家賃保証会社の悪質な取り立て・追い出し、トラブル後を絶たず「深夜に訪問」「回収が執拗」

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滞納家賃を立て替える家賃保証会社による行き過ぎた取り立てや部屋からの追い出し行為を防ぐルール整備が課題となっている。
保証会社の利用が急増する中、トラブルは後を絶たず、昨年12月には借り主に一方的に不利な内容になっているとして、保証会社の「追い出し条項」の使用差し止めを命じる最高裁判決も出た。消費者団体は、不当な契約条項をチェックする仕組み作りを国に求めていく。(石原敦之)
■2000年代に新規参入相次ぐ
家賃保証会社は一般的に貸主、借り主それぞれと契約を結び、借り主が家賃を滞納した場合に貸主に立て替え払いし、その分を借り主から回収する。
家族関係の希薄化や少子高齢化で連帯保証人の確保が難しい借り主側の事情に加え、貸主にとっても家賃未払いのリスクを避けられるメリットがあり、保証会社の利用が拡大。2000年代に新規参入が相次ぎ、現在は250社以上が存在する。国土交通省によると、不動産賃貸借契約での利用は10年の39%から21年は80%にまで増加している。
保証会社は、住居の円滑な確保に欠かせない存在となる一方、家賃の滞納が続けば損が膨らむため、悪質な取り立てや追い出し行為が社会問題化。全国の消費生活センターに寄せられた相談は17年以降、毎年500件前後で推移しており、「深夜に訪問されるなど回収が強引で執拗(しつよう)」「『借金してでも返せ』と言われた」といった相談がある。
■任意の登録制度
国や業界団体は対策に乗り出している。
国交省は17年、任意の業者登録制度を始め、22年11月時点で90社が登録する。保証会社には「虚偽告知・誇大広告の禁止」「契約締結時の書面交付」といったルールの順守を求め、必要に応じて指導する。
92社が加盟する業界団体「家賃債務保証事業者協議会」も自主ルールを定め、滞納回収時に正当な理由なく物件に立ち入ったり、借り主の持ち物を処分したりすることを禁じ、違反した場合は内部で審査し、処分する。3か月以上の滞納があれば、借り主に知らせ、明け渡しを求めて提訴するなどの司法手続きを進めるのが一般的だとする。
■条項削除
特定適格消費者団体「消費者支援機構関西」(大阪)は09年以降、保証会社7社に対し、不当な条項の削除や修正を申し入れ、借り主の部屋にある私物を勝手に処分できる条項の使用停止などを実現してきた。
申し入れでは解決できず、提訴に至る場合もある。
今回、同団体が最高裁まで争った家賃保証会社「フォーシーズ」(東京)を巡って問題となったのは、〈1〉家賃を3か月以上滞納すれば、借り主に知らせず賃貸借契約を解除できる〈2〉家賃を2か月以上滞納し、連絡がつかないなどの条件がそろえば明け渡しがあったとみなす――の2条項。
2審・大阪高裁判決は「相応の合理性がある」として差し止めを認めなかったが、最高裁は「生活の基盤を失わせる重大な事態を招く恐れがある。借り主と保証会社との間に見過ごせない不均衡をもたらす」とし、消費者の利益を一方的に害する条項を禁じる消費者契約法に違反すると判断した。
フォーシーズは現在、〈1〉の条項に「支払い能力がないことが明らかとなり、信頼関係が破壊された場合」との文言を加え、〈2〉は削除しているという。
同社は国交省に登録している。国交省安心居住推進課の担当者は「条項は既に見直され、指導は必要ないと考えている。対象の条項は業界で広く使われている内容とは言えず、判決の影響は少ない」とする。
これに対し、原告側代理人の増田尚弁護士(大阪弁護士会)は「保証会社側に有利な契約条項はまだ多い」と指摘。国が監督を強化するための業者登録の義務づけや、契約条項をチェックする仕組み作りをする必要性を訴える。

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