飼育放棄され野生化したアライグマ、新潟県で捕獲数急増…「触ったりエサ与えたりしないで」

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特定外来生物に指定されているアライグマによる農作物被害などへの懸念が、新潟県内で高まっている。
アライグマの捕獲数は上越地域を中心に2018年以降急増し、捕獲地域は県内全域に広がりつつある。県は防除実施計画を来月上旬にもまとめる方針で、「県内からの完全排除」を目標に対策を急ぐ。
■農作物被害を懸念
アライグマはアニメの影響でペットとして人気を集めたが、飼育放棄などで野生化した。
雑食性のため、農林水産業への影響は大きい。1979年にアライグマが定着したとされる北海道では農業被害額が約1億2000万円(2020年度)に上る。希少な生物も構わず食べるため、生態系も乱す。
県内は「侵入初期段階」(県環境対策課)とされているが、今後急速に生息域を広げ、定着する恐れがある。実際、県内で初めてアライグマが捕獲された2010年以降、捕獲数は年0~1匹だったが、18年は6匹、19年は8匹、20年は10匹と近年で急増した。
■広範囲で痕跡確認
捕獲数の急増を受けて、県は22年度にアライグマの痕跡調査を行い、上越地域を中心に県内の広範囲で痕跡を確認した。調査結果を受け、県は3月、他県の先行事例や有識者の意見を参考に、「県アライグマ防除実施計画」の素案を作成した。県は意見公募を経て計画をまとめる。
アライグマの捕獲は、野生鳥獣の保護と被害防止の両立が求められる「鳥獣保護管理法」に基づいて行われる。今回の計画で、特定外来生物による被害防止を目的とした「外来生物法」に基づいた捕獲が可能となり、より正確に生息実態を把握し、早期の対応を打ち出せるという。
■生息レベルで対応
計画は、地域の状況に合わせた対応を実施するため、生息レベルに合わせ、各市町村を「重点防除地域」「警戒防除地域」「侵入防止地域」の三つに区分した。
最もレベルが高い「重点防除地域」には上越、糸魚川、妙高の3市が指定され、捕獲強化の一環として、県が所有する箱わなを優先的に貸し出す。
新潟大の箕口(みぐち)秀夫教授(動物生態学)は「県内はまだ対応が間に合う段階。今、徹底的に排除しないとあっという間に個体数も被害も増える」と指摘する。また、遭遇した場合は、「絶対に触ったりエサを与えたりせず、すぐに自治体に連絡してほしい」と呼びかけている。
◆特定外来生物=生態系を乱す、人に害を与える、農林水産業へ被害を及ぼすといった恐れがある外国産の生き物を国が指定する。輸入や譲り渡し、飼養などで厳しい規制がかかる。指定された生き物は今年4月現在、計156種類。アライグマは2005年に指定された。

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