傷が深く見える写真の撮り方指導…ビッグモーター「幹部の不当人事」と「損保ジャパンとの本当の関係」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

和泉伸二新社長(54)のもと、再スタートを切った『ビッグモーター』。不正体質からの脱却へ向け動き始めたが、顧客や社員から失った信用は簡単には戻らない。
営業部門の現役若手社員が悲惨な現状を明かす。
「客足は遠のく一方で、いまは10分の1程度まで減少しています。会社から今後の見通しについての連絡はなく、退職希望者も急増中です。会社は引き留めに動くべく、ノルマを達成しなくても4~6月の歩合給の平均額を、半年間は支払うと通達しました。しかし、それでもどれだけ残るのか……。僕も近々、退職届を出そうか迷っています」
過剰なノルマで不正体質の原因を作ったとされる前社長の兼重宏行氏(71)、息子で副社長を務めていた宏一氏(35)の退陣により、立て直しが進んでいるように見えたが……。ブロック長も経験したことがあるビッグモーターの元幹部は「膿はまだ出しきれていない」と断言する。そこには宏一前副社長とともに経営を牛耳っていた「ロイヤルファミリー」と呼ばれる幹部たちの存在があるという。
「伊津美哲士常務取締役(48)と大塚昇二取締役(43)の二人は、宏一さんの下でビッグモーターを実質的に支配してきました。不当な人事や過剰なノルマにも、二人の意向が反映されていたと聞きます。なかでも酷(ひど)かったのが『環境整備点検』です。僕はよく車での送迎を担当しましたが、二人は宏一さんがいるかどうかで全然対応が違うんです。
宏一さんが来るときは、二人は現場で重箱の隅をつつくような指摘を行い、宏一さんにアピールします。一方で宏一さんがいない時は、部下に任せて自分たちは座っているだけ。お客様でも社員でもなく宏一さんを見て仕事をする人たちでした。
宏一さんも小柄でプライドが高いことから『コナン君』と社内で揶揄(やゆ)されていたくらいなので、イエスマンがいることは、悪い気分ではなかったのでしょう。取締役にこの二人が残る限り、本当の意味で体質改善が果たせるとは思えません」
3人の暴走は業務外にも及んだという。
「環境整備点検のあとは、基本的に店長が接待をするのですが、訪れた店の料理が気に食わないだけで降格対象になります。僕もかつて、緊急事態宣言中にもかかわらず飲み会の場所を探すように指示されたことがありました。宏一さんの名前を間違えてホテルを予約していた店長が、翌日の環境整備点検のあとに降格させられたこともありましたね」(元幹部)
追及の余波は、不正請求を見抜けなかった損害保険会社にも及んでいる。とりわけ批判にさらされているのが損保ジャパンだ。前身企業の日本興亜損害保険に宏一氏が在籍していたことが明らかになっており、また’11年以降、合計37人が出向しているなど深い関係性がうかがえる。
そんな中、驚きの証言も出ている。中部地方の店舗で店長経験もあるビッグモーターの元社員が明かす。
「損保ジャパンの方から、うちの板金部門のスタッフが直接、車両の傷の被害を酷く見せるための写真の撮り方のレクチャーを受けていました。たとえば、研磨で消える傷は保険対象外になるケースがあります。そういうものに『この角度から撮れば傷が深く見えるでしょ』といった指導をしていました」
両者の蜜月関係について、疑惑が深まる証言はほかにもある。保険金支払いを担当していた損保ジャパンの元社員は「数十万円水増し請求されているとわかっても指摘できる風土ではなかった」と語る。
「ビッグモーターは損保ジャパンにとって超大口の取引先です。それに加えて、たとえ現場が水増しを見抜けたとしても、指摘できたかと言われたら難しい。というのも、ウチでも上司の意に反することがあれば大勢の前や飲み会で叱責されたり、雑務を押し付けられるといったパワハラ紛(まが)いのことがありました。その中で声を上げるのは厳しいと思います」
これらの疑惑について損保ジャパンへ質問したところ、カメラアングルの指示については「事案が特定できず、事実関係の確認ができません」と返答があった。またパワハラ疑惑については、個別面談や各種アンケートを徹底しているとしたうえで、「社員の様々な受け止めがあるという前提に立ち、声を拾えるよう努めてまいります」と回答した。
顧客を騙し、利益だけを追求したビッグモーターの姿勢は決して許されるものではない。徹底した調査が求められる。
『FRIDAY』2023年8月18・25日号より

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。