門扉付き校門ない小中学校の敷地内が「抜け道」化、市内さらに4校…市教委「生活道として定着」

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島根県大田市立五十猛小学校で1月、敷地内を抜け道として利用した軽乗用車に男児2人がはねられ重軽傷を負った事故で、敷地内が同様の抜け道になっている市立小中学校がほかに4校あることが、市教育委員会の調査でわかった。
市教委は「いずれも生活道として定着しており、部外者の立ち入りを禁止するのは開かれた学校との理念に反する」として、地元住民に利用の自粛や最徐行を呼びかける方針だ。(中村申平)
事故は1月12日に発生。昼休み中に鬼ごっこをして遊んでいた男児2人がはねられ、左脚を骨折するなどの重軽傷を負った。運転していた男性(19)は事故直後、駆けつけた大田署員に「敷地内を抜け道として走った」という趣旨の説明をしていた。
同校には、敷地の内外を示す門扉付きの校門がなく、過去にも地元住民らによる通り抜けが問題になり、一時は利用の自粛を求める看板を設置した。今回の事故直後、再び看板を設置したほか、校舎とグラウンドの間に横断歩道を設け、注意喚起の文書を町内全戸に配布したという。
市教委は事故を受け、市内に計21校ある全小中学校を対象に、緊急点検を実施した。この結果、大田、久屋、仁摩の各小と大田西中の4校が出入り口が2か所以上あり、校内が一般車両の抜け道として利用されている実態があることが分かった。
市教委によると、4校はいずれも門扉付きの校門がなく、地元住民らが生活道の一部として利用。市教委は門扉付きの校門を新設したり、通行証を発行したりする対策を検討したものの、「地域に根ざし、開かれた学校という構想から外れる」として、利用時の最徐行を呼びかけることにしたという。
一方、仁摩小の抜け道は約150メートルと区間が長く、通行量も多いことから、市教委は「危険度が高い」と判断。路面を緑色にしてドライバーに注意を促す「グリーンベルト」を導入するなどの対策工事に取りかかることを決めた。関連経費約220万円を盛り込んだ補正予算案を市議会6月定例会に提案する方針だ。
仁摩小の現地調査に立ち会った市交通安全協会の塩谷裕志支部長(66)は「『開かれた学校』という理念は守られるべきで、住民も立ち入り禁止は望んではいない。今後は、通り抜けをする車が速度を落としているかどうか、地域が見ていく必要がある」と警鐘を鳴らす。
市教委総務課の縄和仁課長は「子どもらの安全を考えれば禁止の方が良いが、地元住民の利便性も無視できない」と主張。その上で「市教委としてできる限りの対策を講じ、交通安全の機運を高めていきたい」としている。

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