようなもの)で、梶本校長が「暴力行為は昨年11月とこの8月の二度」に渡ってあったことを職員に報告していることを聞いていた。 それゆえ、文書が届いたあと、再び大阪偕星学園に事実確認をしたが、「文書でお答えした内容がすべてです」という回答だった。 動画は天井から撮影したようなアングルで、食堂の防犯カメラの映像だということは一目瞭然だった。では誰が、いかなる目的のために動画をSNSにアップしたのだろうか。「情報管理の観点から、防犯カメラ映像を視聴できる人間は限定しており、ごく少数かつ特定のスタッフのみが確認できる体制でありました。しかしながら、このような事態に至ったため、警察にも相談しております」 つまり大阪偕星学園としては、監視カメラの映像は生徒が視聴することはできないから、スタッフもしくは第三者が動画を流出させたと考えているようだ。元監督が給付金詐欺で逮捕、コーチは選手へのセクハラで逮捕 大阪偕星学園では2021年8月に元甲子園球児で、コーチを務めていた水落雄基氏が野球部の生徒14人に対する強制わいせつ罪および強制性交等罪で逮捕され、懲役10年の判決が下されると、昨年1月には前監督であった山本セキ()氏による「Go Toトラベル」の給付金およそ80万円を国からだまし取った詐欺事件も発覚。そうした指導陣のスキャンダルだけでなく、生徒の不祥事も相次いできた。以下、改めて同校の野球部で起きた事件を列記する。2021年1月 野球部コーチだった水落雄基氏のセクハラ行為が発覚3月 野球部の新監督に就任した長谷部元伸氏のパワハラが問題化。日本高等学校野球連盟(高野連)への報告が遅れたことで、野球部部長が1カ月の謹慎処分を受ける7月 長谷部監督の財布から現金数十万が盗まれる盗難事件が発覚。高野連から「厳重注意」を受ける。10月 野球部の1年生に対する同学年部員の集団イジメが発覚11月 学校の宿泊授業において、野球部の1年生4人による喫煙が発覚11月 野球部の2年生3人、1年生1人の喫煙があいついで発覚2022年1月 新監督に岩田徹氏が就任1月 前監督の山本セキ氏が給付金詐欺で逮捕11月 岩田氏による暴力行為が行われる2023年8月 SNSによって岩田氏の暴力行為が発覚。岩田氏は学校から指導停止の判断が下され、現在は日本高野連の処分待ち「良い人間を育てたいと思っています。良いことも書いてください(笑)」 筆者は昨年1月5日に、大阪偕星学園の野球部監督に就任した岩田氏の初練習を取材している。大阪府富田林市の高台に位置する同校のグラウンドは岩田氏の出身校・PL学園の校舎からも近い。その日、こんな会話を交わした。「PL学園の校歌にある『羽曳野の聖丘』とはまさにこのあたり一帯のことを言います。不思議な縁を感じますね。単なる野球の技術を指導するだけではなく、良い人間を育てたいと思っています。(不祥事の報道ばかりではなく)良いことも書いてください(笑)」 岩田氏と最後に会ったのは今年の3月だ。花巻東高(岩手)との練習試合で花巻東のスラッガー・佐々木麟太郎が清宮幸太郎の持つ高校通算本塁打記録に並ぶ111本目のホームランを放ったのでよく覚えている。花巻東のOBが大阪偕星学園の寮監を務めていたことから実現した練習試合のようだった。 大阪偕星学園の野球部はこの夏、大阪大会の準々決勝にまで進出し、不祥事からの立て直しが進んでいるように見えていた。しかしその矢先、岩田氏自身の暴力が明るみに出たのだ。 岩田氏本人の責任はもちろんだが、ここまで不祥事が続けば学校の体質そのものにも疑問を感じざるを得ない。 今回の岩田氏の件に関して理事長の息子で、学校経営の実務を任されている太田尚樹専務に電話を入れた時も、問題の核心に触れることはなかった。 学校は今後の対応として、以下のようなコメントを出している。「本校としましては、指導の現場での暴力行為は、どのような経緯・関係性があろうと看過できるものではないと考えております。今後も継続して、コンプライアンスを徹底すると共に対話を重んじた学校作りを目指しています」(梶本校長) しかし「対話を重んじる」と言いながらも、野球部での不祥事がSNSなどで発覚して対処に追われる事態になったのは今回のケースだけではない。大阪偕星学園が自浄作用を取り戻す日は来るのだろうか。(柳川 悠二)
防犯カメラの映像をスマホで撮影したようで時折映像がぶれることもあったが、一瞬だけ2022年11月の日付が確認できた。
「押し倒す暴力行為については昨年発生したことであり、事態の報告がなされていなかったことについて、監督は『指導の不適切さ』の認識欠如があったと認めております。監督は、技術指導だけではなく私生活の指導にも重点を置き、『野球人として立派な大人に成長して欲しい』という強い思いをもって、保護者の皆様ともコミュニケーションをとりながら、日々指導にあたっております。その思いがあふれ、このような行き過ぎた指導になってしまったと説明がありました」
暴力行為があったのは昨年11月の一度だけなのだろうか。筆者は動画の発覚から3日が経過した8月26日朝に行われた同校のミーティング(職員会議のようなもの)で、梶本校長が「暴力行為は昨年11月とこの8月の二度」に渡ってあったことを職員に報告していることを聞いていた。
それゆえ、文書が届いたあと、再び大阪偕星学園に事実確認をしたが、「文書でお答えした内容がすべてです」という回答だった。
動画は天井から撮影したようなアングルで、食堂の防犯カメラの映像だということは一目瞭然だった。では誰が、いかなる目的のために動画をSNSにアップしたのだろうか。
「情報管理の観点から、防犯カメラ映像を視聴できる人間は限定しており、ごく少数かつ特定のスタッフのみが確認できる体制でありました。しかしながら、このような事態に至ったため、警察にも相談しております」 つまり大阪偕星学園としては、監視カメラの映像は生徒が視聴することはできないから、スタッフもしくは第三者が動画を流出させたと考えているようだ。元監督が給付金詐欺で逮捕、コーチは選手へのセクハラで逮捕 大阪偕星学園では2021年8月に元甲子園球児で、コーチを務めていた水落雄基氏が野球部の生徒14人に対する強制わいせつ罪および強制性交等罪で逮捕され、懲役10年の判決が下されると、昨年1月には前監督であった山本セキ()氏による「Go Toトラベル」の給付金およそ80万円を国からだまし取った詐欺事件も発覚。そうした指導陣のスキャンダルだけでなく、生徒の不祥事も相次いできた。以下、改めて同校の野球部で起きた事件を列記する。2021年1月 野球部コーチだった水落雄基氏のセクハラ行為が発覚3月 野球部の新監督に就任した長谷部元伸氏のパワハラが問題化。日本高等学校野球連盟(高野連)への報告が遅れたことで、野球部部長が1カ月の謹慎処分を受ける7月 長谷部監督の財布から現金数十万が盗まれる盗難事件が発覚。高野連から「厳重注意」を受ける。10月 野球部の1年生に対する同学年部員の集団イジメが発覚11月 学校の宿泊授業において、野球部の1年生4人による喫煙が発覚11月 野球部の2年生3人、1年生1人の喫煙があいついで発覚2022年1月 新監督に岩田徹氏が就任1月 前監督の山本セキ氏が給付金詐欺で逮捕11月 岩田氏による暴力行為が行われる2023年8月 SNSによって岩田氏の暴力行為が発覚。岩田氏は学校から指導停止の判断が下され、現在は日本高野連の処分待ち「良い人間を育てたいと思っています。良いことも書いてください(笑)」 筆者は昨年1月5日に、大阪偕星学園の野球部監督に就任した岩田氏の初練習を取材している。大阪府富田林市の高台に位置する同校のグラウンドは岩田氏の出身校・PL学園の校舎からも近い。その日、こんな会話を交わした。「PL学園の校歌にある『羽曳野の聖丘』とはまさにこのあたり一帯のことを言います。不思議な縁を感じますね。単なる野球の技術を指導するだけではなく、良い人間を育てたいと思っています。(不祥事の報道ばかりではなく)良いことも書いてください(笑)」 岩田氏と最後に会ったのは今年の3月だ。花巻東高(岩手)との練習試合で花巻東のスラッガー・佐々木麟太郎が清宮幸太郎の持つ高校通算本塁打記録に並ぶ111本目のホームランを放ったのでよく覚えている。花巻東のOBが大阪偕星学園の寮監を務めていたことから実現した練習試合のようだった。 大阪偕星学園の野球部はこの夏、大阪大会の準々決勝にまで進出し、不祥事からの立て直しが進んでいるように見えていた。しかしその矢先、岩田氏自身の暴力が明るみに出たのだ。 岩田氏本人の責任はもちろんだが、ここまで不祥事が続けば学校の体質そのものにも疑問を感じざるを得ない。 今回の岩田氏の件に関して理事長の息子で、学校経営の実務を任されている太田尚樹専務に電話を入れた時も、問題の核心に触れることはなかった。 学校は今後の対応として、以下のようなコメントを出している。「本校としましては、指導の現場での暴力行為は、どのような経緯・関係性があろうと看過できるものではないと考えております。今後も継続して、コンプライアンスを徹底すると共に対話を重んじた学校作りを目指しています」(梶本校長) しかし「対話を重んじる」と言いながらも、野球部での不祥事がSNSなどで発覚して対処に追われる事態になったのは今回のケースだけではない。大阪偕星学園が自浄作用を取り戻す日は来るのだろうか。(柳川 悠二)
「情報管理の観点から、防犯カメラ映像を視聴できる人間は限定しており、ごく少数かつ特定のスタッフのみが確認できる体制でありました。しかしながら、このような事態に至ったため、警察にも相談しております」
つまり大阪偕星学園としては、監視カメラの映像は生徒が視聴することはできないから、スタッフもしくは第三者が動画を流出させたと考えているようだ。
大阪偕星学園では2021年8月に元甲子園球児で、コーチを務めていた水落雄基氏が野球部の生徒14人に対する強制わいせつ罪および強制性交等罪で逮捕され、懲役10年の判決が下されると、昨年1月には前監督であった山本セキ()氏による「Go Toトラベル」の給付金およそ80万円を国からだまし取った詐欺事件も発覚。そうした指導陣のスキャンダルだけでなく、生徒の不祥事も相次いできた。以下、改めて同校の野球部で起きた事件を列記する。
2021年1月 野球部コーチだった水落雄基氏のセクハラ行為が発覚3月 野球部の新監督に就任した長谷部元伸氏のパワハラが問題化。日本高等学校野球連盟(高野連)への報告が遅れたことで、野球部部長が1カ月の謹慎処分を受ける7月 長谷部監督の財布から現金数十万が盗まれる盗難事件が発覚。高野連から「厳重注意」を受ける。10月 野球部の1年生に対する同学年部員の集団イジメが発覚11月 学校の宿泊授業において、野球部の1年生4人による喫煙が発覚11月 野球部の2年生3人、1年生1人の喫煙があいついで発覚2022年1月 新監督に岩田徹氏が就任1月 前監督の山本セキ氏が給付金詐欺で逮捕11月 岩田氏による暴力行為が行われる2023年8月 SNSによって岩田氏の暴力行為が発覚。岩田氏は学校から指導停止の判断が下され、現在は日本高野連の処分待ち「良い人間を育てたいと思っています。良いことも書いてください(笑)」 筆者は昨年1月5日に、大阪偕星学園の野球部監督に就任した岩田氏の初練習を取材している。大阪府富田林市の高台に位置する同校のグラウンドは岩田氏の出身校・PL学園の校舎からも近い。その日、こんな会話を交わした。「PL学園の校歌にある『羽曳野の聖丘』とはまさにこのあたり一帯のことを言います。不思議な縁を感じますね。単なる野球の技術を指導するだけではなく、良い人間を育てたいと思っています。(不祥事の報道ばかりではなく)良いことも書いてください(笑)」 岩田氏と最後に会ったのは今年の3月だ。花巻東高(岩手)との練習試合で花巻東のスラッガー・佐々木麟太郎が清宮幸太郎の持つ高校通算本塁打記録に並ぶ111本目のホームランを放ったのでよく覚えている。花巻東のOBが大阪偕星学園の寮監を務めていたことから実現した練習試合のようだった。 大阪偕星学園の野球部はこの夏、大阪大会の準々決勝にまで進出し、不祥事からの立て直しが進んでいるように見えていた。しかしその矢先、岩田氏自身の暴力が明るみに出たのだ。 岩田氏本人の責任はもちろんだが、ここまで不祥事が続けば学校の体質そのものにも疑問を感じざるを得ない。 今回の岩田氏の件に関して理事長の息子で、学校経営の実務を任されている太田尚樹専務に電話を入れた時も、問題の核心に触れることはなかった。 学校は今後の対応として、以下のようなコメントを出している。「本校としましては、指導の現場での暴力行為は、どのような経緯・関係性があろうと看過できるものではないと考えております。今後も継続して、コンプライアンスを徹底すると共に対話を重んじた学校作りを目指しています」(梶本校長) しかし「対話を重んじる」と言いながらも、野球部での不祥事がSNSなどで発覚して対処に追われる事態になったのは今回のケースだけではない。大阪偕星学園が自浄作用を取り戻す日は来るのだろうか。(柳川 悠二)
2021年1月 野球部コーチだった水落雄基氏のセクハラ行為が発覚3月 野球部の新監督に就任した長谷部元伸氏のパワハラが問題化。日本高等学校野球連盟(高野連)への報告が遅れたことで、野球部部長が1カ月の謹慎処分を受ける7月 長谷部監督の財布から現金数十万が盗まれる盗難事件が発覚。高野連から「厳重注意」を受ける。10月 野球部の1年生に対する同学年部員の集団イジメが発覚11月 学校の宿泊授業において、野球部の1年生4人による喫煙が発覚11月 野球部の2年生3人、1年生1人の喫煙があいついで発覚
2022年1月 新監督に岩田徹氏が就任1月 前監督の山本セキ氏が給付金詐欺で逮捕11月 岩田氏による暴力行為が行われる
2023年8月 SNSによって岩田氏の暴力行為が発覚。岩田氏は学校から指導停止の判断が下され、現在は日本高野連の処分待ち
筆者は昨年1月5日に、大阪偕星学園の野球部監督に就任した岩田氏の初練習を取材している。大阪府富田林市の高台に位置する同校のグラウンドは岩田氏の出身校・PL学園の校舎からも近い。その日、こんな会話を交わした。
「PL学園の校歌にある『羽曳野の聖丘』とはまさにこのあたり一帯のことを言います。不思議な縁を感じますね。単なる野球の技術を指導するだけではなく、良い人間を育てたいと思っています。(不祥事の報道ばかりではなく)良いことも書いてください(笑)」 岩田氏と最後に会ったのは今年の3月だ。花巻東高(岩手)との練習試合で花巻東のスラッガー・佐々木麟太郎が清宮幸太郎の持つ高校通算本塁打記録に並ぶ111本目のホームランを放ったのでよく覚えている。花巻東のOBが大阪偕星学園の寮監を務めていたことから実現した練習試合のようだった。 大阪偕星学園の野球部はこの夏、大阪大会の準々決勝にまで進出し、不祥事からの立て直しが進んでいるように見えていた。しかしその矢先、岩田氏自身の暴力が明るみに出たのだ。 岩田氏本人の責任はもちろんだが、ここまで不祥事が続けば学校の体質そのものにも疑問を感じざるを得ない。 今回の岩田氏の件に関して理事長の息子で、学校経営の実務を任されている太田尚樹専務に電話を入れた時も、問題の核心に触れることはなかった。 学校は今後の対応として、以下のようなコメントを出している。「本校としましては、指導の現場での暴力行為は、どのような経緯・関係性があろうと看過できるものではないと考えております。今後も継続して、コンプライアンスを徹底すると共に対話を重んじた学校作りを目指しています」(梶本校長) しかし「対話を重んじる」と言いながらも、野球部での不祥事がSNSなどで発覚して対処に追われる事態になったのは今回のケースだけではない。大阪偕星学園が自浄作用を取り戻す日は来るのだろうか。(柳川 悠二)
「PL学園の校歌にある『羽曳野の聖丘』とはまさにこのあたり一帯のことを言います。不思議な縁を感じますね。単なる野球の技術を指導するだけではなく、良い人間を育てたいと思っています。(不祥事の報道ばかりではなく)良いことも書いてください(笑)」
岩田氏と最後に会ったのは今年の3月だ。花巻東高(岩手)との練習試合で花巻東のスラッガー・佐々木麟太郎が清宮幸太郎の持つ高校通算本塁打記録に並ぶ111本目のホームランを放ったのでよく覚えている。花巻東のOBが大阪偕星学園の寮監を務めていたことから実現した練習試合のようだった。
大阪偕星学園の野球部はこの夏、大阪大会の準々決勝にまで進出し、不祥事からの立て直しが進んでいるように見えていた。しかしその矢先、岩田氏自身の暴力が明るみに出たのだ。
岩田氏本人の責任はもちろんだが、ここまで不祥事が続けば学校の体質そのものにも疑問を感じざるを得ない。
今回の岩田氏の件に関して理事長の息子で、学校経営の実務を任されている太田尚樹専務に電話を入れた時も、問題の核心に触れることはなかった。 学校は今後の対応として、以下のようなコメントを出している。「本校としましては、指導の現場での暴力行為は、どのような経緯・関係性があろうと看過できるものではないと考えております。今後も継続して、コンプライアンスを徹底すると共に対話を重んじた学校作りを目指しています」(梶本校長) しかし「対話を重んじる」と言いながらも、野球部での不祥事がSNSなどで発覚して対処に追われる事態になったのは今回のケースだけではない。大阪偕星学園が自浄作用を取り戻す日は来るのだろうか。(柳川 悠二)
今回の岩田氏の件に関して理事長の息子で、学校経営の実務を任されている太田尚樹専務に電話を入れた時も、問題の核心に触れることはなかった。
学校は今後の対応として、以下のようなコメントを出している。
「本校としましては、指導の現場での暴力行為は、どのような経緯・関係性があろうと看過できるものではないと考えております。今後も継続して、コンプライアンスを徹底すると共に対話を重んじた学校作りを目指しています」(梶本校長)
しかし「対話を重んじる」と言いながらも、野球部での不祥事がSNSなどで発覚して対処に追われる事態になったのは今回のケースだけではない。大阪偕星学園が自浄作用を取り戻す日は来るのだろうか。
(柳川 悠二)

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