「怒ると机をバンバン」兵庫県職員の証言多数 知事パワハラ疑惑

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

兵庫県の斎藤元彦知事がパワーハラスメントなどの疑惑を文書で告発された問題で、県議会の調査特別委員会(百条委)が実施した県職員アンケートの結果、新たなパワハラ疑惑が複数指摘されていることが明らかになった。中間報告の自由記述欄には「瞬間湯沸かし器」「暴君」といった言葉が並ぶ。百条委は23日に詳細を公表する。
【写真で見る】兵庫県知事、どんな人?
中間報告では、知事のパワハラを目撃したり、人から聞いたりしたとの回答が約4割に上った。「目撃した」と回答したのは59人、「実際に知っている人から聞いた」は466人、「人づてに聞いた」は1225人。自由記述欄には「怒るとバンバン机をたたき出す」「暴言を吐く」、気に入らないことに対して「無視」など日々の言動に関する証言が多数寄せられた。記名で答えた人もいた。
元県西播磨県民局長の男性(7月に死亡)による告発文は、知事が出張先で20メートルほど手前で公用車を降りて歩かされたことに立腹し、職員らを怒鳴ったと指摘していた。アンケートではこれを裏付ける証言が複数あった。
文書で告発された以外の新たなパワハラ疑惑も多く寄せられた。
「お前はエレベーターのボタンも押せないのか」。視察先でエレベーターに乗ろうとしたところ、目前で扉が閉まった際、知事からこう叱責された職員の話を書いた人もいた。別の職員は「エレベーターで待たせると機嫌を損ねるので、扉を開けておく人員が配置されていた」と記述。こうしたことが重なり「知事が出席する行事は、車の発着場所や経路などは細かく明示されるよう求められている」と各部署に注意喚起されたこともあったという。
「到着が遅れそうになると公用車の座席を後ろから蹴る」。知事は怒ると机をたたくという記載も多い。周囲からは「瞬間湯沸かし器」「暴君」などと呼ばれていたという。打ち合わせの際に「聞いていない」と発言し、持っていたペンを机の上に放り投げてその場が凍りついたとの指摘もあった。
2023年7月、県のプレミアム付きデジタル商品券の打ち合わせで、資料を見た知事が舌打ちをし、大きなため息をつく姿を目撃した人もいた。この職員によると、知事は「何が悪いか分かるか」と問いかけ、「知事の肝煎り事業なのに、写真やメッセージがない」と指摘。その後、PR用のうちわに顔写真が入ることになったという。
県の政策などを知らせるちらしに知事の顔写真が入っておらず、業者に発注後、修正を求められた事例の回答も多かった。商品券のうちわ以降、顔写真を入れることが「暗黙のルール」と証言する人もいる。
さらに「知事がイベントに参加するときは、いかなる時も必ず髪形セットの場所を用意しないといけない。用意できていないと怒る」との記載も。マスコミへの露出も気にしていたようで「知事が出席するイベントや行事にマスコミが来ていないと怒ることは有名」とあった。
一方で「ねぎらいの言葉をいただいた」と擁護する声もあった。「よく怒るとは聞くがパワハラとは思わなかった」という意見や、日々の言動から「パワハラを直接受けていなくても、激怒されないように特別に配慮している」と周囲が過剰反応しているという見方も示された。
アンケートは対象の約9700人のうち7割にあたる約6700人が回答。中間報告は5日までに回答があった4568件を対象としている。告発文書が指摘した七つの疑惑について尋ねており、「知事による贈答品の受け取り」については43人が、「21年知事選での県職員の事前選挙活動」については17人が「目撃した」と答えた。
斎藤知事は20日の定例記者会見で、自身の行為について「報道は承知しているが、詳細を承知していないのでコメントは差し控える」と繰り返した。知事はこれまで、パワハラ疑惑について「業務上の指導の範囲内だった」と弁明しており会見では、エレベーターを巡る叱責などについて「そういったことをした認識はない」と否定。「仕事なので厳しく指導することも必要だ」と述べた。
百条委は23日、県職員6人に対するパワハラ被害調査を非公開で実施。30日には、証人尋問で知事の出頭を求めている。知事は会見で「(百条委の)調査に対応し、県政を前に進めていく」と述べた。【山田麻未、中尾卓英】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。