愛知県医師会「アドレナリン注射すべきだった」 ワクチン接種後死亡

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愛知県愛西市の新型コロナウイルスワクチンの集団接種会場で、ワクチン接種を受けた女性が死亡した事案について、同県医師会は17日、検証結果を公表した。女性にアナフィラキシー(重いアレルギー反応)の症状が強く疑われる状況だったとし、「アドレナリンの筋肉注射をすべきだった」と現場の体制に問題があったと指摘した。
新型コロナワクチンで627件 アナフィラキシーとは また、現在の接種会場の運用では医師の指示がないと看護師の判断ではアドレナリンを投与できないとし、看護師も迅速に投与できる体制にするよう国全体で見直す必要があると強調した。

同市などによると、今月5日、同市の飯岡綾乃さん(42)が新型コロナのオミクロン株派生型「BA・5」対応ワクチンの接種を受けた約5分後に容体が急変し、搬送先の病院で死亡した。死因は急性心不全。飯岡さんには糖尿病などの基礎疾患があった。 飯岡さんは接種後、せきが出始め、息苦しさなど体調不良がみられたため、看護師が付き添い、救護室に移動。担当医師は飯岡さんが血たんを吐いたため肺の異常を疑い、厚生労働省がアナフィラキシーが生じた場合に求めているアドレナリン注射の措置は取らなかった。 飯岡さんの死亡後、夫英治さん(45)と面会した医師はこれまでにアナフィラキシーへ対応した経験はないと説明したという。 県医師会は15日に開いた医療安全対策委員会で、現場にいた医師や市から聞きとりを行い、当時の対応に問題がなかったか検証していた。 この日の検証結果の報告では「看護師が女性(飯岡さん)の体調変化に気づいた時点で救護室に運ばず、その場でアドレナリンの筋肉注射をすべきで体制に問題があった」と指摘。一方で、飯岡さんの症状が最重症型のアナフィラキシーであったと考えられるとし「医師が呼ばれた時点でアドレナリンの投与が行われたとしても救命できなかった可能性が高い」とした。 愛西市の接種会場の体制の問題にも言及し「アナフィラキシーを常に疑い、発生時には迅速にアドレナリンを投与できるように協力体制を確認しておく必要があった」とした。 愛西市健康子ども部健康推進課は「県医師会の検証結果を真摯(しんし)に受け止め、市民の皆様が安心・安全にワクチン接種を受けられるよう全力で取り組んでまいります」とコメントしている。【酒井志帆、田中理知、加藤沙波】専門家「大規模接種会場に体制的な課題」 新型コロナワクチンの集団接種会場で接種後に体調が急変した愛知県愛西市の女性が死亡した問題について、名古屋大学医学部付属病院の山本尚範救急科長(44)は「大規模接種会場でアナフィラキシーが起きた際に対応できる体制を整えるべきだ」と強調した。 山本氏は今回のケースについて「(死亡した女性の)症状を聞く限り、アナフィラキシーを強く疑う。早ければ5分で心停止になる可能性もあり、最初に息苦しさを訴えた時点でアドレナリン注射をためらうべきではなかった」と指摘。ただ、今回のような大規模接種会場では「待機場所に看護師しかいないこともあり、医師がすぐ対応することが難しいなど体制的な課題があった」とした。 その上で、再発防止策として「大規模接種会場でアナフィラキシーの症状が出た際のシミュレーションを動画にして事前に学んだり、接種後の待機場所に急変に対応できる医師を配置したりするなどの対応が必要になるだろう」と指摘している。【田中理知】11月5日の飯岡綾乃さんの様子や治療の流れ(厚生労働省の資料などを基に作成)午後2時18分 ワクチン接種。「体調変わりなし」と答える 20分 待機場所へ歩いて移動 25分 せきが出始める。歩行途中で座り込み、看護師が付き添い、車椅子で救護室へ移動 28~29分 医師対応。顔面そうはく、呼吸が苦しいと訴える。酸素投与開始。救急要請 30分 ピンクの血たんを吐く。意識レベル低下 34分 呼吸停止 35~36分 AED(自動体外式除細動器)装着。心停止時などに使うアドレナリン注射を試みるも血管が見つからず断念 40分 心拍再開 42分 再び心肺停止。救急隊到着 55分 救急搬送3時15分 病院着 58分 死亡確認
また、現在の接種会場の運用では医師の指示がないと看護師の判断ではアドレナリンを投与できないとし、看護師も迅速に投与できる体制にするよう国全体で見直す必要があると強調した。
同市などによると、今月5日、同市の飯岡綾乃さん(42)が新型コロナのオミクロン株派生型「BA・5」対応ワクチンの接種を受けた約5分後に容体が急変し、搬送先の病院で死亡した。死因は急性心不全。飯岡さんには糖尿病などの基礎疾患があった。
飯岡さんは接種後、せきが出始め、息苦しさなど体調不良がみられたため、看護師が付き添い、救護室に移動。担当医師は飯岡さんが血たんを吐いたため肺の異常を疑い、厚生労働省がアナフィラキシーが生じた場合に求めているアドレナリン注射の措置は取らなかった。
飯岡さんの死亡後、夫英治さん(45)と面会した医師はこれまでにアナフィラキシーへ対応した経験はないと説明したという。
県医師会は15日に開いた医療安全対策委員会で、現場にいた医師や市から聞きとりを行い、当時の対応に問題がなかったか検証していた。
この日の検証結果の報告では「看護師が女性(飯岡さん)の体調変化に気づいた時点で救護室に運ばず、その場でアドレナリンの筋肉注射をすべきで体制に問題があった」と指摘。一方で、飯岡さんの症状が最重症型のアナフィラキシーであったと考えられるとし「医師が呼ばれた時点でアドレナリンの投与が行われたとしても救命できなかった可能性が高い」とした。
愛西市の接種会場の体制の問題にも言及し「アナフィラキシーを常に疑い、発生時には迅速にアドレナリンを投与できるように協力体制を確認しておく必要があった」とした。
愛西市健康子ども部健康推進課は「県医師会の検証結果を真摯(しんし)に受け止め、市民の皆様が安心・安全にワクチン接種を受けられるよう全力で取り組んでまいります」とコメントしている。【酒井志帆、田中理知、加藤沙波】
専門家「大規模接種会場に体制的な課題」
新型コロナワクチンの集団接種会場で接種後に体調が急変した愛知県愛西市の女性が死亡した問題について、名古屋大学医学部付属病院の山本尚範救急科長(44)は「大規模接種会場でアナフィラキシーが起きた際に対応できる体制を整えるべきだ」と強調した。
山本氏は今回のケースについて「(死亡した女性の)症状を聞く限り、アナフィラキシーを強く疑う。早ければ5分で心停止になる可能性もあり、最初に息苦しさを訴えた時点でアドレナリン注射をためらうべきではなかった」と指摘。ただ、今回のような大規模接種会場では「待機場所に看護師しかいないこともあり、医師がすぐ対応することが難しいなど体制的な課題があった」とした。
その上で、再発防止策として「大規模接種会場でアナフィラキシーの症状が出た際のシミュレーションを動画にして事前に学んだり、接種後の待機場所に急変に対応できる医師を配置したりするなどの対応が必要になるだろう」と指摘している。【田中理知】
11月5日の飯岡綾乃さんの様子や治療の流れ(厚生労働省の資料などを基に作成)
午後2時18分 ワクチン接種。「体調変わりなし」と答える
20分 待機場所へ歩いて移動
25分 せきが出始める。歩行途中で座り込み、看護師が付き添い、車椅子で救護室へ移動
28~29分 医師対応。顔面そうはく、呼吸が苦しいと訴える。酸素投与開始。救急要請
30分 ピンクの血たんを吐く。意識レベル低下
34分 呼吸停止
35~36分 AED(自動体外式除細動器)装着。心停止時などに使うアドレナリン注射を試みるも血管が見つからず断念
40分 心拍再開
42分 再び心肺停止。救急隊到着
55分 救急搬送
3時15分 病院着
58分 死亡確認

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