保育園に通う子どもの送迎車が自宅前で迷惑駐車をしているが、役所に連絡しても改善してくれない──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者の近所にある保育園では車での送迎がルール上禁止されているものの、実際には横行しているようで、相談者宅の前に無断で何度も駐車されたようです。
クレームを複数回入れたものの止まないため、自治体の役所にも相談。役所側はルールの周知をすると伝えてきましたが、結局迷惑駐車は止まず、再度の相談にも「警察に相談して」と言われただけでした。
何らかの際に証拠として使えるよう、迷惑駐車の記録をとり続けているようです。警察に相談する以外に、自分で迷惑駐車を解消する手立てはないのでしょうか。今泉圭介弁護士に聞きました。
──住宅前の道路に無断駐車することは、住民に対する違法行為に該当するのでしょうか。
当該道路が「公道」か「私道」かという点は大きく影響すると思います。場合分けして考えてみます。
【公道の場合】
公道の場合、道路交通法44条および45条で車両が停車や駐車できない場所が定められています。
駐車禁止の標識がある場所などはもちろんですが、駐車場や車庫などの自動車用の出入り口から3m以内の場所も駐車禁止する場所と定めてられています(道交法45条1項1号)。したがって、自宅の駐車場の出入り口付近の公道に無断駐車されている場合には、同条違反に当たる可能性があるといえます。
【私道の場合】
私道の場合、道交法が適用されないケースもあり、駐車違反といえないこともあります。
具体的には、私道であっても、人や車が自由に通行できる場合には、道交法が適用される可能性はありますが、所有者しか通行しないような道路は、適用されない可能性が高いです。
一方で、私道のうち私有地内に設けている駐車スペースなどに無断駐車されている場合には、刑法130条の「住居侵入罪」「建造物侵入罪」が成立する可能性はあるといえますが、私有地への侵入の程度が少ない場合には、難しいかもしれません。
──違法な迷惑駐車があった場合、住人が排除する方法はあるのでしょうか。
公道上の無断駐車であれば、道交法違反のおそれがありますので、警察を呼べば対処してもらえる可能性があります。
一方、私道上の無断駐車ですと、土地の所有者が裁判を提起する必要があり、短時間の無断駐車に対しては、現実的な対処は難しいです。
なお、公道上でも私道上でも、無断駐車している車両を自ら移動させたりしてしまうことは、控えるべきです。日本の法律では、「自力救済禁止の原則」というものがあり、裁判所を通さずに自己の権利の実現を図ることが禁止されているためです。民法上の不法行為に該当してしまう可能性もありますのでご注意ください。
──現実的な解決策としてはどのような方法が考えられますか。
公道上でも、私道上でも、無断駐車に対して有効な対処が取れない場合も多いと思います。
現実的なアドバイスとしては、「駐車禁止」と書かれた張り紙の表示、私有地である場合には、立て看板やコーンなどの設置という措置が考えられます。「無断駐車を行った場合には、金●●円を請求いたします」という記載も有効だと思います。
ただし、この時の金額があまりに高すぎると公序良俗(民法90条)に反するとして無効になってしまう可能性もあります。適正な金額としては、近隣の駐車場の利用料金と同額程度ではないでしょうか。
また、無断駐車している車両に、「無断駐車は控えてください」と記載した警告文を付けるという方法も考えられます。この際には、テープや接着剤で張り付けてしまうと、器物損壊罪等に該当する危険性もあるので、ワイパーに挟む等、車両に損害が出ない方法でおこないましょう。
【取材協力弁護士】今泉 圭介(いまいずみ・けいすけ)弁護士法政大学法学部法律学科、首都大学東京法科大学院(現・東京都立大学)卒業。弁護士として、2016年より茨城県にて活動。離婚問題をはじめとして、交通事故・相続・債務整理など広く扱っている。弁護士会としては市民のための法教育委員会、子どもの権利委員会等に所属。事務所名:弁護士法人みらい中央法律事務所事務所URL:https://miraichuo-law.com/