ペットショップ「クーアンドリク」の杜撰すぎる契約書 「広告の3万3250円がなぜ…」「断ったはずの生命保障制度に加入させられていた」

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前編では、ペットショップ大手「Coo&RIKU」(クーアンドリク)で子犬を購入したA子さんの告発を紹介した。A子さんが購入した子犬は、引き渡し直後に、腸内にいる寄生虫が原因で瀕死の状態に陥ったが、店側は「うちにいた時は元気だった。治療費は支払えない。交換ならできる」などと無責任な対応をし続けたのである。後編では、昨年9月に同社で子犬を購入後、契約をめぐってトラブルになったB子さんの話を聞いていく。B子さんが見せてくれた契約書は”謎”に満ちていた。広告で打っていた「3万3250円」はいったいどこへ……。 ***
【写真】病院に運ばれたとき、寄生虫に体を蝕まれ瀕死の状態だった「アモ」。点滴につながれた姿が痛々しい広告の「3万3250円」が店舗に行くと「10万円台後半」に… B子さんは昨年、10年以上連れ添った愛犬2匹を立て続けに失った。ひどいペットロスに陥っていると、娘が「また新しいワンちゃんを迎えたら?」と勧めてきた。全国に216店舗を展開するペットショップ「Coo&RIKU」 娘が見せてきたのは江戸川店(東京都・江戸川区)の新規開店の電子チラシで、左上の一番目立つところに、娘が勧めるチワワの写真が載っていた。値段は3万3250円。娘はこの値段ならば、自分でも買ってあげられると母に勧めてきたのである。 昨年9月23日、江戸川店のオープンとなる10時と同時に、まず娘は店に電話を入れ、「このチラシのチワワは購入できますか?」と確認した。店員は「大丈夫です。来店してください」。その際、値段も確認すると「7万5000円くらいの値段を提示してきた」(B子さんの娘)。なぜ3万3250円と広告に打ってあるのに、倍の値段を提示されたかというと、チラシに〈あんしん半額プラン〉と銘打ってあったからだと思われる。 A子さんのケースでも説明したが、クーアンドリクでは、「100カ月の生命保障制度」と5年縛りの「フード定期プラン」からなる「あんしん半額プラン」に加入すると、生体価格が約50%値引きされるサービスがある。 値引き前の値段が7万5000円なのだと納得した二人は、電話の後、店舗を訪れた。いざ店員は向き合うと「広告の子犬はいない。別のチワワならいる」と言ってきたという。不可解な契約書 だが、B子さんは店員が連れてきたチワワを気に入った。そこで契約しようと値段の確認をしていると、店員は驚くべき金額を電卓で示してきた。「10万円代後半くらいの金額だった」(B子さん)。さらに、「この犬は値引きの対象外です」と言われたという。 わざわざ電話で確認してから、自宅から1時間以上かけて出向いた二人は「話が違う」と怒って、一度店を出た。A子さんはそのまま帰ろうと娘に言ったが、娘は「納得いかない」と店の外からもう一度電話を入れた。 改めてクレームを入れると、電話の向こうで担当者が上司と話し合い、対応の不手際を認めて、「当初、お伝えした額の7万5000円でご案内します」と言ってきた。ならばと、二人は店舗に戻って契約に入った。 だが、いざ契約書を交わすとき、この「7万5000円の話はどこかへ消えていってしまった」というのである。B子さんが振り返る。「契約はiPadで行われるのですが、一つひとつの契約を交わすたびに、3~4人の担当者が入れ替わり立ち替わりやってきて、説明がよくわからないのです」 B子さんが見せてくれた契約書にあった支払いの総額は、17万1938円。彼女はケージやペットシートなど4万3433円分の備品を同時に購入しており、犬そのものにかかった費用は12万8505円だ。内訳は、生体価格 12万9800円安心パック料金(+追加ワクチン接種料金) 7万2000円消費税 2万180円ここから下記の値引きが入る。フード定期プラン割引金額 - 8万円あんしん半額プラン割引金額 -1万6225円断ったはずの「100カ月生命保障制度」に加入させられていた 確かにどこをどう引き算しても、広告にあった「3万3250円」や店員が言った「7万5000円」の根拠となる数字は見当たらない。だが、B子さんは総額の支払い自体には納得して契約を交わしてしまった。 では、その後なぜトラブルになったのか。原因は後日引き落としが始まった、「フード定期プラン」と「100カ月の生命保障制度」だ。きっかけは、2カ月に一度送られてくる定期フードの「量」だった。「4.6キロも送られてくるのですが、ウチの子の体重は2.3キロなんで、1日に35グラムくらいしか食べません。半分以上も餌が余ってしまうのです。だから、私は店に電話して、『3キロに減らしてくれないか』とお願いしました。値段(2カ月で8753円)はそのままでいいとも言った。ゴミにするのももったいないので残りはそちらにいる犬に食べさせてほしいと」(同) だが、店の担当者は、「『お客様の購入した餌なんで、それはできません。そちらで廃棄してください』の一点張りなんです。『だったら解約します』と言ったら、解約金が8万円かかると言ってきた。そもそも、フード定期プランに加入するとき、担当者は『餌の量は変えられます』とハッキリ言っていたのです」(同) その後、よく調べると、断ったはずの「100カ月生命保障制度」に加入していて、月々3000円(初回のみ5990円)が3カ月間、引き落とされていたことにも気づいた。「これについては契約の時、『この子が死んだら、代わりの犬なんていりません』とはっきり加入を断っていました」(同) いつの間にか、都合のいい契約を結ばされていたーー。B子さんは昨年12月から、解約金なしでの定期フードプランの解約などを求め、昨年12月から店の担当者、本部のカスタマーサービスとも何度も話し合った。消費者センターにも間に入ってもらったが、現在に至るまで解決に至っていない。 話し合いの中でクーアンドリク側は、「娘さんに納得していただいていました」と言ってきたという。だが、娘はこう語る。「確かに、最初は私の方が一生懸命話を聞いていました。ただ、途中からは、対応した店員が『ご契約をするのはお母様の方なので…』と母に対して話をしていたので、私はあまり話を聞いていません」 そして、生命保障制度への加入を希望したかどうかについては、こう答えた。「母が『代わりのワンちゃんは入りません』と言っていたのは間違いありません。話全体を聞いていないので、実際にサインしたかどうかまではわからない。ただ、トラブルになった後、母から契約書を見せてもらって、アレって気づいたんです」 それは値引き額であった。上記したように契約書には1万6225円とあった。「そんな値引きのために、36カ月間、月々3000円の掛け金を払うのはおかしいと思うんです。母は別途、ペット保険会社の医療保険にも加入しましたし」他にもトラブルが起きている? B子さんはこう憤る。「最初からデタラメな案内をして怪しい契約を結ばせたにもかかわらず、契約書を盾にフードサービスの解約金を要求するなんておかしいでしょう。しかも、店側は、ワクチン証明書を引き渡し時にくれなかったんです。3カ月ほど経って去勢手術した時にそれに気づき、電話してからようやく送ってもらいましたが、それがなかったので、手術時に私は病院で『メディカルチェック代』5000円も余計に負担することになりました」(同) ちなみに、定期フードプランについては前編で紹介したA子さんもこう訴える。「ウチの子の場合は家に来てすぐ入院して病院で出されたフードに慣れてしまったため、クーアンドリクから送られてくるフードは全く口をつけないのです。本部のサービスセンターに電話して事情を説明して、解約できないかと相談したものの、解約金8万円を支払うしか方法がないと言われた。向こうが病気の犬を購入させてきたために起きたトラブルなのに、なぜこっちが泣き寝入りばかりしなければならないのか納得できません」(A子さん) ちなみに、A子さんの元に送られてくる定期フードも5.4キロ分。愛犬の体重は3キロ弱で、もしこの餌を食べていたとしても、B子さん同様、大量に余ってしまうという。 クーアンドリクはB子さんとのトラブルについて、書面で下記のように回答した。〈B子様とは、当初、直接やり取りをさせていただき、その後、消費者センターを介したやりとりをさせていただいておりました。2022年12月26日にご相談があって以降、消費者センター経由も含め複数回にわたるやりとりをさせていただいておりましたが、途中で消費者センター経由の連絡がB子様より途絶えてしまっていました(註・B子さんによると、「消費者センターに電話がつながりにくかった」などの理由) 今回、このようなお申し入れをいただいたことで、弊社の説明責任という観点から足りていなかった部分があったのではないかと反省しておりますが、弊社としても消費者センターを通じてB子様のご意向にそった協議を進めさせていただいておりましたので、今回のお申し入れについては非常に困惑しております。 今後につきましては、B子様のご要望を踏まえて個別にご対応させていただく所存です〉 国民消費者センターによると、ペットやペットフードの購入をめぐるトラブルはこの数年増加の一途を辿っている。2019年度は2462件、20年度は2883件、21年度は3309、22年度は3772件。この中には、ペットフードの定期購入や生命保障制度の加入をめぐるトラブルも含まれているが、担当者は「業者が特定できる事案については従来からお答えしていない」と話す。 クーアンドリクは1999年の創業。ペットブームに乗じて20数年で全国に216店舗を展開するほど急成長した最大手である。一方、ネットやSNS上には、今回紹介した話と同様の契約トラブルを訴える書き込みが散見される。急拡大の陰で、強引な営業手法が蔓延していた可能性があるのではないか。デイリー新潮取材班
B子さんは昨年、10年以上連れ添った愛犬2匹を立て続けに失った。ひどいペットロスに陥っていると、娘が「また新しいワンちゃんを迎えたら?」と勧めてきた。
娘が見せてきたのは江戸川店(東京都・江戸川区)の新規開店の電子チラシで、左上の一番目立つところに、娘が勧めるチワワの写真が載っていた。値段は3万3250円。娘はこの値段ならば、自分でも買ってあげられると母に勧めてきたのである。
昨年9月23日、江戸川店のオープンとなる10時と同時に、まず娘は店に電話を入れ、「このチラシのチワワは購入できますか?」と確認した。店員は「大丈夫です。来店してください」。その際、値段も確認すると「7万5000円くらいの値段を提示してきた」(B子さんの娘)。なぜ3万3250円と広告に打ってあるのに、倍の値段を提示されたかというと、チラシに〈あんしん半額プラン〉と銘打ってあったからだと思われる。
A子さんのケースでも説明したが、クーアンドリクでは、「100カ月の生命保障制度」と5年縛りの「フード定期プラン」からなる「あんしん半額プラン」に加入すると、生体価格が約50%値引きされるサービスがある。
値引き前の値段が7万5000円なのだと納得した二人は、電話の後、店舗を訪れた。いざ店員は向き合うと「広告の子犬はいない。別のチワワならいる」と言ってきたという。
だが、B子さんは店員が連れてきたチワワを気に入った。そこで契約しようと値段の確認をしていると、店員は驚くべき金額を電卓で示してきた。「10万円代後半くらいの金額だった」(B子さん)。さらに、「この犬は値引きの対象外です」と言われたという。
わざわざ電話で確認してから、自宅から1時間以上かけて出向いた二人は「話が違う」と怒って、一度店を出た。A子さんはそのまま帰ろうと娘に言ったが、娘は「納得いかない」と店の外からもう一度電話を入れた。
改めてクレームを入れると、電話の向こうで担当者が上司と話し合い、対応の不手際を認めて、「当初、お伝えした額の7万5000円でご案内します」と言ってきた。ならばと、二人は店舗に戻って契約に入った。
だが、いざ契約書を交わすとき、この「7万5000円の話はどこかへ消えていってしまった」というのである。B子さんが振り返る。
「契約はiPadで行われるのですが、一つひとつの契約を交わすたびに、3~4人の担当者が入れ替わり立ち替わりやってきて、説明がよくわからないのです」
B子さんが見せてくれた契約書にあった支払いの総額は、17万1938円。彼女はケージやペットシートなど4万3433円分の備品を同時に購入しており、犬そのものにかかった費用は12万8505円だ。内訳は、
生体価格 12万9800円安心パック料金(+追加ワクチン接種料金) 7万2000円消費税 2万180円
ここから下記の値引きが入る。
フード定期プラン割引金額 - 8万円あんしん半額プラン割引金額 -1万6225円
確かにどこをどう引き算しても、広告にあった「3万3250円」や店員が言った「7万5000円」の根拠となる数字は見当たらない。だが、B子さんは総額の支払い自体には納得して契約を交わしてしまった。
では、その後なぜトラブルになったのか。原因は後日引き落としが始まった、「フード定期プラン」と「100カ月の生命保障制度」だ。きっかけは、2カ月に一度送られてくる定期フードの「量」だった。
「4.6キロも送られてくるのですが、ウチの子の体重は2.3キロなんで、1日に35グラムくらいしか食べません。半分以上も餌が余ってしまうのです。だから、私は店に電話して、『3キロに減らしてくれないか』とお願いしました。値段(2カ月で8753円)はそのままでいいとも言った。ゴミにするのももったいないので残りはそちらにいる犬に食べさせてほしいと」(同)
だが、店の担当者は、
「『お客様の購入した餌なんで、それはできません。そちらで廃棄してください』の一点張りなんです。『だったら解約します』と言ったら、解約金が8万円かかると言ってきた。そもそも、フード定期プランに加入するとき、担当者は『餌の量は変えられます』とハッキリ言っていたのです」(同)
その後、よく調べると、断ったはずの「100カ月生命保障制度」に加入していて、月々3000円(初回のみ5990円)が3カ月間、引き落とされていたことにも気づいた。
「これについては契約の時、『この子が死んだら、代わりの犬なんていりません』とはっきり加入を断っていました」(同)
いつの間にか、都合のいい契約を結ばされていたーー。B子さんは昨年12月から、解約金なしでの定期フードプランの解約などを求め、昨年12月から店の担当者、本部のカスタマーサービスとも何度も話し合った。消費者センターにも間に入ってもらったが、現在に至るまで解決に至っていない。
話し合いの中でクーアンドリク側は、「娘さんに納得していただいていました」と言ってきたという。だが、娘はこう語る。
「確かに、最初は私の方が一生懸命話を聞いていました。ただ、途中からは、対応した店員が『ご契約をするのはお母様の方なので…』と母に対して話をしていたので、私はあまり話を聞いていません」
そして、生命保障制度への加入を希望したかどうかについては、こう答えた。
「母が『代わりのワンちゃんは入りません』と言っていたのは間違いありません。話全体を聞いていないので、実際にサインしたかどうかまではわからない。ただ、トラブルになった後、母から契約書を見せてもらって、アレって気づいたんです」 それは値引き額であった。上記したように契約書には1万6225円とあった。
「そんな値引きのために、36カ月間、月々3000円の掛け金を払うのはおかしいと思うんです。母は別途、ペット保険会社の医療保険にも加入しましたし」
B子さんはこう憤る。
「最初からデタラメな案内をして怪しい契約を結ばせたにもかかわらず、契約書を盾にフードサービスの解約金を要求するなんておかしいでしょう。しかも、店側は、ワクチン証明書を引き渡し時にくれなかったんです。3カ月ほど経って去勢手術した時にそれに気づき、電話してからようやく送ってもらいましたが、それがなかったので、手術時に私は病院で『メディカルチェック代』5000円も余計に負担することになりました」(同)
ちなみに、定期フードプランについては前編で紹介したA子さんもこう訴える。
「ウチの子の場合は家に来てすぐ入院して病院で出されたフードに慣れてしまったため、クーアンドリクから送られてくるフードは全く口をつけないのです。本部のサービスセンターに電話して事情を説明して、解約できないかと相談したものの、解約金8万円を支払うしか方法がないと言われた。向こうが病気の犬を購入させてきたために起きたトラブルなのに、なぜこっちが泣き寝入りばかりしなければならないのか納得できません」(A子さん)
ちなみに、A子さんの元に送られてくる定期フードも5.4キロ分。愛犬の体重は3キロ弱で、もしこの餌を食べていたとしても、B子さん同様、大量に余ってしまうという。
クーアンドリクはB子さんとのトラブルについて、書面で下記のように回答した。
〈B子様とは、当初、直接やり取りをさせていただき、その後、消費者センターを介したやりとりをさせていただいておりました。2022年12月26日にご相談があって以降、消費者センター経由も含め複数回にわたるやりとりをさせていただいておりましたが、途中で消費者センター経由の連絡がB子様より途絶えてしまっていました(註・B子さんによると、「消費者センターに電話がつながりにくかった」などの理由)
今回、このようなお申し入れをいただいたことで、弊社の説明責任という観点から足りていなかった部分があったのではないかと反省しておりますが、弊社としても消費者センターを通じてB子様のご意向にそった協議を進めさせていただいておりましたので、今回のお申し入れについては非常に困惑しております。
今後につきましては、B子様のご要望を踏まえて個別にご対応させていただく所存です〉
国民消費者センターによると、ペットやペットフードの購入をめぐるトラブルはこの数年増加の一途を辿っている。2019年度は2462件、20年度は2883件、21年度は3309、22年度は3772件。この中には、ペットフードの定期購入や生命保障制度の加入をめぐるトラブルも含まれているが、担当者は「業者が特定できる事案については従来からお答えしていない」と話す。
クーアンドリクは1999年の創業。ペットブームに乗じて20数年で全国に216店舗を展開するほど急成長した最大手である。一方、ネットやSNS上には、今回紹介した話と同様の契約トラブルを訴える書き込みが散見される。急拡大の陰で、強引な営業手法が蔓延していた可能性があるのではないか。
デイリー新潮取材班

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