クラスに1人が「性的自撮り」送信経験 子供を懐柔するグルーミング、刑罰新設も拭えぬ懸念

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わいせつ目的を隠し、交流サイト(SNS)で未成年を手なずける「オンライングルーミング」。
大人の欲望が子供たちに襲い掛かり、専門家の調査によれば、40人学級に1人の割合で性的な自撮り画像を送った経験があるという。もっとも、その手口は巧妙。6月成立の改正刑法では、こうした行為を罰する「面会要求罪(通称・グルーミング罪)」が新設されたが、抑止効果は期待できるのか。
1分足らずでDM相次ぐ
14歳の中学3年生の女子生徒で、甘いものが好きな受験生-。性暴力被害者を支援するNPO法人「ぱっぷす」(東京)は令和3年、こんな設定のツイッターアカウントを開設した。目的はオンライングルーミングに関する実態調査だ。
《友達がほしい》
つぶやくと、1分もしないうちに10人近くからダイレクトメッセージ(DM)が届いた。《お金に困っていませんか》、《下心ありのエロ垢だけど、大丈夫かな?》。?14歳?だと知りつつ、性的な画像を要求するDMも目立ったという。
「本当に危ないのは一見いい人のアカウント」と、ぱっぷすの担当者。つまりはこういうことだ。
勉強や学校での人間関係など、たわいもないDMのやりとりをまめに重ね、好印象を得る。信頼関係を築くと「顔を見たい。写真を送ってみて」などと比較的手軽な要求に移行。その後、ネット上での拡散をちらつかせて揺さぶりをかけ、要求をエスカレートさせる-。
懐柔しつつ、判断が追い付いていない中で一気に付け込むグルーミングの手口だ。早ければ、画像や動画を送らせるまで1週間程度で完了するといい、保護者が気付いたときには、被害に遭っている子供も少なくない。
巧妙化する手口
警察庁の統計によると、昨年1年間にSNSを利用して犯罪に巻き込まれた18歳未満の子供は1732人。ただ、追手門学院大の桜井鼓(つつみ)准教授(犯罪心理学)は「氷山の一角に過ぎない」と指摘する。
桜井氏が令和3~4年、約1万8千人を対象に行った大規模調査では、18歳未満で性的な自撮り画像を送信した経験があるのは全体の2・4%と、40人学級に1人の割合。そのうち画像送信をしたことがあり、ネット上で出会った人からの身体的な被害を訴えた子供も2割いたという。
一方、画像を送るにあたって「脅された」と回答したのは1割に満たず、「子供を取り込む巧妙さが際立っている」(桜井氏)。
手口が巧妙化する背景には、加害者が手当たり次第に接触を試みようとしている現状がある。ぱっぷすによると、加害者は多数の子供と大量のやり取りを同時並行で行う。その中で子供心をつかむテクニックを身に付けていくというのだ。
「自身で守る術も必要」
もはや今日の性犯罪の入り口とも言うべきオンライングルーミング。改正刑法で新設された面会要求罪は、わいせつ目的での16歳未満との面会を罰する。面会や、性的な画像をSNSなどで送るよう求める行為は1年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金とした。
被害者支援に関わる川本瑞紀弁護士(第一東京弁護士会)は「実際に面会しなくても罪が成立する意義は大きい」と評価。法的には、警察によるおとり捜査も可能になるとし、犯罪抑止に一定の効果があるとする。
懸念が完全に払拭されたわけではない。桜井氏の調査では、家族や友人関係で孤独感を抱えている子供が被害に遭う傾向が見られ、「心の穴に付け込むのがグルーミング」と強調。「SNSが全盛の現代、自分自身を守る術を身に付けてもらう教育も必要だ」と語る。(花輪理徳)

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