「収入が少ない…」元妻・須藤早貴被告がデリヘル勤務を経て“紀州のドン・ファン”とめぐり会うまで【裁判員裁判】

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『紀州のドン・ファン』と呼ばれていた資産家男性が2018年に自宅で死亡していた事件で、殺人罪に問われている元妻の裁判員裁判が9月12日から和歌山地裁(福島恵子裁判長)で開かれている。元妻は初公判罪状認否で「私は社長を殺してません。覚醒剤を飲ませたこともないです」と否認。無罪を主張している。【前後編の前編】
【写真】セーラー服姿の須藤被告。卒アルで見られた“清純”時代の姿ほか、ドン・ファン葬儀の日スマホを持って笑うも
* * * 和歌山県田辺市に住む資産家、野崎幸助さん(当時77)が亡くなったのは2018年5月24日の夜。自宅2階の寝室で意識を失っているのを元妻が発見し119番通報した。野崎さんの死因は急性覚醒剤中毒。解剖の結果、致死濃度を超える覚醒剤成分が血中から検出され、特に胃からの覚醒剤濃度が高いことが認められた。つまり野崎さんは覚醒剤を経口摂取した可能性が高い。だが野崎さんにはそれまで覚醒剤の使用歴がなく、入手した形跡も確認できなかった。
この日、在宅していたのは野崎さんと家政婦、そして今回殺人罪に問われている元妻の須藤早貴被告(28)。家政婦は日中から20時過ぎまで外出しており、帰宅後は野崎さんのいる寝室に行っていない。野崎さんと須藤被告が自宅で2人だけの時間帯に、一体何があったのか。
起訴状によれば須藤被告は事件当日「須藤被告が何らかの方法により野崎さんに覚醒剤を摂取させて死亡させた」とされる。検察官は冒頭陳述で開口一番、こう訴えた。
「完全犯罪!……犯人である証拠を残さない。殺人であるとすら思わせない。被告人が野崎さん殺害にあたり、企んでいたことです。今回の事件は、この完全犯罪がポイントになります」
そして事件は「資産家の野崎さんと財産目当てで結婚した須藤被告が、結婚から4ヶ月後、覚醒剤による完全犯罪により莫大な遺産を得るため、野崎さんに致死量の覚醒剤を摂取させ殺害した」ものであると主張した。
生前の野崎さんはその生き様が週刊誌やワイドショーに取り沙汰される有名人だった。2016年には50歳ほど歳の離れた交際女性から6000万円ほどを持ち逃げされたことも報じられた。著作『紀州のドン・ファン 美女4000人に30億円を貢いだ男』(講談社刊)に野崎さんはこう綴っている。
〈私がお金を稼ぐ理由は、なんと言っても魅力的な女性とお付き合いをしたい、その一点に尽きます。〉〈金持ちになることが目標ではなく、金持ちになって好みの女性とエッチすることが目標だった〉
公判で検察官は、そんな野崎さんと須藤被告の出会いを明らかにした。証拠によると、野崎さんの著作を読んでファンになったというある男性が、人づてに須藤被告を紹介したのだという。事件前年のことだった。野崎さんはこの紹介者に「健康には気を遣っている。100歳まで生きようと思っている。死ぬまで女を抱きたい」などと話し、その後も紹介者に電話をかけ、繰り返し「女を紹介して欲しい」と伝えていたのだそうだ。こうして年末、紹介者は須藤被告を野崎さんに繋いだ。
いっぽうの須藤被告は北海道・札幌に生まれ育ち、上京後は高級デートクラブやデリヘル、AV出演で生計を立てていた。事件前年、デリヘルの客に「収入が少ない」と不満を漏らすと、客がAV業界関係者だったことから「(AVに)出ればまとまった収入が受け取れる」と誘われる。
仕事内容や報酬などを聞き、4作品に出演。計38万円ほどの出演料を得ていた。そんな頃、先の紹介者づてに、野崎さんと会うことになった。
野崎さんは須藤被告に「会うなり『結婚してください』と言い、帯付きの100万円札を渡してきた」(弁護側冒頭陳述より)という。そこで須藤被告は〈毎月100万くれるならいいですよ〉と言い、冗談だと思っていたところ、100万円の振込があり、2018年1月に結婚を決意したのだそうだ。
「本当にもらえるなら結婚してもいいかな、と思ったのです」(弁護側冒頭陳述より)
こうして事件3ヶ月前である2018年2月8日にふたりは結婚。しかし、須藤被告は和歌山に定住することはなかった。野崎さんは離婚を早々に考え始め、同年3月下旬には離婚届を作成、須藤被告に送付していた。さらに同年4月下旬、野崎さんは須藤被告に電話をかけ「離婚して欲しい」と告げた(検察側冒頭陳述より)。
その直後、須藤被告のAV出演が野崎さんの会社の従業員に知られ、事件直前には、さらに家政婦にも知られることとなった。
後編では、公判で明らかになった須藤被告が、事件前日などに調べていた不穏な検索ワードなどについてレポートする。
(後編に続く)
◆取材・文/高橋ユキ(フリーライター)

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