今回の総選挙は「政治とカネ」が争点となった。注目の東京24区は、自民党非公認の萩生田光一元政調会長(61)に立憲民主党の有田芳生氏(72)が挑む構図に。前者が僅差で逃げ切ったが、街頭では「活動家」らの怒声も乱れ飛ぶなど荒れた選挙戦が繰り広げられた。
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萩生田氏の裏金額は、合計で2728万円と旧安倍派幹部の中でも突出しており、真っ向からの逆風を受けた形だ。選挙区では連日のように「活動家」らが落選運動を展開。選挙戦最終日の10月26日に行われた、JR八王子駅前の街頭演説でも聴衆に紛れて、
〈裏金議員いらない〉
などと記載したプラカードを掲げる集団が登場。やじも飛び交い、現場は騒然とした雰囲気に包まれたのである。
萩生田氏もマイクを握りしめて、
「“立憲共産党”の候補(有田氏)は、この八王子を選挙区として選んだだけで住民票もないんですよ」
と売り言葉に買い言葉とばかりに、真偽不明の情報まで用いて対立候補を攻撃。街頭には一触即発の空気が醸成されたのだ。
「私はここが地元ですが、今日は町田市や埼玉県から来た人もいます。萩生田の裏金問題がおかしいと思った人たちが集まってこの活動をしているんです」
とは男性2人組の一人で、
「全員が集団で動いているわけではないですが、こうやって活動しているのは有田さんの支持者が多い。(萩生田氏を批判する)プラカードは自分で作ったわけではなくて、有田さんの事務所にあったものを借りました」(同)
そう打ち明けたのである(この点、有田事務所は、「『裏金議員いらない』『公正な政治を実現しよう』と記載したA4プリントは支援者が作成したものです。有田事務所でA4印刷し、支援者に貸し出したことがありますが、当然有田芳生の選挙運動とはならないよう注意してもらっていました」と回答)。
一方でこの日、萩生田氏はマイク納めの20時を越えても八王子駅前でマイクなしの辻立ちを行った。千鳥足の酔っ払いから「落ちろ、落ちろ」と罵声を浴びながらもお辞儀を繰り返す。「萩生田光一です。明日の選挙、ぜひよろしくお願いします」と叫ぶ姿には、絶対に議席を手放すまいとする鬼気迫る執念がにじみ出ていた。
その場で萩生田氏に声をかけた。
――逆風、すごかった?
「そうだね。なんか、変な活動家みたいな人がたくさんいて気持ち悪くて」
無論、裏金問題は自らまいた種である。それを批判する人々を「変な活動家」などと表現するとは、やはり反省が足りないと見受けられる。
投開票日の27日当日、八王子市の選挙事務所は100名ほどの支援者やマスコミでごったがえし、室内は人いきれでむっとした。23時54分、NHKが当確を打つと支援者らは一斉に立ち上がり、歓声を上げたのだが、開票結果の判明が日付の変わる直前までもつれたのは、
「それだけ接戦だったから。萩生田氏の得票数7万9000票に対して、有田氏は7万1000票。その差は8000票と僅差でした。国民民主と維新の候補が、それぞれ2万票前後を獲得しているので、仮に野党共闘が成立していたら、萩生田氏に勝ち目はなかった。いわば、敵失に救われた形です」(政治部デスク)
当確後、萩生田氏に笑顔はなく「ほっとしているというのが正直な気持ち」と語ったが、その言葉に偽りはあるまい。薄氷の勝利だった。
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「週刊新潮」2024年11月7日号 掲載