首都圏などで「闇バイト」を実行役とする強盗事件が相次ぎ、千葉県内でも船橋市や白井市、市川市などで被害があった。
闇バイトに応募し、昨年9月に習志野市の質店で起きた強盗致傷事件などに関わり、懲役6年6月の刑が確定した男の受刑者(23)は、千葉地裁で先月まで続いた裁判員裁判で、凶行に手を染めるまでの経緯を語っていた。
「即金で高収入」。昨年8月頃、そんな仕事を探すため、X(旧ツイッター)で「闇バイト」と検索した。収入が安定せず、消費者金融から督促状が届いており、手早く金を稼ぎたかった。闇バイトの中でも、犯罪にはならない「グレー」なものなら大丈夫だろうと甘く考えていた。
表示された投稿の中で目に留まったのが、車を貸す仕事だ。「貸していただいた方に1万円の報酬」「即金」。好条件だと思い、詳しい話を聞こうと投稿者にダイレクトメッセージ(DM)を送った。
投稿者から仕事の説明を受けた後、今後は秘匿性の高い通信アプリ「シグナル」で連絡し、XのDMは削除するよう指示された。運転免許証と自分の顔写真も送るよう求められたが、車に関する仕事だからと違和感も持たずに従った。
ところが、相手から翌日、「叩(たた)きをやれ」というメッセージが届いた。「叩き」は強盗を意味する隠語だ。
何度も拒んだが、「住所はわかっているんだ」と脅された。免許証には実家の住所が記載されていた。家族が巻き込まれると思い、引き受けてしまった。
まず実行することになったのは、埼玉県越谷市の質店強盗。初対面の少年(当時17歳)と店に押し入り、指示役とシグナルで通話しながら包丁で店員らを脅し、腕時計などを奪った。「抵抗されたら刺してしまってもいい」とも言われていた。犯行中は足が震え、地面を踏んでいる感覚がなかった。
その後も強盗の報酬はもらえないまま、指示役から仕事を紹介する連絡が続いた。引き受けたのは、時計を売る仕事と車を貸す仕事。もう強盗はやりたくなかったが、「指示役からは逃げられない」と思っていた。
車は犯罪に使われないと信じていた。実際は、習志野市の強盗致傷事件で実行役らが現場に行き来する時、貸した車が使われた。
男の受刑者は習志野市の事件の2日後、強盗致傷などの疑いで逮捕され、その後、同ほう助罪などで起訴。翌月、越谷市の事件の実行役として埼玉県警にも逮捕された。
闇バイトが絡む事件では、指示役らが運転免許証の画像を送らせるなどして実行役の個人情報を握り、恐怖で支配するケースが多いとされる。
警察庁は、Xなどで闇バイトに加担しないよう呼びかける動画を公開している。担当者は動画で「自分自身や家族への脅迫が理由であっても、強盗は凶悪な犯罪です。勇気を持って抜け出し、すぐに警察に相談してください。警察は、相談を受けたあなたやあなたのご家族を確実に保護します」と訴えている。