年末に猛威を振るう“感染症”。厚生労働省によると、インフルエンザの患者数は9万4259人と8週連続で増加。さらに、新型コロナやマイコプラズマ肺炎にも注意が必要になっています。
そんな中、インフルエンザや新型コロナ、マイコプラズマ肺炎でもないのに、“せき”が長引いているという人が…。
60代女性:2~3カ月続きました。夜、せきが止まらない感じでしたね。
60代女性:ひどい時は多分3週間ぐらい、喉がちょっとイガイガして、せきが止まらなくなったり。
実はこのしつこい“せき”、長く続いていたら「肺NTM症(非結核性抗酸菌症)」かもしれません。
「肺NTM症」とは、「結核菌」や「らい菌」以外の菌の総称である「NTM菌」(約200種類)が肺に感染して起こる、呼吸器感染症です。
慶應義塾大学医学部感染症学教室の専任講師である南宮湖医師によると、原因不明のせきが3週間以上続く場合、「肺NTM症」の可能性もあるため、医療機関を受診した方が良いといいます。
感染すると、初期は症状が出ないことも多いですが、長引くせきや疲れやすいなどの症状が繰り返し起こるようになり、病気が進んでくると「せき」や「たん」の症状が強くなっていきます。
血たんや、喀血(かっけつ)と呼ばれる、肺などの呼吸器系の器官からの出血でせきなどによって血液を吐き出す症状が出たり、体重減少などが見られることも…。
――結核とどう違うんですか?南宮湖医師:結核と似ているところもあるんですけども、結核という病気に関してはヒトーヒト感染するんですが、この菌自体は結核より病原性が弱く、ヒトーヒト感染はしないという特徴があります。症状は非常に似ていると思います。
――コロナやインフルエンザとの見分け方は?インフルエンザやコロナは、症状が短期間にひき起こる。いわゆる医学的な用語で言うならば、「急性」の感染症なんですけども、この肺NTM症は症状が一度出ると長期に及ぶ、罹病期間が長いというところで、「慢性」の感染症になります。一般的にこの菌自体は増殖するスピードがとても遅いんです。そのため医療機関などで、たんの検査を出して、そこで検査を出しても、診断にたどり着くまで月単位、通常1カ月以上かかることが多いです。
――インフルエンザのように薬を飲めばすぐに治ることもない?そうですね、これはまだまだ分かっていないのですが、薬を飲むかどうかは初期、最初症状が出にくいので、それ以外の症状やレントゲンやCT、病変の広がりによって、患者さんと医師とで決めていく。初期には経過観察をすることも多いです。
あまり耳なじみのない「肺NTM症」ですが、近年増加傾向にあることが分かっています。
患者数は最新の調査(2017年)で人口10万人あたり19.2人と推定。2007年の調査5.7人から約3.4倍となっています。
南宮医師によると、1年間に2万人ほどが感染しており、その7割程度は女性だということです。
肺NTM症にかかりやすい人の特徴として、「中高年の痩せ型の女性」が特に注意が必要で、40歳以降は急激に増加しているといいます。
また、「肺の病気がある」「結核にかかったことがある」「胃の病気がある」「免疫を抑える治療を受けている」「リウマチがある」方も注意が必要です。
――なぜ、男性よりも女性が多く高齢になると、リスクが高まるのでしょうか?南宮湖医師:この点に関してもまだまだわかっていない点が多いんですけども、中高年女性、特に閉経したあとにこの病気を発症したり、進行したりするということがデータとしていわれています。もしかしたら、女性ホルモン、環境の変化がこの病気と関連しているのではないかと言われています。痩せ型ということに関しても、もしかすると痩せやすい、食べても体重が増えにくいという方がなりやすいかもしれませんし、病状が進行すること自体が体重減少につながりますので、両面性があるというふうに考えられています。
肺NTM症は、ヒト-ヒト感染はせず、水や土に潜む菌を吸い込むことで感染するといわれています。
家庭内ですと、台所や風呂場などの水回りで水しぶきやミストを吸い込むことで感染したり、ガーデニングや家庭菜園での作業中に土ぼこりを吸い込むことで、感染してしまうこともあるといいます。
MC谷原章介:普通に家事をしていたらかかる可能性もあるし、普通に趣味を楽しんでいたらかかる可能性もあるわけじゃないですか。でも、全員がかかるわけではないんですよね?その差は何ですか?
南宮湖医師:この病気はおそらく、環境にいる菌、菌自体は弱毒なんですけども、患者さん側にもしかすると“かかりやすい体質”があって、そういった方が何かの機会に菌を気道から吸い込んでしまって定着することで、感染するのではないかと言われています。
倉田大誠アナウンサー:特に季節性ということもなさそうなので、通年を通して皆さん気をつけて頂きたいと。
日常に潜む「菌」から、どうやって身を守ればいいのでしょうか?南宮医師によると、浴室や台所などの水回りを清潔に保つことが大切だといいます。
お風呂の追いだきを避ける、浴槽やシャワーヘッドの掃除を行いぬめりをとり、しっかり換気をする。この時、しっかりとマスクを着用し、水しぶきを吸い込まないよう注意してください。
また、家庭菜園やガーデニングを行う際も、風が強い日はマスクをして行うようにしてください。
南宮湖医師:感染対策についてはまだ研究が進んでいないので、医師や専門家によっても大きく意見が異なるというのが現状です。その中で診察室で心がけているのは、できる範囲でやって頂くと。その中でも、できるならばこのようなことをやると。ただ、一方で神経質になりすぎないのも重要です。
南宮湖医師:今現在、患者さんの数が増えておりますので、菌自体は弱毒なんですけども、中にはどんどん進行してしまう人もいると。死亡者数の統計ということに関しては、実はすでに結核を凌駕している。結核の1.5倍程度といわれています。
MC谷原章介:えっ、ヒト-ヒト感染しないということは、そこまで強い病気ではないんですよね?それでも、結核の1.5倍も亡くなっている…。
南宮湖医師:はい、最新のデータではそうなっております。
フジテレビ解説委員 風間晋氏:日常生活で気をつけても、気をつけようがないみたいな感じではあるし、長引くのはすごく不安になるじゃないですか、気持ち的にも。いやぁ…なんとかして防ぎたいですね。
金子恵美氏:せきが長く続くと苦しいですし、肺炎とかに悪化していくということなんですか?
南宮湖医師:そうですね、徐々に体重が減少したり、呼吸の筋肉が落ちたり、肺の病変が増えていくという形になります。食欲も落ちる方が多いですね。(肺NTM症の原因となる菌は)環境に常在しているので、常にリスクがあるといえばある。季節性はないと。(「めざまし8」12月25日放送より)