「“神物件”だと思ったのに…」暴れる高齢者、多発するボヤ騒ぎに疲弊…元住人が語った団地生活の実情

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「認知症老人が公園占拠」「ボヤ騒ぎが多発」――。限界を迎えた高齢化で外国人も逃げていく!建物の老朽化や外国人住民との摩擦が取り沙汰されてきた団地。そんな「限界住宅」がさらなるカオスを迎えている。少子高齢化のあおりを受け、限界を超えた団地の実態とは――?◆「家族で住むには危険」元住人が語る団地の暮らし
古くから暮らす住人からすると「住めば都」でも、新規で入居した人にとっては「地獄」になるケースもある。
「家賃も安く、駅から徒歩5分以内と好立地。築年数は古いものの、外側も部屋の中もリフォームされており、2DKで家賃は破格の6万円。近くにスーパーや公園もあって“神物件”だと思い飛びついたのですが、住んでみるととんでもない部屋でした」
そう声を荒らげるのは本田正憲さん(仮名・40歳)。現在は、妻と小学生になったばかりの娘の3人暮らしで、今年の3月まで東京北西部にある団地に住んでいた。
「団地の入居者は高齢者のひとり暮らしが多く、同世代や子どもは非常に少ない。娘を公園に連れていっても、認知症っぽいおばあちゃんがブツブツ言いながらブランコを漕いでいて怖くて近づけません。
公園にはベンチがいくつか設置されていて、毎朝決まった時間に同じ人が座っています。こちらがそのベンチに座っていると、おじいちゃんに『なんで勝手に俺の席に座っているんだ!』と怒鳴られたこともありました」
◆火事やボヤの多さも団地の特徴
危険なのは外だけではない。24時すぎに何回も呼び鈴が鳴り、ドアを開けてみるとパジャマ姿のまま徘徊しているおばあちゃんがいた、なんてこともあったそうだ。
「元気なときは同じ階の部屋を次々とピンポンダッシュをしてました(苦笑)。なぜかうちの前で体育座りをしていることもあって本当に怖かったです」
だが、何より本田さんが衝撃を受けたのは、火事やボヤの多さだった。
「週2回の頻度で敷地内に消防車が来るんです。火元となった同じ棟の高齢者が亡くなってしまうことも。うちは共働きなので、子どもをひとりで留守番させるには、このボヤの多さは許容できない。ひとり暮らしなら悪くない場所だけど、家族で住むには危なすぎます」
本田さん一家は、娘の小学校入学のタイミングで郊外のアパートに引っ越したという。
◆闇バイトの“叩き”に加担する団地2世外国人
また、外国人の入居率が高い団地では、彼らとの共生が課題となっている。一方、団地住まいの外国人夫婦のもとで生まれた“団地2世”の子どもたちは、親世代よりも地域社会に溶け込みやすい。
「そんな“団地生まれ団地育ち”の外国人が地元の不良とつるみ闇バイトに手を出す事例もあります」
そう語るのは、20年近く団地をルポし続けるライターのA氏だ。
「地方や首都圏の郊外の一部地域の不良コミュニティが、半グレ組織の構成員から闇バイトの仕事を請けるケースもあります。その不良グループに属する外国人、特にブラジルや中国・東北地方の血を引く体格のいい若者は“叩き”要員として、拉致や強盗などの実行犯に駆り出されることが多い」
叩き要員は闇バイトの中でも逮捕リスクが高く、一度お縄にかかると地元でその名が知れ渡る。それが「外国人はガラが悪い」という印象に繋がっている。
「治安が悪いというイメージを払拭しようと、積極的に地域住民と交流を図る団地もあります。外国人入居率の高い、ある団地が祭りを企画したら、地元の神輿隊のメンバーが全員入れ墨だらけで、ガラの悪さが余計に際立ってしまったという逸話もありますが(笑)」
多文化共生の道は険しい。
◆朽ちていく団地を再生させる手立てとは?

このまま団地が崩壊していくのを黙って見ているしかないのか。団地の存続について、住宅・土地アナリストの米山秀隆氏は次のように語る。
「空室の増加から、外国人や低所得者を呼び込む団地が増えていますが、ただ、こうした団地は最終段階の一歩手前のステージにあります。彼らからの需要がある限りは生きながらえることができますが、本質的な解決にはなりません」
本格的な再生のためには、「脱高齢化に向け、ファミリーや若者に入居してもらい、住民の新陳代謝を促すしか方法はない」と米山氏は言う。
「ほとんどの団地は郊外にあるため、決して立地はよくありません。しかし、敷地面積的に建て替えの余裕がある団地も多く、リノベーションをするなどしてまずは行政が積極的に若者世代の人口誘致に動くべきです」
◆住民が自分事化しなければ再生の見込みは薄い
とはいえ、郊外は人口減少が著しく、一筋縄ではいかない。その上で、「プラスアルファの魅力づくりのために、住民の協力が必要不可欠です」と語る。
「かつて地域に公共施設がほとんどなく、“陸の孤島”と呼ばれていた神奈川県横浜市のドリームハイツがいいモデルケースです。住民が一丸となって行政を動かし、保育園を開設したり、高齢者の見守りサービスや訪問介護事業を手がけたりしています。それでも着実に高齢化の波は押し寄せていますが、こうした活動があるだけで地域の活性が促されるため、少しでも努力していくしかありません」
結局は、高齢化が進む中で、いかに自分たちでマネジメントできるかどうかだ。
「マンションの事例ではありますが、京都府にある西京極大門ハイツでは管理組合を法人化し、20年以上前から自主管理を行っています。高齢化によって管理組合が機能していない団地も多いなか、再生維持を自分事にしていくことも大切です」
とはいえ「ほとんどの団地は廃墟となり、自然に帰すしかない」と米山氏。そうならないためにも、行政の適切な判断が待たれる。
◆それでも団地に住みたい!首都圏、2DK・家賃6万円の魅力
今回の企画であらゆる団地を訪れた女性記者(34歳)だが、絶望的な話を取材しながらも、1周回って住みたくなってきた。現在は文京区内の駅徒歩2分、家賃7万円の極狭物件にひとり暮らししているが、団地ならもっと安い家賃で広い部屋に住めるからだ。
20代のころ、初期費用0円の脱法シェアハウス(東中野・家賃5万円)に入居し、謎の咳が止まらなくなった経験を思い返すと、同程度の初期費用なら国が運営する団地のほうが安全だろう。
試しにUR都市再生機構の公式HPで「家賃6万円以内・30岼幣紂廚両魴錣廼室検索をすると、東京と神奈川だけでも30部屋ヒットした。たとえば、西武新宿線・花小金井駅からバス8分の滝山団地は家賃6万円の2DK(40屐法
寝食分離が叶うだけでなく、仕事部屋まで設えることができる。リモートワークも食事も化粧もひとつの机で強いられている現状に比べると、羨ましすぎる間取りだ。団地も条件次第ではアリかもしれない。
【住宅ジャーナリスト 榊 淳司氏】京都府出身。分譲マンションを中心とした不動産業界に詳しい。近著に『すべてのマンションは廃墟になる』(イースト・プレス)
【住宅・土地アナリスト 米山 秀隆氏】新潟県出身。大阪経済法科大学経済学部学部長。富士通総研などを経て現職。な著書に『限界マンション』(日経BP)など
取材・文/週刊SPA!編集部

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