殺された暴力団組長がラーメン店主となった背景とは?元格闘家の一面も 「右目下」狙撃か?小川泰平氏が解説

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神戸市長田区のラーメン店で22日に店主の50代男性が銃撃されて殺害された事件で、兵庫県警長田署捜査本部は遺体を司法解剖した結果、死因が拳銃のようなもので頭部を撃たれたことによる脳幹部の断裂と明らかにした。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は25日、デイリースポーツの取材に対し、犯行の手口など事件の詳細や、ラーメン店主が現役の暴力団組長だったという衝撃の事実について、その背景を解説した。
県警捜査本部によると、死亡したラーメン店主は、特定抗争指定暴力団山口組弘道会傘下組織の余嶋学組長(57)。22日午前11時ごろ、ラーメン店の厨房付近で倒れている余嶋組長を、買い出しから戻ってきた女性従業員が発見した。
死因は銃弾が脳幹を貫通したことによる脳損傷で、ほぼ即死状態とみられる。店内から薬きょうのようなものが見つかっており、県警では鑑定を進めるとともに、余嶋組長が何者かに拳銃などで撃たれた可能性が高いとみて捜査している。
小川氏は「当初、頭部に外傷がない。CT画像で頭部に銃弾が確認出来るとの情報から、(犯人が)銃口を店主の口内に入れて発射したのだと思っていましたが、24日の司法解剖の結果、射入口は右目の下だということが分かりました」と指摘した。
その一つの根拠として、小川氏は「余嶋組長がかつて『地下格闘技』をやっていた元格闘家で、最近も常にトレーニングをしていた」ことによる「抵抗力の強さ」を挙げた。
同氏は「余嶋組長のインスタグラムなどに本人の写真が出ていましたが、筋肉隆々です。防犯カメラには店内に入る不審な人物が1人しか映っていないのですが、1人で口の中に銃口を入れることが果たして可能なのかと不自然さもありました。しかも店内は争った形跡もない。口の中に銃口を入れようとして相手を押さえつければ、かなりの力で抵抗されて、店内はもっと乱雑になっているはずです。そうなっていないというところから、口内に銃口を入れた説には疑問が残り、不意に顔面(右目下)を狙った可能性も考えられます」と分析した。
今回の事件で注目されたのは、現役の暴力団組長がラーメン店の店主として厨房(ちゅうぼう)に立ち、メニューを提供していたこと。常連客もおり、グルメサイトでは好評価も多く、「なぜ?」という声がネットにあふれている。
これまで、暴力団関係の事件や関係者への取材を重ねてきた小川氏は「ラーメン店の店主が組長だったというよりも、暴力団組長がラーメン店のオーナーだったと私は思います。この世界での一般的な話として、暴力団組長が自分名義ではない飲食店を妻や家族、愛人などにやらせることはよくあることです。夜のお店だけではなく、特に地方に行くと、こういう一般的な食堂などをやらせていることもあるので、今回の神戸のケースが特に珍しいとは思いません。余嶋組長の場合は、別にいた店長が辞めたため、今年1月から自らが厨房に立っていたと聞いています」と背景を説明した。
余嶋組長は自身のインスタグラムにラーメンをはじめ、食べ歩いてきた料理の写真を投稿していたことも報じられている。自身もラーメンに造詣が深い小川氏は「この組長は非常に『ラーメン愛』が強い人で、その研究熱心さや仕込み等は、現地取材で、出入り業者の方や古くからの知人等から聞いています」と付け加えた。
今後、抗争などに発展する可能性はあるのだろうか。小川氏は「抗争の可能性を否定する材料は現時点でありません。一方で、殺害方法等から考えると、拳銃を使用し、1人になった店内で犯行に及んでいる点を見ても、強い殺意があるのは明らかです。現時点では今後の捜査を見守るしかありません。余嶋組長が率いた『湊興業』は構成員がいなくなり、現在は“1人親方”の組です。この事件によって、1つの組がなくなることになるのではないかと思います」と指摘した。

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