奈良公園の鹿、「おじぎ」が減った謎 コロナの意外な影響

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奈良公園(奈良市)の鹿が観光客らから餌の鹿せんべいをもらう時にする「おじぎ」の回数が、新型コロナウイルスの感染拡大期に減っていたことが奈良女子大などの調査で明らかになった。調査したメンバーは、外出自粛で人間と接する機会が減った鹿が、それまで習慣づけられていた仕草を忘れてしまったのではないかとみている。
奈良に笠をかぶった鹿? 幻想的な写真に18万「いいね」 遊佐陽一・理学部教授(動物生態学)や博士後期課程2年の上原春香さんらのグループが発表した。

グループは新型コロナの感染拡大で人間の活動が停滞したことが、野生動物にどのような影響を与えたのかを研究。奈良公園の鹿が人と関わる中で独自にするようになった「おじぎ行動」に着目し、研究の題材にした。 観光客が鹿せんべいを与える機会が多い東大寺南大門周辺など3カ所で、集まってくる鹿のおじぎの回数を調査した。奈良女子大は新型コロナが流行する前から公園に生息する鹿の数や行動を調べており、蓄積したデータも生かした。 その結果、人間が鹿せんべいを見せている間におじぎをした回数は、新型コロナ前(2016年9月~17年1月)は1頭当たり平均10・2回だったが、コロナ禍(20年6月~21年6月)は6・4回に減少した。コロナ禍の間だけをみても、観光客の増減に合わせておじぎの回数が増えたり減ったりした。 3カ所に来た鹿の数は、インバウンド(訪日外国人)が増加した15~19年は増加した。19年は平均167頭だったが、コロナ禍の20年は平均65頭に急減した。 遊佐教授は「人間の活動の停滞が、すぐに鹿の行動に影響した。おじぎをしても鹿せんべいという『報酬』を得られないことや、人と会わない間におじぎを忘れてしまったことが原因ではないか。今後、観光客が増えれば、おじぎも増える」と予想し、「新型コロナは人と野生動物の関係を見直す機会になった」と話している。【上野宏人、木谷郁佳】
遊佐陽一・理学部教授(動物生態学)や博士後期課程2年の上原春香さんらのグループが発表した。
グループは新型コロナの感染拡大で人間の活動が停滞したことが、野生動物にどのような影響を与えたのかを研究。奈良公園の鹿が人と関わる中で独自にするようになった「おじぎ行動」に着目し、研究の題材にした。
観光客が鹿せんべいを与える機会が多い東大寺南大門周辺など3カ所で、集まってくる鹿のおじぎの回数を調査した。奈良女子大は新型コロナが流行する前から公園に生息する鹿の数や行動を調べており、蓄積したデータも生かした。
その結果、人間が鹿せんべいを見せている間におじぎをした回数は、新型コロナ前(2016年9月~17年1月)は1頭当たり平均10・2回だったが、コロナ禍(20年6月~21年6月)は6・4回に減少した。コロナ禍の間だけをみても、観光客の増減に合わせておじぎの回数が増えたり減ったりした。
3カ所に来た鹿の数は、インバウンド(訪日外国人)が増加した15~19年は増加した。19年は平均167頭だったが、コロナ禍の20年は平均65頭に急減した。
遊佐教授は「人間の活動の停滞が、すぐに鹿の行動に影響した。おじぎをしても鹿せんべいという『報酬』を得られないことや、人と会わない間におじぎを忘れてしまったことが原因ではないか。今後、観光客が増えれば、おじぎも増える」と予想し、「新型コロナは人と野生動物の関係を見直す機会になった」と話している。【上野宏人、木谷郁佳】

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