ポテトチップス、チョコレート、クッキー、アイスクリーム、フライドポテト、チーズバーガー、ピザ――。これらを好きで日常的に食べているという人は少なくないだろう。
「食べ始めると止まらない」という人もいるかもしれないが、それはその人の意思の問題ではない。
シリーズ120万部『ゼロトレ』著者の石村友見さんが、「体」と「心」と「つながり」という3つの観点からどうすれば健康で、幸せに生きていけるのかを世界最先端の科学的データと豊富なエピソード、実例を絡めて解説した『Life is Wellness 「健康な生き方」の科学』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。
2021年、アメリカ臨床栄養学会誌は食物依存症や超加工食品が、肥満の大きな原因になっているという特集を掲載した。
その特集にはミシガン大学心理学部の准教授アシュリー・ギアハート(臨床心理学者)の研究が載っている。彼女は、食品に対する依存的行動の症状を判定する調査「イェール食品依存性尺度(YFAS)」の作成に携わった人物だ。
ギアハートの研究チームが500人以上を対象に行った実験で、人々は「特定の商品」に対して激しく欲し、自制心を抑制できない「依存症的」な摂食行動を起こすことが明らかになった。実験の対象者たちは体に害があるとわかっていても、どうしてもやめられなかった。特定の商品とは次のようなものだ。
ポテトチップス、チョコレート、クッキー、アイスクリーム、フライドポテト、チーズバーガー、ピザ。
これらを「超加工食品」と呼ぶ。その定義は、米国糖尿病学会によると「糖分、塩分、脂肪を多く含む加工済みの食品。硬化油、添加糖、香味料、乳化剤、保存料などの添加物を付与して、工業的工程によって作られる、常温でも保存することができ、日持ちする食品」のこと。スーパーやコンビニエンスストア、ファストフードなどで売っている、私たちにとってとても馴染みのある食品ばかりだ。
ギアハートはこうした超加工食品は「依存性物質」と共通点が多いことを突き止めた。超加工食品は、タバコやコカインと同じように、天然の植物や食物に含まれる食物繊維、水分、タンパク質など、吸収を抑える働きをする成分を取り除いたものが原材料になっているのだ。
さらに、最も快感をもたらす成分を精製し、血流にすばやく吸収される製品に仕上げることで、脳を活性化し、満足させる作用が強められている。
また、超加工食品に含まれる塩分や人工香料などの添加物は、舌触りや食感を向上させることで、誘因力を高めている。
これだけ計算されて作られているのだから、おいしいに決まっている。こうして添加物によって「中毒化」させていく手法は、ギアハート曰く「タバコの手口と同じ」。ちなみに一部のタバコは、ココアを配合することで気道を広げてニコチンの吸収を高めている。
超加工食品の中で最も依存性が高いものには、「脂質」と精製された「炭水化物」が大量に含まれている。人の味覚を破壊するこの「強力タッグ」は、人類が進化の過程で食べてきた果物、野菜、ナッツ、豆など自然由来の食物には見られないものだ。自然界に存在する食物のほとんどは、脂質または炭水化物のいずれかを豊富に含んではいても、その両方を多く含むことはほぼない。
ギアハートは、「こうした食品は、アルコールやタバコと同様に自制心を低下させる」と言っている。
つまり、「止まらない現象」が起こるのは、あなたの意志が弱いからではなく、食品そのものが中毒になるように設計されているからなのだ。
【つづきを読む】『「肉と炭水化物をお腹いっぱい食べている」なら要注意…体と心に悪影響を及ぼす理由』では、脂肪の適正量について解説する。
「肉と炭水化物をお腹いっぱい食べている」なら要注意…体と心に悪影響を及ぼす理由