妻「長くてつらい闘いだった」 新潟市職員自殺で市に賠償命令

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2007年に新潟市水道局の男性職員(当時38歳)が自殺したのは上司からのパワーハラスメントが原因だったとして、男性の妻(53)が同市を相手取り、約8000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、新潟地裁(島村典男裁判長)は24日、遺族側の請求を一部認め、市に約3500万円の支払いを命じた。【内田帆ノ佳、露木陽介】
水道局職員自殺 遺族「パワハラ反省を」 15年経てあす判決 主張が対立したパワハラの有無については「十分な証拠はない」として認定しなかったが、必要な指導を行う機会を設けるなどの環境構築を怠ったとして安全配慮義務違反があったと指摘した。

判決は、07年4月に男性が主担当として受け持った業務について「比較的難しい」「単独で行うことができるような能力や経験はなかった」とし、上司から叱責されることなどを恐れて精神的に追い詰められ、自殺に至ったと認定した。上司に対しては「業務の進捗状況を確認し、必要な指導を行う機会を設け、男性が質問しやすい環境を構築すべき注意義務があった」と指摘。職場環境改善に対する措置を実施せず過失があったとした。ただ、18年間勤務した中堅職員だった男性の状況などを踏まえ、「自らの苦境を解消するための対応を十分に取らなかった」とし、「5割の過失相殺」を相当と判断した。 一方、遺族側は「有給休暇の取得や業務に関して不当な罵倒や叱責を受けたことがパワハラやいじめにあたる」と主張したが、判決は「不法行為を構成するほどの違法性を有する上司の行為があったことを認めるに足りる十分な証拠はない」と結論付けた。 訴状などによると、男性は上司からの適切な指導もなく困難な業務を命じられた上、繰り返しの叱責や理不尽ないじめを受け、精神疾患を発症。07年5月の連休明けの出勤前に自殺した。パソコンや携帯電話には「どんなにがんばろうと思っていても、いじめが続く以上生きていけない」などと書かれた遺書が残されていたという。遺族側は15年に提訴し、7年あまりに及ぶ裁判を争った。判決後、遺族側は「市が反省せずに控訴すれば不十分な点を指摘し、控訴する」と明らかにした。 一方、新潟市の中原八一市長は「亡くなられた元水道局職員に対し、心より哀悼の意を表します。判決内容を精査のうえ対応したいと考えています」とコメントした。妻「猛省し再発防止を」 「夫の無念を思うと悔しくて悲しくてならない。もっともっと生きていてほしかった」。男性の妻(53)は、法廷の遺族席の机に頭を付けながら判決に耳を傾けた。判決後に記者会見した妻は「安堵(あんど)の気持ち」と心境を打ち明けた。 「長くて苦しくてつらい闘いだった」。2007年5月の男性の死から15年半。パワハラの有無を巡る遺族側と新潟市の主張は対立した。妻は「『私』対『組織』の闘いで、途方もない相手に困難だと思った」と述懐。「水道局が職員の命を奪ったが真摯(しんし)に受け止めず、長い闘いとなった」と続けた。 長い時間がかかったが、ようやく認められた――。夫には、そう報告するという。その一方で「証人が出廷しないことを理由に(パワハラが)認められなかったことは非常に残念でならない」と悔しさをにじませた。市水道局に対しては「夫の命を奪ったことを謝罪し、猛省した上で実行性のある再発防止策を講じてほしい」と求めた。【内田帆ノ佳】相談窓口・#いのちSOS 「生きることに疲れた」などの思いを専門の相談員が受け止め、一緒に支援策を考えます。 0120・061・338=フリーダイヤル。月・木、金曜は24時間。火・水・土・日曜は午前6時~翌午前0時・いのちの電話 さまざまな困難に直面し、自殺を考えている人のための相談窓口です。研修を受けたボランティアが対応します。 0570・783・556=ナビダイヤル。午前10時~午後10時。 0120・783・556=フリーダイヤル。午後4時~同9時。毎月10日は午前8時~11日午前8時、IP電話は03-6634-7830(有料)まで。・こころの悩みSOS(https://mainichi.jp/shakai/sos/) 悩みを抱えた当事者や支援者への情報のほか、相談機関を紹介した毎日新聞の特設ページです。
主張が対立したパワハラの有無については「十分な証拠はない」として認定しなかったが、必要な指導を行う機会を設けるなどの環境構築を怠ったとして安全配慮義務違反があったと指摘した。
判決は、07年4月に男性が主担当として受け持った業務について「比較的難しい」「単独で行うことができるような能力や経験はなかった」とし、上司から叱責されることなどを恐れて精神的に追い詰められ、自殺に至ったと認定した。上司に対しては「業務の進捗状況を確認し、必要な指導を行う機会を設け、男性が質問しやすい環境を構築すべき注意義務があった」と指摘。職場環境改善に対する措置を実施せず過失があったとした。ただ、18年間勤務した中堅職員だった男性の状況などを踏まえ、「自らの苦境を解消するための対応を十分に取らなかった」とし、「5割の過失相殺」を相当と判断した。
一方、遺族側は「有給休暇の取得や業務に関して不当な罵倒や叱責を受けたことがパワハラやいじめにあたる」と主張したが、判決は「不法行為を構成するほどの違法性を有する上司の行為があったことを認めるに足りる十分な証拠はない」と結論付けた。
訴状などによると、男性は上司からの適切な指導もなく困難な業務を命じられた上、繰り返しの叱責や理不尽ないじめを受け、精神疾患を発症。07年5月の連休明けの出勤前に自殺した。パソコンや携帯電話には「どんなにがんばろうと思っていても、いじめが続く以上生きていけない」などと書かれた遺書が残されていたという。遺族側は15年に提訴し、7年あまりに及ぶ裁判を争った。判決後、遺族側は「市が反省せずに控訴すれば不十分な点を指摘し、控訴する」と明らかにした。
一方、新潟市の中原八一市長は「亡くなられた元水道局職員に対し、心より哀悼の意を表します。判決内容を精査のうえ対応したいと考えています」とコメントした。
妻「猛省し再発防止を」
「夫の無念を思うと悔しくて悲しくてならない。もっともっと生きていてほしかった」。男性の妻(53)は、法廷の遺族席の机に頭を付けながら判決に耳を傾けた。判決後に記者会見した妻は「安堵(あんど)の気持ち」と心境を打ち明けた。
「長くて苦しくてつらい闘いだった」。2007年5月の男性の死から15年半。パワハラの有無を巡る遺族側と新潟市の主張は対立した。妻は「『私』対『組織』の闘いで、途方もない相手に困難だと思った」と述懐。「水道局が職員の命を奪ったが真摯(しんし)に受け止めず、長い闘いとなった」と続けた。
長い時間がかかったが、ようやく認められた――。夫には、そう報告するという。その一方で「証人が出廷しないことを理由に(パワハラが)認められなかったことは非常に残念でならない」と悔しさをにじませた。市水道局に対しては「夫の命を奪ったことを謝罪し、猛省した上で実行性のある再発防止策を講じてほしい」と求めた。【内田帆ノ佳】
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「生きることに疲れた」などの思いを専門の相談員が受け止め、一緒に支援策を考えます。
0120・061・338=フリーダイヤル。月・木、金曜は24時間。火・水・土・日曜は午前6時~翌午前0時
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さまざまな困難に直面し、自殺を考えている人のための相談窓口です。研修を受けたボランティアが対応します。
0570・783・556=ナビダイヤル。午前10時~午後10時。
0120・783・556=フリーダイヤル。午後4時~同9時。毎月10日は午前8時~11日午前8時、IP電話は03-6634-7830(有料)まで。
・こころの悩みSOS(https://mainichi.jp/shakai/sos/)
悩みを抱えた当事者や支援者への情報のほか、相談機関を紹介した毎日新聞の特設ページです。

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