歯科医おススメ歯ブラシは毛先が「3列」「コンパクトヘッド」で硬さは「ふつう」。朝はおおまかでも、夜だけは頑張って丁寧にみがいてほしいワケ

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2023年3月13日から、マスクの着用は屋外・屋内にかかわらず「個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本」となりました。コロナ禍での長いマスク生活により人前で歯を見せる機会が減ったことで、お口のケアがおろそかになってしまっていた方もいるのではないでしょうか。歯科医の照山裕子先生は、人生100年時代の歯を守り、“食べる力”を長く保ちたい人に役立つ情報を、わかりやすく発信しています。その照山先生いわく、朝きちんと歯をみがいていれば、昼食後にみがかなくても、夜で挽回できるそうで――。
【イラスト】歯みがきは1日2回で大丈夫!? いつ磨くのが正解?* * * * * * *歯みがきの目的一生、自分の歯で食べたい――それを実現するために、最も必要なセルフケアは、歯ブラシやフロス、歯間ブラシなどを用いたオーラルケア、いわば歯みがきです。ですが、診療現場で患者さんと話していると、その知識は人によって差があると実感します。まず、歯みがきの頻度。「昼食後は必ず歯をみがかなければならない」と思っている方も多いようですが、必ずしもそうではありません。歯みがきの目的は、歯に付着した食べかすを、キレイに除去すること。食べかすをそのままにすると、それをエサに虫歯菌や歯周病菌といった細菌が増えます。そして、細菌同士が結びつき、繭のような膜を形成し、バイオフィルムになります。以前は、歯についたぬめりのことを歯垢あるいはプラークと呼んでいましたが、最近では、歯だけでなく歯ぐきの表面や舌の上など、口の中のさまざまな部分に発生するぬめりを「バイオフィルム」と呼びます。重要度を理解して、夜を重視したメリハリケアをバイオフィルムは約4~12時間で形成され、時間の経過とともに厚みが増し、病原性が高まります。『“食べる力”を落とさない!新しい「歯」のトリセツ』(著:照山裕子/日経BP)やがて唾液中の成分と反応し、歯石になると自分では除去できなくなりますが、ここまでには約2日ほどの猶予があります。バイオフィルムが病原性を持たないうちに落とす習慣をつけるというのが、1日の歯みがき回数の考え方です。つまり、朝きちんとみがいていれば、昼食後に歯をみがかなくても、夜で挽回できます。この考え方が一般的になってきました。そのため、1日3回漫然と歯みがきをするというよりも、重要度を理解したケアに変える発想が大切です。寝る前にしっかり歯についた汚れを落とせば、細菌の増殖を最小限に抑えることもできます。みがいた感が強いからと、「かため」は選ばないみなさんは普段、どんな歯ブラシを使っていますか?市販の歯ブラシには、さまざまな種類があります。毛の並びが3列や4列のものや、小さなコンパクトヘッドのものがあります。一定期間歯みがきのスキルを確認してから、みがき残しの程度などによって歯ブラシのタイプを変えることもあります(写真提供:Photo AC)また、商品によって異なりますが、たいていは毛の硬さが「やわらかめ」「ふつう」「かため」の3つのタイプに分かれています。選び方がわからず、適当に選んでいる方が多いかもしれませんが、歯ブラシは毎日使う私たちの歯のケアの“パートナー”。ぜひ、自分の歯に合ったものを選んでください。男性はみがいたときの感触で「かため」の毛先を好む印象がありますが、「かため」の毛先で、みがく力が強過ぎると、歯ぐきを傷つけ、痛めてしまうことがあります。歯科医に勧められているものがなければ、毛先が3列のものかコンパクトヘッドで、毛先の硬さは「ふつう」を選びましょう。歯ぐきが腫れている場合には、「やわらかめ」がお勧めです。私たち歯科医や歯科衛生士が患者さんにブラッシング指導をする際は、大きさが2cmほどのコンパクトなヘッドで、毛先が平らにそろえられている歯ブラシを最初に勧めます。そのうえで一定期間歯みがきのスキルを確認してから、みがき残しの程度などによって歯ブラシのタイプを変えることもあります。今日の汚れを明日に持ち越さない歯ブラシは月に一度、決まった日に交換すると決めておくといいでしょう。月に一度の交換ですから、どんどん違う商品を試すのも手です。なお、できるだけ短時間で汚れを取りたい場合には、ヘッドが大きく幅広、毛は太くて短いものが適しています。慌ただしい朝は、大まかにみがけるこうしたブラシを使ってもかまいません。オーラルケアは、日々ストレスなく続けられることも重要です。しかし、ざっとみがいただけでは取れない歯と歯の間や歯周ポケットの中に潜むバイオフィルムを破壊するには、ブラシの毛先で細部へ到達することが必要になります。そのためには、ヘッドが小さく、毛先が細いタイプで隅々まで丁寧に届かせる必要があります。せめて夜だけはこういったタイプで頑張ってみがいてください。バイオフィルムは時間が経てば経つほど病原性を発揮しますから1日1回は口内をリセットするイメージです。今日の汚れを明日に持ち越さない心がけが、10年後の「健口」をつくります。※本稿は、『“食べる力”を落とさない!新しい「歯」のトリセツ』(日経BP)の一部を再編集したものです。
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一生、自分の歯で食べたい――
それを実現するために、最も必要なセルフケアは、歯ブラシやフロス、歯間ブラシなどを用いたオーラルケア、いわば歯みがきです。
ですが、診療現場で患者さんと話していると、その知識は人によって差があると実感します。
まず、歯みがきの頻度。「昼食後は必ず歯をみがかなければならない」と思っている方も多いようですが、必ずしもそうではありません。
歯みがきの目的は、歯に付着した食べかすを、キレイに除去すること。
食べかすをそのままにすると、それをエサに虫歯菌や歯周病菌といった細菌が増えます。そして、細菌同士が結びつき、繭のような膜を形成し、バイオフィルムになります。
以前は、歯についたぬめりのことを歯垢あるいはプラークと呼んでいましたが、最近では、歯だけでなく歯ぐきの表面や舌の上など、口の中のさまざまな部分に発生するぬめりを「バイオフィルム」と呼びます。
バイオフィルムは約4~12時間で形成され、時間の経過とともに厚みが増し、病原性が高まります。
『“食べる力”を落とさない!新しい「歯」のトリセツ』(著:照山裕子/日経BP)
やがて唾液中の成分と反応し、歯石になると自分では除去できなくなりますが、ここまでには約2日ほどの猶予があります。
バイオフィルムが病原性を持たないうちに落とす習慣をつけるというのが、1日の歯みがき回数の考え方です。
つまり、朝きちんとみがいていれば、昼食後に歯をみがかなくても、夜で挽回できます。
この考え方が一般的になってきました。そのため、1日3回漫然と歯みがきをするというよりも、重要度を理解したケアに変える発想が大切です。
寝る前にしっかり歯についた汚れを落とせば、細菌の増殖を最小限に抑えることもできます。
みなさんは普段、どんな歯ブラシを使っていますか?
市販の歯ブラシには、さまざまな種類があります。毛の並びが3列や4列のものや、小さなコンパクトヘッドのものがあります。
一定期間歯みがきのスキルを確認してから、みがき残しの程度などによって歯ブラシのタイプを変えることもあります(写真提供:Photo AC)
また、商品によって異なりますが、たいていは毛の硬さが「やわらかめ」「ふつう」「かため」の3つのタイプに分かれています。
選び方がわからず、適当に選んでいる方が多いかもしれませんが、歯ブラシは毎日使う私たちの歯のケアの“パートナー”。ぜひ、自分の歯に合ったものを選んでください。
男性はみがいたときの感触で「かため」の毛先を好む印象がありますが、「かため」の毛先で、みがく力が強過ぎると、歯ぐきを傷つけ、痛めてしまうことがあります。
歯科医に勧められているものがなければ、毛先が3列のものかコンパクトヘッドで、毛先の硬さは「ふつう」を選びましょう。歯ぐきが腫れている場合には、「やわらかめ」がお勧めです。
私たち歯科医や歯科衛生士が患者さんにブラッシング指導をする際は、大きさが2cmほどのコンパクトなヘッドで、毛先が平らにそろえられている歯ブラシを最初に勧めます。
そのうえで一定期間歯みがきのスキルを確認してから、みがき残しの程度などによって歯ブラシのタイプを変えることもあります。
歯ブラシは月に一度、決まった日に交換すると決めておくといいでしょう。月に一度の交換ですから、どんどん違う商品を試すのも手です。
なお、できるだけ短時間で汚れを取りたい場合には、ヘッドが大きく幅広、毛は太くて短いものが適しています。
慌ただしい朝は、大まかにみがけるこうしたブラシを使ってもかまいません。オーラルケアは、日々ストレスなく続けられることも重要です。
しかし、ざっとみがいただけでは取れない歯と歯の間や歯周ポケットの中に潜むバイオフィルムを破壊するには、ブラシの毛先で細部へ到達することが必要になります。
そのためには、ヘッドが小さく、毛先が細いタイプで隅々まで丁寧に届かせる必要があります。せめて夜だけはこういったタイプで頑張ってみがいてください。
バイオフィルムは時間が経てば経つほど病原性を発揮しますから1日1回は口内をリセットするイメージです。
今日の汚れを明日に持ち越さない心がけが、10年後の「健口」をつくります。
※本稿は、『“食べる力”を落とさない!新しい「歯」のトリセツ』(日経BP)の一部を再編集したものです。

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