長井秀和氏はなぜか不参加…信濃町で行われた“反創価学会デモ”に結集した600人の正体

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デイリー新潮は1月2日、ジャーナリストの藤倉善郎氏による「反ワクチン、統一教会=CIA説を叫ぶデモに長井秀和氏も加わるのか? 彼らの新たな標的は創価学会」というリポートを配信した。その中で紹介された“反創価学会デモ”が、1月15日に行われた。
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【写真をみる】圧巻の“600人デモ隊”で埋め尽くされた「公明党本部前」の様子住宅街で大音量の「音楽フェス」「国民騙すな、創価学会!」「税金払えよ、宗教法人!」「おじいちゃんの代からCIA!」「今すぐ解散、創価学会!」「今すぐ解散、公明党!」

1月15日、東京・信濃町にある公明党本部前の路上に約600人(主催者発表)が集結し、1時間半にわたって抗議活動が行われた。公明党本部 公明党本部があるのはJR信濃町駅のすぐ近く、住宅街のど真ん中だが、デモ隊は屋外音楽フェスなどで目にする大型のスピーカーを組み、大音量で音楽を流し、歌い、踊った。 デモを主催するのは、先にデイリー新潮の記事で紹介したNHK党幹事長の黒川敦彦氏が代表を務める「新しい国民の運動」である。黒川氏の呼びかけに応じ、各種陰謀論の曲者が集った。長井秀和氏は不参加 当初このデモには、お笑いタレントで創価学会2世の長井秀和氏が参加を表明していた。 長井氏は昨年12月、西東京市議選に立候補し、トップ当選を果たしている。応援演説には黒川氏をはじめ、この日のデモにも参加した幸福の科学・大川隆法氏の長男・宏洋氏が駆けつけた。 長井氏はデモの3日前にTwitterで不参加を表明。その理由は、創価学会から訴えられている裁判への影響やスケジュールの問題だった。 だが、長井氏は遅くとも昨年12月30日までに、黒川氏に不参加を伝えていた。黒川氏はそれを支持者らには知らせず、長井氏の顔写真入りの告知バナーをネットで拡散し続けた。そのためデモの参加者の間では、長井氏のほうが「不義理」であるとされたようだ。宏洋氏はマイクを手にこう語った。「僕は黒川さんへの義理は果たします。僕も(今日のデモに)行かないほうがいいなどと言われて圧力がかかりました。でも黒川幹事長には、長井さんの(市議選応援演説の)ときにご支援いただいたので、ご恩を返します」 長井氏への露骨なあてこすりで、黒川氏への忠誠をアピールするかのようだ。陰謀論てんこ盛り さて、デモ当日の様子を紹介しよう。 冒頭、複数の創価学会2世(3世以上を含む)がマイクを持った。自分の給料を毎月4万円だけ残して全て創価学会に寄付させられた等の体験談や家庭不和の実態が語られる。それが徐々に、創価学会から集団で嫌がらせを受けているとか、警察もそれと結託しているといった、「集団ストーカー」談義に変わる。 次にスピーチした「目覚めよ日本党」の党首・押越清悦氏は、集団ストーカーやテクノロジー犯罪の問題に取り組んでいる。テクノロジー犯罪とは、ハイテク機器を使用した集団ストーカーによる盗撮・盗聴、あるいは電磁波攻撃等を指す。全てをデマや妄想と片付けることはできないが、実証性が乏しいケースが多く、一般的にはあまり注目されていないテーマだ。「日本列島1000人プロジェクト」の主催者・毛利秀徳氏は、なぜか新型コロナのワクチンに反対する別のデモを告知。彼はもともと「神真都(やまと)Q」に関わっていた人物だ。「神真都Q」はコロナの感染拡大やワクチンはディープステート(闇の政府)の陰謀であるとして、首都圏のワクチン接種会場に押しかけて妨害し、20人超の逮捕者を出した反ワクチン陰謀論団体だ。 主催者が代読した「日本の国力を高める運動をしている有志の会」のメッセージでは、竹内結子さん、神田沙也加さん、三浦春馬さんなどの名前を挙げ、彼女らの死には不審な点や事件性があるのに「大きな組織の力で封じ込められている」と主張した。「インボーロンジャ! インボーロンジャ!」 そう連呼しながら、流行りの陰謀論を全てぶち込んだラップを披露したのは、3人組のラップグループ「韻暴論者」。もちろん批判ではなく、陰謀論を支持する内容だ。 音楽家のNao Lion氏は、スピリチュアル系の人々の間で宇宙人に由来する日本人特有の遺伝子であると言われる「YAP遺伝子」をテーマにした曲や、ユダヤ人による世界支配の起源とされる「バビロン」をテーマにした曲を歌う。黒川氏も「ユダヤマネーをぶっ潰す」などと口走る。外国人排除の主張も ヘイトスピーチで問題になった「在日特権を許さない市民の会(在特会)」の元メンバーの姿も複数あった。 その1人、A氏は2009年の京都朝鮮学校襲撃事件などで実刑判決を受けた過去がある。彼はスピーチも行った。「そこらじゅう外国人に土地を買われて、日本、どないしますのこれ? (規制に反対している)カルト創価学会・公明党を日本から叩き出せ~!」 黒川氏はA氏がデモに参加してくれたことを「心強い」と称えた。 黒川氏が代表を務める「つばさの党」の根本良輔幹事長も、こんなスピーチを行った。「最近、中国人がすごく増えているわけですが、彼らがいつ武装してもおかしくない。習近平が攻撃しろと言ったら日本にいる中国人がいつ攻撃してくるかわからない。それを後押ししているのが山口那津男(公明党代表)であり創価学会です」 創価学会への批判を名目に、外国人への差別意識を煽る主張。長井秀和氏は、参加しなくて正解だったかもしれない。藤倉善郎(ふじくら・よしろう)ジャーナリスト。1974年生まれ。宗教団体以外も含めた「カルト」の問題を取材。2009年にはカルト問題専門のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊し、カルト被害、カルト2世問題、カルトと政治の関係、ニセ科学やニセ医療、自己啓発セミナーの問題などの取材を続けている。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)、『徹底検証 日本の右傾化』(共著、筑摩選書)、『カルト・オカルト 忍びよるトンデモの正体』(共編著、あけび書房)。デイリー新潮編集部
「国民騙すな、創価学会!」「税金払えよ、宗教法人!」「おじいちゃんの代からCIA!」「今すぐ解散、創価学会!」「今すぐ解散、公明党!」
1月15日、東京・信濃町にある公明党本部前の路上に約600人(主催者発表)が集結し、1時間半にわたって抗議活動が行われた。
公明党本部があるのはJR信濃町駅のすぐ近く、住宅街のど真ん中だが、デモ隊は屋外音楽フェスなどで目にする大型のスピーカーを組み、大音量で音楽を流し、歌い、踊った。
デモを主催するのは、先にデイリー新潮の記事で紹介したNHK党幹事長の黒川敦彦氏が代表を務める「新しい国民の運動」である。黒川氏の呼びかけに応じ、各種陰謀論の曲者が集った。
当初このデモには、お笑いタレントで創価学会2世の長井秀和氏が参加を表明していた。
長井氏は昨年12月、西東京市議選に立候補し、トップ当選を果たしている。応援演説には黒川氏をはじめ、この日のデモにも参加した幸福の科学・大川隆法氏の長男・宏洋氏が駆けつけた。
長井氏はデモの3日前にTwitterで不参加を表明。その理由は、創価学会から訴えられている裁判への影響やスケジュールの問題だった。
だが、長井氏は遅くとも昨年12月30日までに、黒川氏に不参加を伝えていた。黒川氏はそれを支持者らには知らせず、長井氏の顔写真入りの告知バナーをネットで拡散し続けた。そのためデモの参加者の間では、長井氏のほうが「不義理」であるとされたようだ。宏洋氏はマイクを手にこう語った。
「僕は黒川さんへの義理は果たします。僕も(今日のデモに)行かないほうがいいなどと言われて圧力がかかりました。でも黒川幹事長には、長井さんの(市議選応援演説の)ときにご支援いただいたので、ご恩を返します」
長井氏への露骨なあてこすりで、黒川氏への忠誠をアピールするかのようだ。
さて、デモ当日の様子を紹介しよう。
冒頭、複数の創価学会2世(3世以上を含む)がマイクを持った。自分の給料を毎月4万円だけ残して全て創価学会に寄付させられた等の体験談や家庭不和の実態が語られる。それが徐々に、創価学会から集団で嫌がらせを受けているとか、警察もそれと結託しているといった、「集団ストーカー」談義に変わる。
次にスピーチした「目覚めよ日本党」の党首・押越清悦氏は、集団ストーカーやテクノロジー犯罪の問題に取り組んでいる。テクノロジー犯罪とは、ハイテク機器を使用した集団ストーカーによる盗撮・盗聴、あるいは電磁波攻撃等を指す。全てをデマや妄想と片付けることはできないが、実証性が乏しいケースが多く、一般的にはあまり注目されていないテーマだ。
「日本列島1000人プロジェクト」の主催者・毛利秀徳氏は、なぜか新型コロナのワクチンに反対する別のデモを告知。彼はもともと「神真都(やまと)Q」に関わっていた人物だ。「神真都Q」はコロナの感染拡大やワクチンはディープステート(闇の政府)の陰謀であるとして、首都圏のワクチン接種会場に押しかけて妨害し、20人超の逮捕者を出した反ワクチン陰謀論団体だ。
主催者が代読した「日本の国力を高める運動をしている有志の会」のメッセージでは、竹内結子さん、神田沙也加さん、三浦春馬さんなどの名前を挙げ、彼女らの死には不審な点や事件性があるのに「大きな組織の力で封じ込められている」と主張した。
「インボーロンジャ! インボーロンジャ!」
そう連呼しながら、流行りの陰謀論を全てぶち込んだラップを披露したのは、3人組のラップグループ「韻暴論者」。もちろん批判ではなく、陰謀論を支持する内容だ。
音楽家のNao Lion氏は、スピリチュアル系の人々の間で宇宙人に由来する日本人特有の遺伝子であると言われる「YAP遺伝子」をテーマにした曲や、ユダヤ人による世界支配の起源とされる「バビロン」をテーマにした曲を歌う。黒川氏も「ユダヤマネーをぶっ潰す」などと口走る。
ヘイトスピーチで問題になった「在日特権を許さない市民の会(在特会)」の元メンバーの姿も複数あった。
その1人、A氏は2009年の京都朝鮮学校襲撃事件などで実刑判決を受けた過去がある。彼はスピーチも行った。
「そこらじゅう外国人に土地を買われて、日本、どないしますのこれ? (規制に反対している)カルト創価学会・公明党を日本から叩き出せ~!」
黒川氏はA氏がデモに参加してくれたことを「心強い」と称えた。
黒川氏が代表を務める「つばさの党」の根本良輔幹事長も、こんなスピーチを行った。
「最近、中国人がすごく増えているわけですが、彼らがいつ武装してもおかしくない。習近平が攻撃しろと言ったら日本にいる中国人がいつ攻撃してくるかわからない。それを後押ししているのが山口那津男(公明党代表)であり創価学会です」
創価学会への批判を名目に、外国人への差別意識を煽る主張。長井秀和氏は、参加しなくて正解だったかもしれない。
藤倉善郎(ふじくら・よしろう)ジャーナリスト。1974年生まれ。宗教団体以外も含めた「カルト」の問題を取材。2009年にはカルト問題専門のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊し、カルト被害、カルト2世問題、カルトと政治の関係、ニセ科学やニセ医療、自己啓発セミナーの問題などの取材を続けている。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)、『徹底検証 日本の右傾化』(共著、筑摩選書)、『カルト・オカルト 忍びよるトンデモの正体』(共編著、あけび書房)。
デイリー新潮編集部

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