G7広島サミット 危険すぎた空撮生中継 ゼレンスキー大統領の警護は適切だったのか

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

G7広島サミット(先進7か国首脳会議)が21日に閉幕した。初日にG7首脳がそろって原爆慰霊碑に献花する歴史的スタートを切り、2日目にはロシアと戦争中のウクライナのゼレンスキー大統領が訪日して参加するなど、議長を務めた岸田文雄首相も「歴史的」と胸を張った。一方で、ゼレンスキー氏の警護をめぐって、複数の専門家から疑問視する声も上がっている。
トピックの多い広島サミットだった。初日の朝からG7首脳が原爆慰霊碑に献花し、午後にはゼレンスキー大統領が訪日して直接出席することが判明。実際に2日目にはゼレンスキー氏が広島空港から宇品島の会場に到着するまで空撮中継され、日本中に中継された。最終日には日韓首脳会談も行って無事に閉幕できたことで、岸田政権は大幅な支持率アップに加え、今後ありそうな衆院解散総選挙で追い風が吹くと見られている。
まさに岸田首相が言う「歴史的」なサミットとなったが、一方で要人警護の専門家たちからは厳しい指摘が相次いだ。それが2日目のゼレンスキー氏の会場入りまでの空撮中継だ。
現在、ロシアと戦っているゼレンスキー氏は、ロシアの斬首作戦リスト筆頭。それだけにその命を守るため最大限の配慮が求められたが、ゼレンスキー氏の乗った車がどこを走っているのかテレビで生中継されてしまったのだ。
これにはウクライナ出身の国際政治学者グレンコ・アンドリー氏もツイッターで「一応、世界最大の殺人集団に狙われている人なので、そこまでしなくてもいいのでは」と苦言。SNSでも「命を狙われている人が、こんな堂々と居場所を伝えられて大丈夫か!?」といった声が多数上がった。
要人警護の観点から、ゼレンスキー氏の居場所が長時間特定される状況を作ってしまったのは問題だと話すのは、民間シークレットサービスを運営する警察OBだ。
「非常に危険な状態だったと言わざるを得ない。日本は安全と過信しているが、もうそんな時代ではない。昨年の安倍元首相、先月の岸田首相、ともにまさかという事態が起きたのに、いまだ平和ボケしている。ましてや今回はロシアが狙うゼレンスキー氏で、日本にはロシアのスパイも少なくない。惨事が起きて別の意味で歴史的サミットになっていたかもしれない」
広島空港から広島市内までの高速道路は山間部も多く、同氏によれば「山間部で徹底した警備態勢を敷くことは困難で、狙われるならそこだっただろう」と指摘した。
三戦警護士事務所代表の丸茂卓氏は「要人警護において、警護対象者がどこにいるのか知られる状況は好ましくない。警護レベルが下がるのは必然で、難しい警護を強いられる。一方で、警護対象者から要望が出る場合もあり、今回はゼレンスキー氏が、あえて公開を望んだ可能性も否定できない」と指摘。その上で「結果論になりがちな要人警護だが、うまくいったからといって警護態勢がよかったとは限らない。ゼレンスキー氏の移動が生中継されたことに問題がなかったか洗い出すべき」と話した。
広島サミット開催中はデモ行進も多く、中心地の本通では過激派組織が警官隊と衝突して逮捕者が出る事案も発生。今やローンオフェンダーによるテロも増えている時代。「終わり良ければすべて良し」ではなく、キッチリした総括が求められる。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。