【小林 一哉】静岡のリニア議論は「末期症状」…!致命的な誤りを認めた川勝知事の「新たな大問題」

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「山梨県内で行う調査ボーリングが『サイフォンの原理』で、静岡県内の地下水を山梨県内に流出させる」と、超自然現象の“珍説”を唱えた川勝平太知事は2023年3月28日の会見で、ようやく「サイフォンの原理は間違っていた」と誤りを認めた。その席で、「サイフォンの原理」に代わる静岡県内の地下水流出の新たな理由を説明した。ところが、こちらも「真っ赤な嘘」だった。
現代ビジネスの記事(「命より水」を貫き通す川勝知事の「傲慢」…静岡県のリニア議論がどうにもやばすぎる…!)で紹介した通り、川勝知事は2月28日の会見で、「山梨県内の調査ボーリングをするという差し迫った必要性は必ずしもない」と勝手に決めつけた上で、「調査ボーリングをやめろ」の根拠に、「山梨県側の断層および脆い区間が静岡県内の県境付近の断層と(地下深くで)つながっている。それゆえ、いわゆる『サイフォンの原理』で、静岡県内の地下水が流出してしまう懸念がある」と主張した。

静岡県の地下水が山梨県に流出する根拠とした「サイフォンの原理」を間違いと認めた川勝知事の3月28日会見(静岡県庁、筆者撮影)水などの液体を、高いところに上げてから、低いところに移すために用いる曲がった管を「サイフォン管」と呼ぶ。管内を完全に真空状態にして、圧力差を利用して、吸い上げ、低いほうに移すことが「サイフォンの原理」である。家庭用ストーブの石油ポンプを使った移し替えをはじめ、ダム湖から発電所まで配管内を真空にしてダム湖の水を吸い上げて発電に用いる時などに使う。「サイフォンの原理」が登場した背景には、県リニア担当の渡邉喜好参事が、JR東海の「地質縦断図」を調べていて、山梨県内の断層と地下約500メートルで静岡県側の斜めの大きな断層とつながっている地質縦断図を発見したことが大きな理由だ。ただし、“新発見”という地質縦断図も、JR東海が過去に県に提供したものである。JR東海の地質縦断図の断層を示す赤い斜線が上から下までつながっていて、まるで管のように見えるから、山梨県内の断層を掘削すると圧力が掛かり、地下深くの静岡県内の断層に影響を与え、静岡県内の地下水が山梨県内の断層に引っ張られると考えて、「サイフォンの原理」を思いついたのだろう。その上、JR東海がまるで情報隠しをしていると勘違いしたから、川勝知事は2月28日の会見で、「(JR東海は)断層がつながっているのに、つながっていない(地質縦断)図をつくって事実をねじ曲げた。つまり断層はつながっている」と曲解した上で、自信たっぷりに「サイフォンの原理」を持ち出して、静岡県内の地下水が山梨県内へ流出する根拠に挙げたのだ。現在の科学では解明できないJR東海は、これまでの山梨工区の調査ボーリングの結果を踏まえて、「静岡県内の地下水が大量に山梨県内に流入することは想定しがたい」と説明した上で、2月21日から山梨県内の断層とは遠く離れた地点から調査ボーリングを開始した。当然、山梨県内の断層へ到達したとしても、「静岡県内の水資源に影響はない」と予測している。また前方に湧水が予想される対策として、トンネル前方に一定区間を確保することで、工学的に対応するなどと説明している。 県は3月3日、調査ボーリングで大量の湧水量が発生する恐れがあり、適切な説明を求めるなどとする意見書をJR東海に送った。もし、万が一、調査ボーリングで大量の湧水が発生したとしても、山梨県内の湧水であり、静岡県がとやかく言える筋合いではないのだが、3月3日の時点では「サイフォンの原理」による静岡県内の地下水流出を信じ切っていたのだろう。県外流出の根拠に使ったJR東海の地質縦断図。赤い斜線の断層ゾーンが山梨県と静岡県で地下深くつながるので静岡県の地下水が抜けると川勝知事は主張している(JR東海の資料)このため、山梨県内の断層帯に到達した際、川勝知事の唱えた「サイフォンの原理」現象がはたして起きるのかどうかに注目が集まっていた。3月20日の県地質構造・水資源専門部会で、山梨県内の調査ボーリングが取り上げられた。JR東海は「一般論として調査ボーリングで水が出てくる懸念はわかる。水が出るというのは、(山梨県内の断層帯の)調査ボーリングによってサイフォンの原理が働くために起きる突発湧水のことか」と尋ねた。県は「その通りだ」と回答した。これに対して、丸井敦尚委員(産業技術総合研究所地質調査総合センター研究員)は「サイフォンは、例えば、2つのバケツがあって、雑巾か何かで高さを変えたときに、一方のバケツに水が集まるという考えだ。ここはサイフォンとは違う」と、県の見解をきっぱりと否定した。断層は真空状態の細長い管状の空洞ではない。温泉掘削のように垂直に断層を掘らない限り、圧力が掛かり上方に噴き出すなどありえない。もともと、JR東海の地質縦断図は現地踏査などで予測しただけで地中深くの状況まで解明したものではない。現在の科学ではそこまで解明できないのだ。「わたしだ。間違っていた」だから地中深くの断層ゾーンには破砕帯の帯水層だけでなく、粘土などの遮水層もあり、山梨県内の調査ボーリングによる圧力が掛かっても静岡県の地下深くの断層に影響を与える可能性は全く考えられない。 この2つの断層ゾーンでサイフォン作用が起きてしまえば、まさに超自然現象である。「世界最大級の断層地帯」が続く南アルプスの地下は超神秘的な事象が起きる“オカルト世界”になると、筆者は3月13日の現代ビジネス記事で指摘した。3月28日会見で、川勝知事とリニア担当の渡邉喜好参事は、丸井委員の名前を使って、訳の分からない静岡県の水が抜ける理由を説明した(筆者撮影)それどころか、これまで川勝知事の珍妙な主張でさえ支持してきた頼みの県専門部会が「サイフォンの原理」を完全に否定したのだ。このため、3月28日の知事会見で、テレビ静岡記者が「ちょうど1ヵ月前の会見で、『サイフォンの原理』を持ち出して、県内の地下水が流出する懸念があると表明されたが、この『サイフォンの原理』という珍妙な説を言い出したのは誰か?」と疑問を呈した。「わたしだ。間違っていた」と、川勝知事は「サイフォンの原理」を誤りだとあっさり認めた。さらに記者が「間違っていたことに対する(JR東海への)謝罪はないのか」と追及した。これに対して、川勝知事は「山梨県内の断層帯をボーリングすることにより、削孔された部分が1気圧となり、高圧の地下水が圧力の高いところへ流れ、静岡県内の地下水が抜けるおそれがある」、「掘っていけば極めて高い水圧があり、その圧力の違いによって水が流出するというのが正しいことだ」と記者の追及をごまかすように、「サイフォンの原理」に代わる新たな根拠を述べたてたのだ。“1気圧”というふだん生活する空気の圧力で、高圧の地下水があったとしても、静岡県の地下水が抜ける理由にはならない。記者が「専門家に確認したのか」と質すと、川勝知事は「(森下祐一)専門部会長から説明をいただいた」として、さらに丸井委員の名前も加えた。記者が「丸井さんは多分、そうは言っていないのでは」と疑問を呈したが、川勝知事は「(森下)部会長と丸井先生がそうおっしゃった」と言い張り、知事の隣で説明した渡邊参事が回答を補強した。さらに川勝知事は「間違いなく静岡県の地下水が流出する理由がある」、「静岡県の地下水が抜ける恐れがある」を繰り返した。末期症状のリニア議論もともと1月25日の県専門部会で、森下部会長のみが「山梨県内の調査ボーリングで静岡県の地下水が抜けてしまうリスクを冒してまで県境付近で工事を進める意義はない」と静岡県の“御用学者”の役割を果たしていた。 さらに、3月20日の県専門部会で、丸井委員が「サイフォンの原理」を否定すると、森下部会長は「実際に高圧が掛かっていて水が出てくれば、それは高圧水となる。今の時点で心配はないが、高圧水が出てくる可能性はある。断層があるということは透水係数が非常に大きいからだ」と主張した。この高圧水が川勝知事の新たな根拠となったようだが、どう考えても、高圧水で静岡県の地下水が抜けてしまう根拠にはならない。筆者は直接、丸井委員に連絡して確認した。丸井委員は「静岡県の地下水が抜けてしまう理由など申し上げていない。もし、問題の断層で10という透水係数が掛かったとしても水がじわじわ出てくる程度でリニア工事のリスクにはならない。もし高圧水が出ても、10年掛かってわずかの水が到達する程度であり、その間にリニアトンネルが出来ていれば何の支障もない」と説明した。丸井委員は「サイフォンの原理」だけでなく、今回の川勝知事(森下部会長)の発言を否定してしまった。つまり、丸井委員の名前まで挙げて、静岡県の地下水が抜ける理由を説明した川勝知事は、記者会見の場で再び、真っ赤な嘘をついたことになる。今回のように、真っ赤な嘘をつく静岡県の化けの皮がはがされたとしてもまた新たな嘘を平気で並べ立て、静岡県はJR東海に不毛な議論を求める。ムダな時間ばかりが過ぎていき、リニア計画の一日も早い完成を望む人たちを裏切り続けるのだ。3月27日開催された大井川利水関係協議会同様に、静岡県のリニア議論は末期症状だ。最も不幸なのは“真実”を知らされない大多数の静岡県民である。
現代ビジネスの記事(「命より水」を貫き通す川勝知事の「傲慢」…静岡県のリニア議論がどうにもやばすぎる…!)で紹介した通り、川勝知事は2月28日の会見で、「山梨県内の調査ボーリングをするという差し迫った必要性は必ずしもない」と勝手に決めつけた上で、「調査ボーリングをやめろ」の根拠に、「山梨県側の断層および脆い区間が静岡県内の県境付近の断層と(地下深くで)つながっている。それゆえ、いわゆる『サイフォンの原理』で、静岡県内の地下水が流出してしまう懸念がある」と主張した。
静岡県の地下水が山梨県に流出する根拠とした「サイフォンの原理」を間違いと認めた川勝知事の3月28日会見(静岡県庁、筆者撮影)
水などの液体を、高いところに上げてから、低いところに移すために用いる曲がった管を「サイフォン管」と呼ぶ。管内を完全に真空状態にして、圧力差を利用して、吸い上げ、低いほうに移すことが「サイフォンの原理」である。家庭用ストーブの石油ポンプを使った移し替えをはじめ、ダム湖から発電所まで配管内を真空にしてダム湖の水を吸い上げて発電に用いる時などに使う。
「サイフォンの原理」が登場した背景には、県リニア担当の渡邉喜好参事が、JR東海の「地質縦断図」を調べていて、山梨県内の断層と地下約500メートルで静岡県側の斜めの大きな断層とつながっている地質縦断図を発見したことが大きな理由だ。ただし、“新発見”という地質縦断図も、JR東海が過去に県に提供したものである。
JR東海の地質縦断図の断層を示す赤い斜線が上から下までつながっていて、まるで管のように見えるから、山梨県内の断層を掘削すると圧力が掛かり、地下深くの静岡県内の断層に影響を与え、静岡県内の地下水が山梨県内の断層に引っ張られると考えて、「サイフォンの原理」を思いついたのだろう。
その上、JR東海がまるで情報隠しをしていると勘違いしたから、川勝知事は2月28日の会見で、「(JR東海は)断層がつながっているのに、つながっていない(地質縦断)図をつくって事実をねじ曲げた。つまり断層はつながっている」と曲解した上で、自信たっぷりに「サイフォンの原理」を持ち出して、静岡県内の地下水が山梨県内へ流出する根拠に挙げたのだ。
JR東海は、これまでの山梨工区の調査ボーリングの結果を踏まえて、「静岡県内の地下水が大量に山梨県内に流入することは想定しがたい」と説明した上で、2月21日から山梨県内の断層とは遠く離れた地点から調査ボーリングを開始した。当然、山梨県内の断層へ到達したとしても、「静岡県内の水資源に影響はない」と予測している。また前方に湧水が予想される対策として、トンネル前方に一定区間を確保することで、工学的に対応するなどと説明している。
県は3月3日、調査ボーリングで大量の湧水量が発生する恐れがあり、適切な説明を求めるなどとする意見書をJR東海に送った。もし、万が一、調査ボーリングで大量の湧水が発生したとしても、山梨県内の湧水であり、静岡県がとやかく言える筋合いではないのだが、3月3日の時点では「サイフォンの原理」による静岡県内の地下水流出を信じ切っていたのだろう。県外流出の根拠に使ったJR東海の地質縦断図。赤い斜線の断層ゾーンが山梨県と静岡県で地下深くつながるので静岡県の地下水が抜けると川勝知事は主張している(JR東海の資料)このため、山梨県内の断層帯に到達した際、川勝知事の唱えた「サイフォンの原理」現象がはたして起きるのかどうかに注目が集まっていた。3月20日の県地質構造・水資源専門部会で、山梨県内の調査ボーリングが取り上げられた。JR東海は「一般論として調査ボーリングで水が出てくる懸念はわかる。水が出るというのは、(山梨県内の断層帯の)調査ボーリングによってサイフォンの原理が働くために起きる突発湧水のことか」と尋ねた。県は「その通りだ」と回答した。これに対して、丸井敦尚委員(産業技術総合研究所地質調査総合センター研究員)は「サイフォンは、例えば、2つのバケツがあって、雑巾か何かで高さを変えたときに、一方のバケツに水が集まるという考えだ。ここはサイフォンとは違う」と、県の見解をきっぱりと否定した。断層は真空状態の細長い管状の空洞ではない。温泉掘削のように垂直に断層を掘らない限り、圧力が掛かり上方に噴き出すなどありえない。もともと、JR東海の地質縦断図は現地踏査などで予測しただけで地中深くの状況まで解明したものではない。現在の科学ではそこまで解明できないのだ。「わたしだ。間違っていた」だから地中深くの断層ゾーンには破砕帯の帯水層だけでなく、粘土などの遮水層もあり、山梨県内の調査ボーリングによる圧力が掛かっても静岡県の地下深くの断層に影響を与える可能性は全く考えられない。 この2つの断層ゾーンでサイフォン作用が起きてしまえば、まさに超自然現象である。「世界最大級の断層地帯」が続く南アルプスの地下は超神秘的な事象が起きる“オカルト世界”になると、筆者は3月13日の現代ビジネス記事で指摘した。3月28日会見で、川勝知事とリニア担当の渡邉喜好参事は、丸井委員の名前を使って、訳の分からない静岡県の水が抜ける理由を説明した(筆者撮影)それどころか、これまで川勝知事の珍妙な主張でさえ支持してきた頼みの県専門部会が「サイフォンの原理」を完全に否定したのだ。このため、3月28日の知事会見で、テレビ静岡記者が「ちょうど1ヵ月前の会見で、『サイフォンの原理』を持ち出して、県内の地下水が流出する懸念があると表明されたが、この『サイフォンの原理』という珍妙な説を言い出したのは誰か?」と疑問を呈した。「わたしだ。間違っていた」と、川勝知事は「サイフォンの原理」を誤りだとあっさり認めた。さらに記者が「間違っていたことに対する(JR東海への)謝罪はないのか」と追及した。これに対して、川勝知事は「山梨県内の断層帯をボーリングすることにより、削孔された部分が1気圧となり、高圧の地下水が圧力の高いところへ流れ、静岡県内の地下水が抜けるおそれがある」、「掘っていけば極めて高い水圧があり、その圧力の違いによって水が流出するというのが正しいことだ」と記者の追及をごまかすように、「サイフォンの原理」に代わる新たな根拠を述べたてたのだ。“1気圧”というふだん生活する空気の圧力で、高圧の地下水があったとしても、静岡県の地下水が抜ける理由にはならない。記者が「専門家に確認したのか」と質すと、川勝知事は「(森下祐一)専門部会長から説明をいただいた」として、さらに丸井委員の名前も加えた。記者が「丸井さんは多分、そうは言っていないのでは」と疑問を呈したが、川勝知事は「(森下)部会長と丸井先生がそうおっしゃった」と言い張り、知事の隣で説明した渡邊参事が回答を補強した。さらに川勝知事は「間違いなく静岡県の地下水が流出する理由がある」、「静岡県の地下水が抜ける恐れがある」を繰り返した。末期症状のリニア議論もともと1月25日の県専門部会で、森下部会長のみが「山梨県内の調査ボーリングで静岡県の地下水が抜けてしまうリスクを冒してまで県境付近で工事を進める意義はない」と静岡県の“御用学者”の役割を果たしていた。 さらに、3月20日の県専門部会で、丸井委員が「サイフォンの原理」を否定すると、森下部会長は「実際に高圧が掛かっていて水が出てくれば、それは高圧水となる。今の時点で心配はないが、高圧水が出てくる可能性はある。断層があるということは透水係数が非常に大きいからだ」と主張した。この高圧水が川勝知事の新たな根拠となったようだが、どう考えても、高圧水で静岡県の地下水が抜けてしまう根拠にはならない。筆者は直接、丸井委員に連絡して確認した。丸井委員は「静岡県の地下水が抜けてしまう理由など申し上げていない。もし、問題の断層で10という透水係数が掛かったとしても水がじわじわ出てくる程度でリニア工事のリスクにはならない。もし高圧水が出ても、10年掛かってわずかの水が到達する程度であり、その間にリニアトンネルが出来ていれば何の支障もない」と説明した。丸井委員は「サイフォンの原理」だけでなく、今回の川勝知事(森下部会長)の発言を否定してしまった。つまり、丸井委員の名前まで挙げて、静岡県の地下水が抜ける理由を説明した川勝知事は、記者会見の場で再び、真っ赤な嘘をついたことになる。今回のように、真っ赤な嘘をつく静岡県の化けの皮がはがされたとしてもまた新たな嘘を平気で並べ立て、静岡県はJR東海に不毛な議論を求める。ムダな時間ばかりが過ぎていき、リニア計画の一日も早い完成を望む人たちを裏切り続けるのだ。3月27日開催された大井川利水関係協議会同様に、静岡県のリニア議論は末期症状だ。最も不幸なのは“真実”を知らされない大多数の静岡県民である。
県は3月3日、調査ボーリングで大量の湧水量が発生する恐れがあり、適切な説明を求めるなどとする意見書をJR東海に送った。もし、万が一、調査ボーリングで大量の湧水が発生したとしても、山梨県内の湧水であり、静岡県がとやかく言える筋合いではないのだが、3月3日の時点では「サイフォンの原理」による静岡県内の地下水流出を信じ切っていたのだろう。
県外流出の根拠に使ったJR東海の地質縦断図。赤い斜線の断層ゾーンが山梨県と静岡県で地下深くつながるので静岡県の地下水が抜けると川勝知事は主張している(JR東海の資料)
このため、山梨県内の断層帯に到達した際、川勝知事の唱えた「サイフォンの原理」現象がはたして起きるのかどうかに注目が集まっていた。
3月20日の県地質構造・水資源専門部会で、山梨県内の調査ボーリングが取り上げられた。JR東海は「一般論として調査ボーリングで水が出てくる懸念はわかる。水が出るというのは、(山梨県内の断層帯の)調査ボーリングによってサイフォンの原理が働くために起きる突発湧水のことか」と尋ねた。県は「その通りだ」と回答した。
これに対して、丸井敦尚委員(産業技術総合研究所地質調査総合センター研究員)は「サイフォンは、例えば、2つのバケツがあって、雑巾か何かで高さを変えたときに、一方のバケツに水が集まるという考えだ。ここはサイフォンとは違う」と、県の見解をきっぱりと否定した。
断層は真空状態の細長い管状の空洞ではない。温泉掘削のように垂直に断層を掘らない限り、圧力が掛かり上方に噴き出すなどありえない。もともと、JR東海の地質縦断図は現地踏査などで予測しただけで地中深くの状況まで解明したものではない。現在の科学ではそこまで解明できないのだ。
だから地中深くの断層ゾーンには破砕帯の帯水層だけでなく、粘土などの遮水層もあり、山梨県内の調査ボーリングによる圧力が掛かっても静岡県の地下深くの断層に影響を与える可能性は全く考えられない。
この2つの断層ゾーンでサイフォン作用が起きてしまえば、まさに超自然現象である。「世界最大級の断層地帯」が続く南アルプスの地下は超神秘的な事象が起きる“オカルト世界”になると、筆者は3月13日の現代ビジネス記事で指摘した。3月28日会見で、川勝知事とリニア担当の渡邉喜好参事は、丸井委員の名前を使って、訳の分からない静岡県の水が抜ける理由を説明した(筆者撮影)それどころか、これまで川勝知事の珍妙な主張でさえ支持してきた頼みの県専門部会が「サイフォンの原理」を完全に否定したのだ。このため、3月28日の知事会見で、テレビ静岡記者が「ちょうど1ヵ月前の会見で、『サイフォンの原理』を持ち出して、県内の地下水が流出する懸念があると表明されたが、この『サイフォンの原理』という珍妙な説を言い出したのは誰か?」と疑問を呈した。「わたしだ。間違っていた」と、川勝知事は「サイフォンの原理」を誤りだとあっさり認めた。さらに記者が「間違っていたことに対する(JR東海への)謝罪はないのか」と追及した。これに対して、川勝知事は「山梨県内の断層帯をボーリングすることにより、削孔された部分が1気圧となり、高圧の地下水が圧力の高いところへ流れ、静岡県内の地下水が抜けるおそれがある」、「掘っていけば極めて高い水圧があり、その圧力の違いによって水が流出するというのが正しいことだ」と記者の追及をごまかすように、「サイフォンの原理」に代わる新たな根拠を述べたてたのだ。“1気圧”というふだん生活する空気の圧力で、高圧の地下水があったとしても、静岡県の地下水が抜ける理由にはならない。記者が「専門家に確認したのか」と質すと、川勝知事は「(森下祐一)専門部会長から説明をいただいた」として、さらに丸井委員の名前も加えた。記者が「丸井さんは多分、そうは言っていないのでは」と疑問を呈したが、川勝知事は「(森下)部会長と丸井先生がそうおっしゃった」と言い張り、知事の隣で説明した渡邊参事が回答を補強した。さらに川勝知事は「間違いなく静岡県の地下水が流出する理由がある」、「静岡県の地下水が抜ける恐れがある」を繰り返した。末期症状のリニア議論もともと1月25日の県専門部会で、森下部会長のみが「山梨県内の調査ボーリングで静岡県の地下水が抜けてしまうリスクを冒してまで県境付近で工事を進める意義はない」と静岡県の“御用学者”の役割を果たしていた。 さらに、3月20日の県専門部会で、丸井委員が「サイフォンの原理」を否定すると、森下部会長は「実際に高圧が掛かっていて水が出てくれば、それは高圧水となる。今の時点で心配はないが、高圧水が出てくる可能性はある。断層があるということは透水係数が非常に大きいからだ」と主張した。この高圧水が川勝知事の新たな根拠となったようだが、どう考えても、高圧水で静岡県の地下水が抜けてしまう根拠にはならない。筆者は直接、丸井委員に連絡して確認した。丸井委員は「静岡県の地下水が抜けてしまう理由など申し上げていない。もし、問題の断層で10という透水係数が掛かったとしても水がじわじわ出てくる程度でリニア工事のリスクにはならない。もし高圧水が出ても、10年掛かってわずかの水が到達する程度であり、その間にリニアトンネルが出来ていれば何の支障もない」と説明した。丸井委員は「サイフォンの原理」だけでなく、今回の川勝知事(森下部会長)の発言を否定してしまった。つまり、丸井委員の名前まで挙げて、静岡県の地下水が抜ける理由を説明した川勝知事は、記者会見の場で再び、真っ赤な嘘をついたことになる。今回のように、真っ赤な嘘をつく静岡県の化けの皮がはがされたとしてもまた新たな嘘を平気で並べ立て、静岡県はJR東海に不毛な議論を求める。ムダな時間ばかりが過ぎていき、リニア計画の一日も早い完成を望む人たちを裏切り続けるのだ。3月27日開催された大井川利水関係協議会同様に、静岡県のリニア議論は末期症状だ。最も不幸なのは“真実”を知らされない大多数の静岡県民である。
この2つの断層ゾーンでサイフォン作用が起きてしまえば、まさに超自然現象である。「世界最大級の断層地帯」が続く南アルプスの地下は超神秘的な事象が起きる“オカルト世界”になると、筆者は3月13日の現代ビジネス記事で指摘した。
3月28日会見で、川勝知事とリニア担当の渡邉喜好参事は、丸井委員の名前を使って、訳の分からない静岡県の水が抜ける理由を説明した(筆者撮影)
それどころか、これまで川勝知事の珍妙な主張でさえ支持してきた頼みの県専門部会が「サイフォンの原理」を完全に否定したのだ。
このため、3月28日の知事会見で、テレビ静岡記者が「ちょうど1ヵ月前の会見で、『サイフォンの原理』を持ち出して、県内の地下水が流出する懸念があると表明されたが、この『サイフォンの原理』という珍妙な説を言い出したのは誰か?」と疑問を呈した。
「わたしだ。間違っていた」と、川勝知事は「サイフォンの原理」を誤りだとあっさり認めた。さらに記者が「間違っていたことに対する(JR東海への)謝罪はないのか」と追及した。これに対して、川勝知事は「山梨県内の断層帯をボーリングすることにより、削孔された部分が1気圧となり、高圧の地下水が圧力の高いところへ流れ、静岡県内の地下水が抜けるおそれがある」、「掘っていけば極めて高い水圧があり、その圧力の違いによって水が流出するというのが正しいことだ」と記者の追及をごまかすように、「サイフォンの原理」に代わる新たな根拠を述べたてたのだ。
“1気圧”というふだん生活する空気の圧力で、高圧の地下水があったとしても、静岡県の地下水が抜ける理由にはならない。
記者が「専門家に確認したのか」と質すと、川勝知事は「(森下祐一)専門部会長から説明をいただいた」として、さらに丸井委員の名前も加えた。記者が「丸井さんは多分、そうは言っていないのでは」と疑問を呈したが、川勝知事は「(森下)部会長と丸井先生がそうおっしゃった」と言い張り、知事の隣で説明した渡邊参事が回答を補強した。さらに川勝知事は「間違いなく静岡県の地下水が流出する理由がある」、「静岡県の地下水が抜ける恐れがある」を繰り返した。
もともと1月25日の県専門部会で、森下部会長のみが「山梨県内の調査ボーリングで静岡県の地下水が抜けてしまうリスクを冒してまで県境付近で工事を進める意義はない」と静岡県の“御用学者”の役割を果たしていた。
さらに、3月20日の県専門部会で、丸井委員が「サイフォンの原理」を否定すると、森下部会長は「実際に高圧が掛かっていて水が出てくれば、それは高圧水となる。今の時点で心配はないが、高圧水が出てくる可能性はある。断層があるということは透水係数が非常に大きいからだ」と主張した。この高圧水が川勝知事の新たな根拠となったようだが、どう考えても、高圧水で静岡県の地下水が抜けてしまう根拠にはならない。筆者は直接、丸井委員に連絡して確認した。丸井委員は「静岡県の地下水が抜けてしまう理由など申し上げていない。もし、問題の断層で10という透水係数が掛かったとしても水がじわじわ出てくる程度でリニア工事のリスクにはならない。もし高圧水が出ても、10年掛かってわずかの水が到達する程度であり、その間にリニアトンネルが出来ていれば何の支障もない」と説明した。丸井委員は「サイフォンの原理」だけでなく、今回の川勝知事(森下部会長)の発言を否定してしまった。つまり、丸井委員の名前まで挙げて、静岡県の地下水が抜ける理由を説明した川勝知事は、記者会見の場で再び、真っ赤な嘘をついたことになる。今回のように、真っ赤な嘘をつく静岡県の化けの皮がはがされたとしてもまた新たな嘘を平気で並べ立て、静岡県はJR東海に不毛な議論を求める。ムダな時間ばかりが過ぎていき、リニア計画の一日も早い完成を望む人たちを裏切り続けるのだ。3月27日開催された大井川利水関係協議会同様に、静岡県のリニア議論は末期症状だ。最も不幸なのは“真実”を知らされない大多数の静岡県民である。
さらに、3月20日の県専門部会で、丸井委員が「サイフォンの原理」を否定すると、森下部会長は「実際に高圧が掛かっていて水が出てくれば、それは高圧水となる。今の時点で心配はないが、高圧水が出てくる可能性はある。断層があるということは透水係数が非常に大きいからだ」と主張した。この高圧水が川勝知事の新たな根拠となったようだが、どう考えても、高圧水で静岡県の地下水が抜けてしまう根拠にはならない。
筆者は直接、丸井委員に連絡して確認した。
丸井委員は「静岡県の地下水が抜けてしまう理由など申し上げていない。もし、問題の断層で10という透水係数が掛かったとしても水がじわじわ出てくる程度でリニア工事のリスクにはならない。もし高圧水が出ても、10年掛かってわずかの水が到達する程度であり、その間にリニアトンネルが出来ていれば何の支障もない」と説明した。丸井委員は「サイフォンの原理」だけでなく、今回の川勝知事(森下部会長)の発言を否定してしまった。つまり、丸井委員の名前まで挙げて、静岡県の地下水が抜ける理由を説明した川勝知事は、記者会見の場で再び、真っ赤な嘘をついたことになる。
今回のように、真っ赤な嘘をつく静岡県の化けの皮がはがされたとしてもまた新たな嘘を平気で並べ立て、静岡県はJR東海に不毛な議論を求める。ムダな時間ばかりが過ぎていき、リニア計画の一日も早い完成を望む人たちを裏切り続けるのだ。
3月27日開催された大井川利水関係協議会同様に、静岡県のリニア議論は末期症状だ。最も不幸なのは“真実”を知らされない大多数の静岡県民である。

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